見出し画像

いってら角野くん

※トップ画像:WikipediaC.C(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:NYC_Turtlepond.jpg

(タイトルは角野氏愛用のぬいぐるみクッション「おかえり園田くん」から)

先だってお知らせがあった『NY引っ越し』について、ご本人のnoteが公開になりました。私も漠然と考えてたことを書いておこうかなぁと思い、noteのエディターを開いてます。

今回書くことは、感想だとかそういう誰かの需要が少しでもありそうな記事ではなくて、誰の役にも立たない自分語りがほとんどで、かてぃんさんについてのことも、いつにも増して憶測満載です。
なので角野隼斗に興味があるけど私には興味ないという方には読むことをおすすめしません。

それに実在の人物に対して少し、いや感じ方によってはかなり、失礼なモノの見方かもしれないので、読んでくださる方も、私が相当かてぃんさんを好きで、憧れて尊敬している、そのあたりを担保に薄目で読んでいただけるとありがたいです。

注意書きみたいなめんどくさい始まりですみません。では。

特に注目というか、考えていたことと直結したのはこの部分です。

"表面上は満足でも、やがて燃え尽きてしまう"

角野隼斗『ニューヨークに家を借りてみた』本文

かてぃんさんのピアノ人生はざっくり書くとこんな感じ。

・大学在学中に国内最大級のピアノコンクールで優勝(2018)
・コ口ナ禍にYouTube需要の波に乗り、現在登録者数120万人以上
・ジャズの聖地ブルーノートデビュー
・ショパンコンクール参加
・5000人収容の国際フォーラムを含む全国ツアー
・国内外の様々なプロオケと共演
・海外のプロオケとの日本ツアー
・所属バンドもメジャーデビュー
・情熱大陸、バース・デイなど、密着ドキュメンタリー出演
・紅白、CDTV、Mステ、題名のない音楽会など、主要音楽番組に出演
・ドラマ主題歌、報道番組、CMなどの作曲、編曲
・一万人の第九や東急ジルベスター、フジロックなど国内の特大音楽イベント出演
(時系列は一部前後してます)

簡単に書いてもこんなにあって、その中では様々な有名人との出会いや、パイプオルガン演奏の挑戦なども含め、いろいろなことがあって。

すごいですよね、ほとんどがたった3年ちょっとのあいだの出来事です。何人分か混ざってない? ってレベルじゃないですか。
でもこれ、私は嬉しいしすごいって喜ぶ気持ちと同時に、少し不安になってました。

達成のスピードが速すぎる、って不安。
「こんだけやったら日本で他にすることないじゃん」って。

(メディアミックスはあと映画音楽とか大河テーマ作曲くらいでは……しかもそのへんは期間も必要だからちょっと間が空きそうだし)

年明けからの全国ツアーという形も2巡したし、レギュラーのラジオも毎月1回聴くを3年繰り返して、元々ルーティンが苦手な私は落ち着くフェーズだ、と感じてしまっていました。

(念のため、ツアー2023のファイナル感想noteを書いていないのは、ここに起因することではありません。単純に、角野隼斗がすごすぎて私の語彙力が負けて時期をのがしてしまっただけです)

共演してない大手プロオケだっていくつもあるし、いますぐ「日本ですることない」に行きついちゃうわけではないのだけど、第九と東急ジルベスターに出演した後は、なんかもう、やりきった感がすごくて。

同じオケや同じイベント、番組などから何度も呼ばれるのも光栄なことだし、むしろそうでないと一過性の話題頼りの人で終わってしまう。けど、今後はこのルーティンなのかな。。。っていう感覚がどうしても拭えず。

元々、小説家を目指している目線もあるのか、ここまでは何かのたびに「あ、次の章に入った」みたいな感覚があったんです。でも今後はそういう感覚じゃなくなるのかな、みたいな。小説はループものでもなければ繰り返しをあまりしないので。
小説に例えるなんて、ひとりの音楽家の生き方をコンテンツのように見て消費している気がしないでもなくて、自分でも失礼なんじゃないかと考えたりもしましたが、一応自分の中ではそういう意味では捉えていないつもりです。
でも「好き」と「推す」の境目ってそういうところじゃないかとも思っていて、今後も「推し続ける」にはヲタク用語でいう「燃料」が足らなくなるかもと感じていました。

