![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/106121412/rectangle_large_type_2_0f8f574f863f331e81ae07668a46ba78.jpeg?width=1200)
【創作小説】佐和商店怪異集め「名前」
「晃次郎さん」
「えっ?」
素の声が出た。榊は、名を呼んだ菫を凝視する。
「どうしました?」
「いや……名前、」
「榊さんの名前ですよね?」
「うん。いや、そういうことじゃなくて」
菫は首を傾げる。
「何で下の名前で呼んだんだ?」
「榊、のとこから読みましたけど」
「はぁ?」
間の抜けた声を出す榊に、菫は封筒を見せる。
「榊さん宛の封書ですよ。業者さんからです」
「宛名読んだだけ……?」
「え。何か悪かったですか?」
榊は顔を手で覆う。
「何も悪くない。気にするな」
菫は首を傾げたまま。榊は榊で、名を呼ばれた威力に未だ打ちひしがれていた。