所感①

私は職場で誰かに話しかけられたら笑顔で応える。いつも機嫌良く、周囲の雰囲気が良くなるように、謙虚に楽しく振る舞っている。個人を責めることなど決して無いし、おおらかで鷹揚、を旨としている。
しかし、本来の私は暗く陰鬱な人間だ。損をしないようにみみっちく計算をして、僅かでも利のある選択ができないかキョロキョロして、挙句に疲れ果てている。いざというとき失敗しないか常に憂慮している。みっともないとかダサいとか鈍臭いとかを理由に、嫌われないか、意地悪されないか、恐れている。おちょぼ口で猫背になって暗く薮睨み、大事にしているものを奪われないか、横入りされないか、本来受け取れるものを騙し取られてないか、そんな事ばかり注視している。昔話で、不幸になるおばあさんだ。
多分それで眉間には硬い皺があり、下がった口角や瞼が垂れた細い三角の目を持つ。顎もない。真顔でいるとき、顔が強張っていたのが定着したのだと想像する。

時々、「いつも明るい笑顔の、太陽みたいなお母さん」的な表現を見聞きする。
それがみんなの理想のイメージなのだとしたら、私は絶望する。就業時間外のひとりの時間、私は、面白い漫才を見てすら無表情なのだから。

世の中には不穏な事件が後を絶たないものだ。賢そうに黙ってニュースを見て、冷静沈着を装う。間違ってもテレビに向かって文句を言うことはない。そんな事するのは、愚かだし生産性ゼロだから。
それより、残りのご飯は、何食分かが問題だ。ゴミを正しく分別し、正しく回収日を守ることだ。5円安い卵を買うことだ。

出来るだけ周囲に迷惑をかけず、さざなみを起こさなければ、誰かの標的にもならないだろう。知らんけど。

そして、もう一度問う。
何のために生まれたのだろう。
私は?そしてあなたは?

時間軸の線上の一点に、私が現れた謎。

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