つまり、かてぃんさんのいう、「やがて燃え尽きてしまう」は私も同じだったんです。
ただ違うのは、私はただファンなだけなので燃え尽きそうでも日常は別にあるからいいんです。
よくはないけど、好きな気持ちは続くし、おそらく外からみたらきっとあまり変化を感じないと思うし。もしルーティンになったってかてぃんさんが前と同じ曲をやるとまるで別物になるくらいなわけで、新しいレパートリーが加わっていくというだけでも、ファンなだけのこちらはそれなりにずっと燃えていられるはずなんです。

だけどかてぃんさんは音楽家の道を選んだ人なので、日常も非日常も、全部そこにあるんですよね。燃え尽きるわけにはいきませんよね……。
で、推しが燃え尽きてしまったら、正直な音を出す人ですから、きっと私もあれれ? となってしまうと思います。

それに、あと何十年も現状維持を続けていくにはまだ若すぎて、世代交代もある。比較的すぐにある世代交代は、盛者必衰というよりは順番が回っている感じだからまだいいんですよ。角野隼斗から亀井聖矢に、とか、軽くバトンタッチしてる。けれどそうやってバトンタッチの続く限り、確固とした人になっていなければ順番はもう回ってきません。
若く素晴らしいピアニストは今後もどんどん現れるし、なにより、かてぃんさんがそれを望んでいて、未来を育て始めているから。

なにもアクションを起こさない現状維持を続けていたら、本当に盛者必衰の理に従うことになってしまいかねないんですよね。

そんな感じで超勝手に、かてぃんさん、そろそろ次の章にいこうよ、とか思っていました。

次、といっても、かてぃんさんのいる場所は日本一刺激的な都市、東京。私も生まれたときから結婚するまでは東京の区内にいたので肌感というか、東京より刺激が欲しくなったらもう海外の大都市に行くしかないんですよね。
何を刺激とか面白いとするかにもよるけど、それこそ音楽ならニューヨーク一択じゃないかと思っていました。

あとなんとなく、10月くらいからかな。
言葉の端々、言動の余白に「現状に不満というか疑問のようなものを抱えている」雰囲気があって、「音楽が楽しい」と「音楽を仕事にする」ことのバランスが狂っているんじゃないかなって気がしてました。
プツっと糸が切れて音信不通になってもおかしくない感じというか、責任感のある人だから実際には起こりえないでしょうけど。

凄い密度で活動していることで、余韻に浸る間もなく次の本番っていうのも長く続けるものじゃないですよね。その日に集中したいのに、練習室で次の公演の練習とかね。作曲をしたりインプットをする時間を作るのも大変だよなぁとも……。

サタデーウオッチ9とかわたヒモの音楽も、本当はもっと量的にも拘って携わりたかったかもなぁとかも。自分で動画編集したりする時の感じを見てて、1曲2曲はいどうぞと投げて気が済むタイプかなぁと……。それが向こうの意向ならともかく、自分の時間がないからとかだったら、歯がゆいだろうな、みたいな。

それから、すごい密度で活動しているから、なんだかいつも角野角野角野って情報が目に入ってくるんです。
Twitterでも興味界隈では毎日のようにトレンド入り。
(好きで情報を集めているので余計に、なのはそうなんですが)嬉しいけど、こんな言い方もアレだけど、他にピアニストいないみたいじゃん……という悪目立ち感すら感じました。

最近Twitterでプロモーション広告が流れてくるんですけど、最初に詳細覗いたりいいね付けたりしたものが、何回も何回も流れてくるんです。
マーケティング業界にはザイオンス効果といって、たくさん対象に触れる機会があると好感度が上がる効果が存在するらしいのですけど、私は好きでもしつこいと嫌いになるまであるので、多すぎるのは逆効果だよなと思うのです。

かてぃんさんの情報が多すぎて嫌いになることはないけど、そこそこ好きだけど私ほどはまってない人とか、他のピアニスト好きな人とかからしたら、「また?」「いうほどすごいか?」って、なんだかそろそろヘイト集めてきそうだなとか、感じてました。(もともとずっとそういう気配は存在しているし……)

まあ、名前が浮上しなくなったらしなくなったで、「消えたなw」とか勝手なことも言われるんでしょうけど笑

じゃあわざわざなんで海外に住むのかというと、日本が居心地良すぎるんですね。居心地が良すぎて、ありがたいことに仕事もたくさん頂けて、仕事をひっきりなしにこなすうちに、なんか自分がすごい人間なんじゃないかと思ってしまいます。

角野隼斗『ニューヨークに家を借りてみた』本文

すごい持て囃されて、居心地が良すぎることの違和感。
この辺を読んだときに、上のような感覚をまた改めて思い出しました。ほんと、今の日本は角野濃度が高すぎて、酸素が多くても酸素中毒になっちゃうみたいな……ね。

