【楽曲解説】「傷つけて」(小室進行ボカロ曲投稿祭2024参加曲)

 初めましての人は初めまして。導天使と申します。
 今回は、小室進行ボカロ曲投稿祭2024に投稿した「傷つけて」についての解説です。
 実は、新作の楽曲解説を随分とためておりまして、早くそれを書かなければならないとは思っていますが、それよりも優先してこの曲について書かせてください。

 今回の記事については、いつもの構成と異なる部分や熱量の違いがあるかもしれませんがご了承ください。


0. 何を作りたかったのか

 実は、小室進行ボカロ曲投稿祭はこれが2回目で、昨年も実施されています。昨年も参加させていただきました。
 昨年作ったのは、「本音」という曲です。
 小室進行投稿祭ということで、「本音」の中で取り入れた要素がこちら

・Aメロ~サビまで全て小室進行にする
・間奏部分に今まで自分が作ってきた曲で、小室進行を用いた曲のサビメドレー

 一体、誰得要素なんだ。という話ではあるのですが、どうしてもそのようにしなくちゃいけない理由がありました。

 それは、①自分が普段から小室進行を多用しているから、②単純に周りのレベルが高いから。それぞれについて軽く話しましょう。

 まず、①についてですが、自分の曲の7割~8割(いやもっとかも)は小室進行をサビで使用しています。また、AメロやBメロ前半にも小室進行を多用しています。
 つまり、単に参加するのであれば普段投稿している曲と何も変わりがないということです。
 そのため、自分なりにこの投稿祭に向けて、どのような曲を出していくのか。どういった点で、普段の曲と差別化していくのか。そういった点が重要になってきます。
 次に、②についてですが、この投稿祭の縛り内容は単に「小室進行の使用」にすぎません。自由度が非常に高い投稿祭であることは間違いないのですが、やはりテーマに音楽理論が絡んでくるといったことで、敷居であったり民度であったりは高くなってくると感じます。
 だからこそ、それなりにしっかりと作り、自分なりの色を出していかないといけないというのが、この小室進行ボカロ曲投稿祭に向けての、自分なりの解釈というか立ち位置になります。

 さて、では今年の曲はどうするのか。とりあえず、絶対に譲れない要素として以下のものをあげました。

・メロディを納得できるものにしたい
・全編小室進行にしたい
・普段作っている曲の感じに似せつつ、その中で自他共に好みになるような曲を作り上げる

 ということで、なんとか上記の3条件を満たしながら曲投稿まで至ることができました。

1. 作り始め

 普段からもそうではあるのですが、サビのメロディから考えます。
 特に、小室進行という制約があるためはじめからコード自体は決まっている状態です(拍数に関しては、メロディの雰囲気などさまざま諸条件を鑑みてのちに決定する)。そのため、必然とコードに合うメロディを探していくことになります。
 ただ、自分の思いつくメロディはもはやほとんどが小室進行に適応する形になってしまうので、メロディ→コードだとしてもコード→メロディだとしても制作手順にそこまで影響はないのかなと思います。

 とにかく、このサビのメロディを考えるのが大変でした。
 いざ良いメロディを作ろう作ろうと思うと全然うまくいかなかったり。普段は歩いている中で思いついたメロディを可能な限りレコーダーで保存しておいて後で耳コピする方法を取っているのですが、今回のメロディ出しは机上がほとんどでした。
 人って、座っているときよりも立っているときのほうが冴えるみたいな話を聞いたことがあるので、もしかしたらそういった要因もあるかもしれませんが、なかなか思い浮かびませんでした。何ならそこが一番時間かかったところだと思います。
 なんとかサビのメロディを作ることができ、そのあとはAメロ→Bメロの順に作っていきました。

 小室進行の曲を作る際に、「人が人を傷つけるのには理由がある」という歌詞をふと思いついたのでそれをテーマにしようと思いました。
 そして、それをテーマにするのであれば傷音ウサが適任であるだろうと思い、その段階でUTAU音源の傷音ウサを使用することが確定しました。

 ちなみに、傷音ウサはマイナーなUTAU音源ではありますが、自身としては三度目の使用となります。
 一度目は「ブロック症候群」という曲で使わせていただきました。なお、この曲が唯一ボカロwikiに載っている曲となります。
 二度目は「傷グスリ」という曲で、今年の元日に出した曲になります。この曲については、傷音ウサだけでなく櫻花アリス・ゲキヤクにも歌ってもらいました。
 このように、何回か使ったことはあるので、自分としても傷音ウサを使うのに抵抗はなかったです。また、OpenUTAUが登場したのも、UTAU音源が使いやすくなるきっかけの一つになりました。

