【毎日三題噺】うなぎ ゲーセン 結婚式
「やっと分かって良かったね」
中央線が過ぎると、蝉は一斉に鳴き出した。耳を圧迫するそれに目をおおう。背中の裏で、シーツがじっとりと汗ばんでいる。目尻に涙が浮かんで、汗と一緒になって流れ落ちる。
「やっと分かった、今までずーっと付き合って、三年たってやっと分かった。私、あなたのことが嫌いだ嫌いなんだわ、けど嫌いたくなくってそれで一緒にいたんだわ」
結婚式の日取りまで決めて、内祝いの内容まで決めたのに。お互いの実家にはうなぎを送ろうね、夏の結婚式だから体力をつけてもらおうね。
アパートのドアベルが鳴り、そのまま扉が開く。
「いやー外めっちゃ暑いわ、夏日だわ」
体を起こして玄関を見やると、コンビニの袋を下げた男が靴を脱いでいるところだった。そのまま入ってくる。俺はベッドから降りて、テーブルの上に乗せたままになっていた下着類を床に落とした。代わりに、灰皿を乗せる。
「勝手に入るなよ」
「そんな憎まれ口叩くなよかわいくない」
「うるさい」
男はテーブルの脇に腰を下ろすと「はいこれ、よなよなと氷結。つまみは適当に買ってきた。ってか何度か俺電話したんだけどな」
スマートフォンの画面をちらと見ると、確かに通知が2通入っている。14:54 久世 武揚。14:59 久世武揚。
「寝てたから」
「おっす分かった。んじゃ始めよう始めよう俺は勝手に始める」
プロット
プロットその1
兄が結婚式の直前に花嫁に逃げられる。そんで酒を一緒に兄と飲んで話を聞く。兄は
昔の彼女に言われた言葉、嫌いだったんだあんたのこと。
結婚式の式場決めるところまで行って、内祝いの内容まで決めて、そこまで行ったけど、でもダメだった。
直前でダメになる男。兄。
呼び出されて酒飲んでる。いつになったら分かるんだよ、こいつは。
冗談で、俺も兄貴のこと嫌いだったんだ、っていうけど、相手にされない。
俺は嫌われても相手のことを好きでいる。いつか帰ってくるって知ってる。
「いつになったら分かるんだよ」
うーん、兄がモラハラかなんかで逃げられたってだけなんだけど、それをオチにするのって弱いなあ。
(書いてみたらなんとなくいい感じのお友達ができ、あんまりこのプロット通りにはいかなそう)
プロットその2
やっと分かったって言われて、そこに対して友人から諦めろ、と言う意味でいつになったら分かるんだよ、と言われるなど。うーむ。なんかキャラクターができるとなんとなくそれだけで満足してしまう感あるな。文章クソで嫌になるね。
作りながら考えたこと
あんまり象徴的なものはないな。いや結婚式とかめっちゃ象徴的ではあるけど、なんつーか、全体の気分を決めるようなものは。
結婚式に遅れる、うまくやる、とかはいいな。NAKED的な。指輪をなくしてゲーセンで取っていく? やだなあ。なんで結婚式ダメになりそうなんだろ?
なーんか書きにくいな。昨日は書きやすかった。中心的なキャラと関係性がわかったからか? あと昔別れた相棒、みたいなのだと、もうなんか再開かな、みたいな安易なオチも見つかるし。
結婚式だと、まあひと組のパートナーがあるよな。
式の直前に花嫁が逃げる。真相を知ろうとする。自分の実家のメンバーにはお前が悪いと言われる。会社の可愛い後輩が手伝ってくれる。相手の家族とは連絡とれない。花嫁の元カレと会う。ヤバげなやつ。花嫁の悪口を聞かされる。
三人称の語りで、主人公の気持ちはなるべく書かない。セリフで、ギリギリの馬鹿に仕方をする。どんなだろ? あいつはダメだからオレが守ってやんないと、とか? 花嫁が非難されるのを止めず、ドラマの主人公ぶるとか。これ男が実は悪者でした! ってなるより花嫁が悪いのか男が悪いのか揺れ動く感じの方が長編としては面白いだろうなあ。
あ!これゴーンガールだね!実はXXでした系のオチをチラつかせながら読ませるって手法があるなあ。このどちらが真実? っての面白いなあ。ショートストーリーだと実はXXでした!でいいかな。
まあでもこれで行くか。問題はうなぎとゲーセンをどう出すかだな。ゲーセンは元彼の職場、うなぎは二人で話していた内祝いかな。面白くはないね。
中心的なキャラクターとその破綻を描くってのはあるなドラマには。
テーマ
嫌われること。
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