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政治資金収支報告書を見てみる

実は、私は「しんぶん赤旗」を購読している。別に左寄りではないが、普通に勉強になるので読んでいる。あの新聞の政治調査の執念はすごい。2024年話題となった「政治とカネ」の問題の発火点は赤旗だったし、「2000万円問題」も同様だ。共産党がどのように野党として与党を追及したいのかの論点整理ができるとてもいいメディアだと思う。

さて、その赤旗が目を皿にして(血眼にして?)読み込んでいて、政治とカネトピックでよく出てくるソースが「政治資金収支報告書」と、「政党交付金使途報告書」だ。これがよくわからないので調べてみた。

政治資金収支報告書ってなに?

政治資金収支報告書は、政治団体(政党、政治家個人の資金管理団体、後援会、派閥、業界政治連盟など)が、1年間で集めたお金(収入)と使ったお金(支出)を記録している書類だ。法律「政治資金規正法」に基づき、公表が義務づけられている。

年1回、11月末頃に、前年度分の報告書が総務省や各自治体選挙管理委員会でまとめて公開される。つまり、2024年11月なら、2023年1月~12月の会計分がまとまって出てくるわけだ。ここで議員や政党が受け取った献金、パーティー券収入、政党交付金(税金)や企業献金、さらには家賃や人件費、広報物印刷費、飲食費用などが「こういう使い方してるんだ!」と赤裸々に(建前上は)示される。

ただし、問題も多い。例えば、5万円以下の寄付は寄付者名が出なかったり、人件費の詳細が不明だったりするなど、情報不足は少なくない。さらに領収書は5万円超なら添付義務があるが、それ以下は不要、かつ手書き領収書や謎の「徴収困難領収書」が許されるなんてグレーな運用もある。要するに、抜け穴だらけなのだ。

そして、個人的に問題だと感じたのはこの公開が基本的に3年分しか公開されておらず総務省と各都道府県選挙管理委員会のウェブページに分散して公開されており、しかも!、スキャンした画像(手書き!?)だということである

総務省

いや、分かれすぎでしょ。分析させたくない気持ちがプンプンです。総務省はまだウェブページだが、ネット公開に対応していない都道府県もあるそう。恐ろしや。

そんなこんなで極めて収集、分析がしずらいのが政治資金関連データだが、近年、Googleの「Pinpoint」などAI OCRツールが無償提供されており、まとめてPDFを突っ込めば手書き領収書まで検索可能になっている。こうしたツール活用で、自動化を頑張っていらっしゃる方も以下のようにいらっしゃるよう。

また、過去分のデータなどをしっかりとアーカイブされている団体もあるのでそちらを確認すると推移なども見て分析できる

情報公開クリアリングハウスによる国会議員関連団体データベース
URL: https://clearing-house.org/

政治資金センター
URL: http://www.seijishikin.sakura.ne.jp/
ジャーナリストや研究者の有志が運営するサイト。2011年以降の政治資金収支報告書をPDFで整理・公開し、比較的簡単に探せるようにしている。ただし、全てがテキスト化されているわけではなく、有料会員制度もあるため、古いデータや特定政治家の長期動向を調べたい場合には有用だが、一部制限あり

国立国会図書館Web Archiving Project(WARP)
URL: https://warp.da.ndl.go.jp/
国立国会図書館が提供するWebアーカイブサービス。過去に各府省・自治体が公表していた入札・補助金情報などが消えてもWARPで遡れることがある。直接的な政治資金報告書データベースではないが、補助金や入札履歴を調べる際、政治資金報道の裏付け資料探しで役立つ。

では、そのデータの何を実際に確認すればいいのか?

「収入編」と「支出編」に分けて以下のようなポイントを見るとデータ確認が面白いらしい。

収入編チェックポイント

(1) 同日同額献金の集中
同じ日に同じ金額でズラーっと寄付が並んでいたら要警戒。過去には企業が従業員名義でばらまく「串刺し献金」例が実在したりする

(2) 月末定期献金の不自然さ
ファン的支援者が毎月2万円ずつ、何年も続けてくれることはあり得る。しかし、100人単位で同額同日の入金があれば、企業や団体が「個人名義を借りて」分割献金している可能性あり

(3) 大口寄付や突発的変動
突然現れた投資家や経営者が上限150万円フルで寄付してくるケースなど、なぜその年に?なぜその議員に?という突発的変動は必ず注目。政策絡みや人脈、汚職リスクが潜むかも?突発案件はその裏の背景まで探るといいらしい

(4) 補助金受給企業・外国人献金
補助金を国から受けた企業からの献金は原則禁止。外国人・外国法人による献金もNG。疑わしい企業名は、国交省指名停止データベースや厚労省労基違反リストで名前をチェック。外国人名っぽい寄付者には、漢方(帰化情報)検索や追加取材で確認を実施する

(5) 公示前の特定寄付
選挙が近いと明らかな時期に集中する献金は、選挙運動買収と疑われる「特定寄付」になり得る。SNS投稿や事務所開き情報と突き合わせ、「選挙を意識していたか」を判断する

支出編チェックポイント

(1) 家賃・事務所費が常識外れ
議員会館を事務所として届出してるのに家賃がある?実家を高額で借りてる?こうした矛盾や抜け道は、裏金化や身内利益供与を疑う根拠になる

(2) 人件費は最大の闇
人件費は詳細不明で領収書不要。異様に高額だったり、秘書がいるはずなのに人件費ゼロだったりすると裏があるかも。過去には人件費偽装で裏金化した事件も。他の事務所と比べて著しく大きければ人件費項目の中に色んなものが紛れ込んでいる可能性あり

(3) 徴収困難領収書の濫用
本来、領収書を出せない経費は交通費など些末なはず。それなのに数十万~百万円単位で「徴収困難」扱いなら確実に怪しい。発注先に確認すれば簡単に領収書取れそうなサービスなのに「徴収困難」扱いなら、偽装を疑う余地あり。もちろん少額の経費の場合には仕方がない面はある

(4) 政策活動費、政党支部への資金移動
政党本部から個人議員への政策活動費。何十億単位で動く例(話題になった二階氏の件)もあり、国費(政党交付金)がどう使われるか不明。まさに最近の国会議論のホットトピックである。こうした巨大なブラックボックスを注意深く見ることで「なぜ政策が特定方向へゆがむのか」が見えてくるかもしれない。

(5) 選挙運動費用収支報告書との突合
選挙後公表の「選挙運動費用収支報告書」と定期公表の収支報告書を比較し、選挙費用に不自然な使い方がないか、余剰金が不明に消えていないかを見る。繰越金や公費負担部分との整合性も要確認

【まとめ】

  • 政治資金報告書とは:政治家・政党が一年間に得た収入と支出をまとめた書類。建前は透明性確保。

  • どこで確認?:総務省サイト、都道府県戦艦で公開。ネット非対応自治体や画像PDFなど不便多し。過去3年分しか総務省サイトには無く、地方分散が悩みの種。

  • 何をチェック?

    • 収入編:同日同額集中、突発的高額寄付、補助金企業、外国人献金、特定寄付など。

    • 支出編:家賃・事務所費の不合理、人件費ブラックボックス、徴収困難領収書の乱用、政策活動費の不透明さなど。



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