2. 歌詞

人を傷つけるには理由があるから
それを知ろうとしないで責め立て続ける
今、どんなに磨かれた鏡があったとしても
いつかは不機嫌な空に曇り始める

心の傷は残り続けるけど
傷つけた側もずっと残ってんじゃないの
 
ましてや何の関係もない第三者から
被害者ぶって怒鳴りつける夢を見た
人の心は分からないからどんな言も裏があるって
息が苦しくなる

人は傷つけた数より傷ついた数が
多く感じてしまう生き物なんだね
でも、傷をつけてしまったという自覚があるなら
隠れた優しさは此処に確かにあるよね

人は気分屋で 分かっていても
ノリだとか状態とか支配されるから

ましてや何の悪気もないこの口から
被害者ぶって罵りだす私がいた
関係が壊れてようやく気が付いたんだ
戻れないって息が苦しくなる

今、傷つけて傷がついて強くなれたのかな
傷をつけて気が付いて学べたかな
もう何度目の涙だろう
同じことを繰り返してる

自分に面倒くさくなり動けない
被害者ぶって保身に走る私
人の心は分からないからどんな言も裏があるって
言い訳呟いて

でもだからこそ面白いって思いたい
好きだからこそ傷つけられることもある
もし無感情でその場をやり過ごせても
何も残らない無駄な時間

今、傷つけて傷がついて強くなれたのかな
傷をつけて気が付いて学べたかな
傷つけて傷つけられ強くなれたのかな
傷をつけて気が付いて学べたから

 先述のように、「人を傷つけるには理由があるから」というところが真っ先に思いついたのでそこを起点にしました。
 なので、そこの部分については「詞先」で作ったことになります。

 全体を通して、「傷つけた側」の視点で歌詞を書いていこうと思いました。
 人って、無意識のうちに誰かを傷つけていることはあると思いますが、傷つけた自覚よりも、傷つけられた記憶の方がより強く、より長く残るものだと思います。それをダイレクトな形で伝えています。

 結構、感想いただく中でも歌詞の詰め込みといった声をいただきました。それは単純に曲と詞のバランスを考えたときに、詞が長いというよりかは曲が短いからだよなあというのが正直なところです。
 Aメロが4小節×2、Bメロが4小節、サビが4小節×2と必要最低限な形でまとめました。軽快な感じというか、疾走感を出したかったのであまり間延びさせないように心がけた結果、歌詞を詰め込まざるを得なかったといえるかもしれません。
 結果的に、歌詞を詰め込んだことにより疾走感を表現できた部分もあるのかなと思います。

3. 工夫点

 今回の曲の工夫点について列挙していきます。

 まずはイントロですが、最初はピアノのバッキングのみから始めました。
 これは、もう分かりやすいくらいに「小室進行使うよ」という提示の意味と、「曲全体を通してこのバッキングのリズムで伴奏するよ」という二つの提示の意味を意図していました。
 このバッキングのリズムはAメロやBメロの一部、また落ちサビなどにも登場します。
 そして、ピアノ入れた後にベル系(?)のシンセ(一応、プリセット的にはデジタルハープ)のメロディを入れました。そのメロディについては、本当にサビまで仕上がってイントロどうしようってなったときにはじめて思いついたんですが、我ながらいい雰囲気のメロディが作れたのではと思います。
 このメロディはイントロのみ1回しか登場していませんが、間奏など何度も繰り返すと逆に効果が薄れるかなと感じて、イントロと間奏では異なる形を取っています。

 次に、Bメロから間奏に少しだけアルペジオを取り入れました。Aメロ→Bメロに変わったよということを示すためのものですが、いい感じにBメロを引き立ててくれたのではないかと思います。
 また、Bメロの最初の部分(1番歌詞でいうと「心の傷は」の部分)なんですが、実は去年の小室進行投稿祭に投稿した「本音」のBメロの最初の部分と全く同じメロディになっています。去年の曲と少しでも共通点を持たせたいと思って、そういう工夫をさりげなく入れています。

 小室進行は基本的にAメロやサビの親和性が高い一方で、1終止になるのでBメロ(特にサビ前)には向かないという性質があります。そのため、毎回サビ前からサビへの繋ぎをどうするかというのは一つの課題になります。
 今回は、サビのインパクトを少しでも高めるために、サビのメロディの音を全体的に高くしました。転調して音程を変えずにという選択肢も取ることはできたんですが、音高くした方がいいじゃんってなったというのと、せっかくキーがCメジャーで、Am→F→G→Cが実現している中でそれを崩したくなかったというのがあります。

