【楽曲解説】「今日くらいは」(鏡音リン)
初めましての人は初めまして。
ボカロ曲を投稿している導天使(どうてんし)と申します。
今回は、ニコニコ動画52作目、Youtube49作目となる
「今日くらいは」という曲について自分なりに解説していきます。
1.今回の経緯
この曲は、もともと2月に開催されていたボカロ+ピアノのみの投稿祭に出そうと思っていました。
しかし、ピアノだけしか使えないという制約に思いのほか詰まってしまったため、これにドラムを加えた形で供養することになりました。
たまたま「一枚絵ボカロ投稿祭2024」という投稿祭が5/4にあったため、それをきっかけに今回投稿しました。
(なお、金鉱投稿祭と架空アニソン祭という滅茶苦茶投稿祭が被りまくっていた日でもある。)
2.曲作成にあたって
先述の通り、ボカロとピアノだけで当初作ろうと思っていたのですが、纏め方がすごく難しかったです。
その名残もあってか、曲自体はわずか4トラックしか使用していません。
1番は、ボカロ+ピアノのみ。
2番はそれにドラムが加わるという形です。
曲の雰囲気をいかに伝えていけるかというところを考えた際に、うるさすぎてもダメ、静かすぎてもダメということでその塩梅が難しかったです。
バランスに関しては未だに最適解だとは思っていません。
一番、もっと工夫すべき点はピアノだったと思います。
サステインペダルをうまく工夫して繋げていったのですが、どうも安っぽさが否めませんでした。
一応、ピアノは習っていたのでピアノの打ち込みは習っていない人よりはできる自信はあるのですが、本物っぽい打ち込みには至らなかったです。
もっとちゃんとベロシティ調整が必要なのか、はたまたkeyzoneでは限界なのか。しっかりとその点は拘っていく必要はありそうです。
3.曲のテーマ
タイトルは「今日くらいは」にしました。
ラスサビの最後の部分に該当の箇所があります。
曲のテーマをざっくりというと、
クラスメイトの自殺に対する悲しみを抑圧しながら生きている他のクラスメイトに思うことがありつつ、今日くらいは自殺してしまった子に捧げようという決意の曲になります。
自己満足で終わる 省みない人間
争いを好み 勝てばどうってことない
ならば敗者に居場所はないの 見向きもされないまま
今日は底辺 明日も底辺
分かってるけど嫌になる
1番Aメロ~Bメロの歌詞ですが、最初から重たい感じとなっています。
私は結構ストレートに重たい歌詞を乗せていくのが好きなので、本当にそのままの通りの歌詞の構成となっています。
これは自分自身のことを謳っているのか、はたまた自殺してしまった子のことを謳っているのかはどちらも解釈のしようがあると思います。
ただ、曲全体を通して自分自身(主観目線)で捉えたほうが一貫性はあると思います。
春過ぎて慣れたころに襲いかかる悲劇を
身近に見てしまったんだ 書き遺した手紙
詳しくは知らないけど きっと疲れたんだね
なんとなく分かるなその気持ち 逃げたかったんだね
一人流した涙
1番サビです。
ここで曲のテーマの根幹となる一つの前提が明示されます。
「一人流した涙」と1番は締めくくっているのですが、ここで大事なのは「一人」という点です。
解釈としては、
①クラスメイトが自殺してしまった子に対して思うことがない
→自分だけ涙を流している
②自分の泣く姿を他の人に見られたくない
この二つの解釈ができると思います。両面ともにあるのではないかなと個人的には思っています。
この1番の歌詞を通して、なんとなくクラスメイトと自殺してしまった子、そして自分自身との関係性が見えてくるのかなと思います。
空席の机 日が当たり輝く
もし気付けてたら 防げた悲劇かもね
だけど周りは腫れ物のように 話題避けて過ごして
今日は良かった 明日も頑張ろう
分かってるけどそれでいい?
