視聴者から見た通年アニメwithコロナ 「ミュークルドリーミー」「クレしん」の場合
2020年、コロナによるアニメの放送休止・延期が相次いだ。これを書いている間にも人気声優の感染が発覚したり、状況はまだまだ予断を許さない。
通年アニメならではのコロナ禍とは
「プリキュア」や「サザエ」、「ドラえもん」といった通年アニメはそれでも各々放送を再開。界隈のアニオタの日常は戻ってきたように見える。……が、こうしたアニメを観ていても、事態は現在進行形だと事あるごとに実感させられる。
通年アニメならではのコロナ禍とは。たとえば番組休止で放送スケジュールがズレたことによる、作中時間とリアルのそれとの乖離がある。
夏休み、ハロウィン、クリスマス、お正月……。通年アニメはリアル時間に合わせた季節ネタなどを盛り込むことも多いのだけど、それも番組ごとズレてしまっている。
ミュークルドリーミーの場合
特に顕著なのがサンリオ原作の「ミュークルドリーミー」だ。「ミュークル」では過去三回お誕生日回を放送した。誕生日設定は当初から作品外で明かさていて、三人のそれは2020年カレンダーでいずれも最速放送がある日曜日に当たる。
https://www.youtube.com/watch?v=c7jbEZeMF9Y&list=PL9J3ctRYfnvj-WaUoMQm9a4IjObCcmWYa&index=5
順当に行けば作中の日付と放送日が重なるはずだったんだろう。だがこれらがコロナによる休止できっちり三週ズレてしまっているのだ。日付ではっきり示される分、ズレはより明白なものとなっている。
■日向ゆめ(8月16日生)⇒#19「お誕生日ゆめちゃん合宿中」(9月6日放送)
■月島まいら(10月18日生)⇒#28「まいらマイラブ♡」(11月8日放送)
■南川朝陽&杉山遼仁(11月15日生)⇒#32「誕生日はワンワンいちごー!」(12月6日放送)
(この六ヶ月間でみゅーちゃんやぺこ君も誕生日を迎えていますが、本題からは外れるため載せていません)
ゆめちゃんの誕生日は確か作中では明示してなかったと思うけど、まいらちゃんは彼女が読モとして載っている雑誌にはっきり書いてあるし、朝陽と杉山先輩に至ってはサブタイが1115の語呂合わせという。サブタイくらい誤魔化しても良かったんじゃないかと思わなくもないけど、見事に開き直っちゃっている。まあここまで続いたらな……
本作が放送休止――その間は再放送でしのいだ――のはわずか四回で、ニチアサの中でも一番乗りに再開している(四週休んでズレは三週ということはどこかで一話削ったのだろうかひょっとして当初から一週ズレる予定だったのか)。
「ヒーリングっど♥プリキュア」、「キラッとプリ☆チャン」の九回分と並べてみるとその早さがよく分かる。
コロナ対策を考えると早けりゃいいってもんでもないけど、制作スケジュールの混乱によりクオリティが目に見えて落ちるなんてこともなく変わらず面白いアニメを提供してくれ、界隈のオタクにとっては一つの福音となっていた。
「サンリオが本気(マジ)で送るドリーミーファンタジー」のキャッチコピー通り、本作からはサンリオの本気が伺える。時間も予算も相応にかけて準備してきたんだと思う。
この誕生日設定も仕掛けの一つだ。たかが誕生日というなかれ。アニメやソシャゲのSNS広報において、公式がキャラクターor声優のおたおめtweetをして#生誕祭を盛り上げるのは定番となっている。「ミュークル」も日付設定を放送当日に持ってきた上で、作中でもSNSでも盛り上げようとしたのだろう。
だがそんな目論見もコロナによって空振りに終わってしまった。エピソード自体はめちゃくちゃ面白かっただけにとても惜しい。
ただし「ミュークル」は転んでもただでは起きない。9月27日放送の#22「スギヤマ☆パラダイス」ではコロナという言葉こそ出てないものの、小ネタとしてアマビエの絵を登場させたりしている。後のハロウィン回ではことこ先輩が同じくアマビエのコスプレを披露。
放送中の時事ネタを後のエピソードに反映させやすいのは通年アニメならではだろう。
クレヨンしんちゃんの場合
コロナにまつわるネタを扱ったアニメでは「クレヨンしんちゃん」も。東京都外出自粛要請真っ最中の4月25日には「お家の中で楽しむゾSP」と称した放送を実施。秋田のじいちゃんと画面通話する「インターネットでお電話するゾ」(2015)など、「おこもり」に微妙に関連するエピソード三本を放映した。
特筆すべきはこの三本は全て過去作品の再放送ということ。過去二十年、バリエーションに富んだエピソードを作り続けてきたご長寿アニメだからこそできることだ。野原家はいつも私たちの日常に寄り添ってきた。
また7月25日には新作「父ちゃんがテレワークだゾ」を放送。ひろしがzoom会議しようとするもしんちゃんに邪魔される……という、これも現状を意識してはいるものの、視聴してみると時事ネタを挟んでくるいつものクレしんといった感じで全く違和感なかった。
終わりに
アフターコロナ、withコロナでアニメ制作or内容そのものが劇的に変わるか、それが定着するか。まだ分からない。アニメの企画から放送までには時間がかかるので、コンセプトレベルからコロナシフトに対応した新作が出てくるとしてもまだ先のことだろう。
今はまだ、作品毎のそれまでの制作過程やコンセプトが改めて問われているような段階で……そして、そうして作られたものが私たちをどれだけ楽しませてくれていたか。こんな状況でも楽しませてくれているか。「クレしん」や「ミュークル」を観ているとそんなことを再認識する。
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