 サビの後半部分(繰り返し2ループ目)に、3連符を入れて差別化するというのはOzashinさんの曲から学びました(厳密には違うかもしれませんが)。
 サビでなんとか疾走感を出したいと思い、ハイハットを小刻みにするなど工夫しました。

 今回の曲の構成としては、
イントロ→A→B→サビ→間奏→A→B→サビ→C→落ちサビ→ラスサビ→C(前半部分)という構成にしています。
 ラスサビ後に最後もう一段階というのが自分の好みな展開ではあるのですが、今回はCメロ前半部分をそのまま借用してラスサビ後に充てました。
 最後の締めだけブルーノートを使い、どこか哀愁が漂う形で終わらせました。歌詞で言うと「学べたから」の部分になります。あまりブルーノート使わずにスケールに使われているもののみで完結(あるいはハーモニックマイナーで半音上げる程度)することが多いので、自分の曲の中では珍しいほうだと思います。

4. 小室進行投稿祭を通して

 今回、土日がさまざま忙しかったためにイベント当日に曲巡回することができずに他の投稿曲を一曲も聴くことができませんでした。
 月曜日になって、ようやく巡回を始めたわけですが、此方が聴いているわけでもないのに様々コメントを頂いて嬉しい限りです。

 ただ、自分にとっては悔しい結果になった部分もあると感じています。それは、やはり数値的な面にはなるのですが前回を越せなかったというのが大きいです。
 少なくとも前回よりもいい曲を作り上げられた自信はありましたが、実際には再生数・いいね数・マイリスト数すべてとっても前回を下回る結果となりました。

 自分の中でも悶々としている部分はありまして、この一年間で曲もコンスタントに投稿し続けてきたわけですが、自分の曲がより陳腐化してきているのではないかと感じています。別に、昔は陳腐じゃなかったとか言いたいわけじゃないんですけどね。
 本来ならば、積み重ねれば積み重ねた分だけ成長って見えてくるものだとは思うんですが、成長が止まってるというか、むしろ劣化しているんじゃないかと。数値的な面だけじゃなくて、実質的な面ですね。
 もちろん、ニコニコ動画の在り方の変容や、周りのレベルが高くなっていっているといった外的な要因もあることは間違いないとは思いますが、にしても「もう67作目なのになあ」と思う気持ちもないわけじゃないんですよね。

 まあ、だとしても自分の曲を聴き続けてくれているほんの僅かな人と、そして自分自身の期待を裏切らないようにこれからも作っていくしかないわけなのですが。ある意味で呪縛なのかもしれませんね。

 と、小室進行投稿祭から話が逸れましたが、小室進行投稿祭に関しては現在このnoteを書きながら、巡回して聴いているんですけど、みんな凄すぎないですか。
 いや、この投稿祭のレベルが高いことは分かり切っているので、正直巡回するのも勇気がいりました。曲聴くたびにそのすごさに圧倒されると同時に、自分自身の創作のモチベが落ちてしまうんじゃないかと。そういう自分の弱い命と戦いながら、なんとか巡回に漕ぎつけたわけですが、やっぱ小室進行いいですね。

 ちょっと曲ごとにコメント書けるほどの余裕はないので、とりあえず聴いた曲に「いいね」して回っています。漏れてたらすみません。いいなと思った曲はマイリス突っ込んで、あとでこっそりXとか色々フォローしようかなと思ってます。

 今聴きながらではあるんですが、傾向として、落ち着いた雰囲気の曲が多いなと思いました。やはり、季節感の影響もありそうです。
 あとは、みゃーまいの曲が多いですね。自分も当初はみゃーまいで小室進行投稿祭出そうとも考えていたわけですが、絶対みゃーまい曲多くなるだろうなと思い敬遠しました。
 傷音ウサはさすがに被らんだろって思ったら、去年傷音ウサ使っている人いたのを当日知って驚きました。

 自分が曲を聴くにあたって一番重視しているのがサビのメロディが好きかどうかなのですが、さまざまな曲を聴くたびに小室進行のサビメロディにすごく栄養貰ってるなあと感じます。
 実はボカコレ2023冬でいいなと思った曲を度々今でも聴いているのですが、今回の曲の中でいいなと思った曲も、今後も聴き続けていきたいなと思います。

 こんな良い曲に巡り合える投稿祭を主催してくださったキンカセンさん、また参加者の皆さん、本当にありがとうございました。

5. おわりに

 ということで、今回はいつものnoteと少し構成など変えました。ちょっと色々関係ないことまでしゃべり過ぎた感はありますが、今後ともよろしくお願いいたします。

 それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。
 またどこかでお会いしましょう。

導天使




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