2番ですが、ここでドラムが入り1番と少しだけ雰囲気が変わります。
1番Aメロと2番Aメロには共通するのですが、周りに対する「怒り」の感情を微妙に含んでいるのではないかと思います。
1番サビは、ひたすら自殺してしまった子に対する「共感」の感情でした。
2番Aメロでは、周りに対しての「怒り」の感情だけではなく、「防げた悲劇かもね」とあるように、自省のニュアンスも含まれています。
2番Bメロで、「だけど周りは」とあるため、周りを責めるために使われた言い回しという解釈もできますが、個人的には「一人流した涙」の中に後悔の気持ちは強く含まれていたのではないかと思います。
春過ぎて慣れたころに襲いかかった悲劇は
皆の記憶から消されてく 花もただの飾り
詳しくは知らないけど 私含め周りの
責任も多少はあるはずと 無責任な集団
2番サビからラスサビにかけては、こうした悲劇に対しての抑圧・矮小化する感情を表現したいと思っていました。
そして、悲劇に対する責任性の有無、自分自身と周りとの違い、時間が経過することで改めて見えてくる感情、そのすべてを自分自身の中で内面化していきます。
人は皆辛いことを胸の中にしまって
自然と思い出せないように もう遠ざかる記憶
詳しくは知らないけど それでも今日くらいは
君に想いを捧げようと ふと見上げた空に
映る君の姿が
ということで、最後は君に想いを捧げるとの気持ちで締めくくられています。
基本的には暗い感じの曲なんですが、ラスサビの盛り上がりも含めて少しの希望を見出せるような終わり方になりました。
こうした終わり方を演出するために、音楽理論的な方でも珍しくちゃんと工夫を凝らしました。
4.コード進行
コード進行は以下の通りです。
途中、何回も転調しておりⅠ、Ⅱ、Ⅲ表記だと逆に分かりにくいと思ったため、今回はC、D、E表記で表記します。
Aメロ(1、2番共通)キー:Am
Am→Em→Dm→Am
Bメロ(1、2番共通)キー:Am
Am→F→G→C
Am→F→G→E
サビ(1、2番共通)キー:A(→B)※最後だけ転調
A→E→F#m→D
G#dim→F#→Bm→E
A→E→F#m→D
G#dim→F#→D#m→B
ラスサビ キー:B(→C)※最後だけ転調
B♭→F→Gm→E♭
Adim→Gm→Cm→F
B♭→F→Gm→E♭
Adim→Gm→Em→C
最後、キーがCメジャーで終わるの気持ちよすぎません?
それはおいといて、一応コード進行の解説を軽くします。
とにかく暗い感じにしたいということで、脳筋でAメロにはすべてマイナーコードを挿し込みました。
Bメロには、小室進行を採用しています。ラスサビ直前だけ、AにつなげるためにEにしています。
小室進行はあまりBメロと親和性はありませんが、それでもずっと小室進行を使い続けてきた自分からしたらBメロであってもちゃんと使います。
そして、サビで同主調転調をして、またさらにサビの終わり4小節で+2の転調をします。
結構、サビ途中の+2転調が自分好みなので、今回もその形で組み込みました。
結果的に、キーが最後Cメジャーで終わり、物語として循環するという形になりました。つまり、曲を通して平行調転調しているといっても過言ではない(そんなことはない)ということですね。
普段はディミニッシュコードなんて使わないのですが、ピアノだけで表現しなければならないという点から、音の響きに複雑さを求めた結果です。
5.その他工夫点
鏡音リンの調声については、サビ以外で声を少しだけ歪ませるという方法を取りました。
これは、1番の歌詞を見てもらうのが一番分かりやすいのですが、サビだけとにかく「共感」の感情が全面に出ています。
つまり、サビでありながらも優しい雰囲気を出してあげる必要がありました。
ゆえに、サビ以外を歪ませる方法を取ったのです。
その結果、サビの方が静かになるという現象も発生しました。
盛り上がりには欠けるので、一長一短(むしろ短所の方が大きい)はあると思いますが、ある意味で個性的な曲に仕上がったのではないかと思います。
6.おわりに
実は、この記事を書いている前に既に別の新曲が出ている状態です。
投稿祭のスケジュールの都合上、一週間に複数も曲をまとめて出さないといけないみたいな状態になっており、投稿頻度の偏り具合が相当なものになっています。
この記事については、100%自己満で書いているだけにすぎないのですが、もし1ミリでも参考になるというところがあれば幸いです(本当に参考にするところどこにもないんですけどね)。
それでは、また次回の曲の解説で会いましょう。
導天使