ちなみにというか、かてぃんさん、ちょっとキモって思ってたかもとも。キモって不快って意味じゃなく、どうしても人気者の自覚を持てない部分があったよなぁと。責任という意味での自覚は持ってるとは思うので、そっちじゃなく。

なんかこういう人なので。なのに、コ口ナ前にコンサートやってた頃は数百人とかの小ホールだったのが、中止後一発目のサントリーホールソロが5分足らずで完売ですから。その後も軒並み即ソールドアウトが相次いで、5000人のホールも完売。
出したコンチェルトのアルバムも、発売後半年を経てもなお超大手CDショップクラシックコーナーの一等地に展開を構え続けているとか、自分の小説がそんなだったらキモいです。他にもスゴイ作家さん山ほどいるのになんで私? ってなりますよ……キモっ。怖っ。

ぶっちゃけ、今の日本は異常ですって。ちょっと共通項があったらすぐ角野隼斗でいこうってなっている感じが否めないというか。
ファンなので嬉しいし理由も分かるんですよ、だって一緒に仕事したいって思うじゃないですか、あんな人。イープラス方面からの営業も効いているでしょうけど、それだけじゃなく、ゲストに呼べば受け答えも真摯で、時に面白く、演奏もかっこよくて、視聴者も連れてくる。今これだけ話題性・確実性・信頼性が高いピアニストは他にそうはいないですから。
でも、それでもやっぱり、ファンでも違和感あるときはあるんです。

最近でそれを感じたのは、坂本龍一さんのこと。
嬉しかったけど、あのラジオの追悼特集に角野隼斗は、違うんじゃないかとか。他にもっといませんかね。店長と共通で教授と縁の深かった人……。若手なら若手でもLEOさんとか。急だからスケジュール合わなかった?(なお題名の分は故人の遺言のようなものだと思いますし、教授が出演者に特別な思い入れを持っていたというより『未来の若者たちに託した』的な概念として受け止めています)

ラジオの仕事が決まった時にはもうNYの住まいも決まっていたみたいだからこれが引き金なんてことはまずないけれど、直接会うことも叶わなかった自分でいいのかって、複雑だったんじゃないかなと思ってしまいます。
とはいえ、あの依頼を断る理由などなかったでしょうし、出られたこと自体はすごく嬉しかったとも思いますし、もちろん全て私の想像でしかないのですけど。

ひとつ言えるのは、追悼の動画は、音楽家の角野隼斗としてじゃなく、ただの角野隼斗でしたね。
自身で作成したときに(ほぼ)付けてる「Cateen」のロゴもなく始まって、ダッサい眼鏡の、ただの角野隼斗。

訃報のあった翌日、大阪でのFCコンサートの時には、アーティストとして彼のようになれるように進んでいきますのようなことをステージで語っていたという彼。(私は実際に行ってないので正確な言葉じゃないです)
ステージでの言葉も本心ではあるけれど、自身のピアノの前では、かっこいいアーティストではいられなかったんだなと。

生まれたままの裸の心で教授に向き合った音と姿は、なんともいえない未消化さにまみれていて、とても120万人を背負えるものじゃなくて、ちっぽけで、ああ、彼はまだ、この道を歩き始めたばかりだったんだよなと。

かてぃんさんは、コ口ナ禍突入とYouTubeに力を入れるタイミングが重なったことで、たぶん、(ショパコンあたりで本人も言っていたけど)人気が加速する勢いに気持ちがついてきていないところがあったんじゃないかなと想像してます。
ついてきていないというよりは、ピンとこない、みたいなほうがいいかな。
YouTubeの仲間たちともなかなか遊べなくなって、映秀。さんとかともやれなくなって、本当はもう少し、ただの角野隼斗でいる期間が必要だったのかもと。

大きなステージも大好きで、オケとコンチェルトするのが大好きで、でもちっぽけなままの自分の居場所は何処? って。それもアップライトピアノに向かいたくなる感覚のひとつだったんじゃないかなとか。

ニューヨークに行けば、また「ちっぽけなただの角野隼斗」から再スタートできる。これは彼にとってすごく心が安らいで、そしてワクワクするんじゃないかな。(実際はアーティストビザ取れるほどの実績からのスタートだからちっぽけじゃないけどね)

ライブハウスに飛び入りしたり、夜な夜なクラブで飲んだり、気ままにインスタライブしたり……。

ちょっと違うかもしれないけど、子供らしい体験ができなかった人が心理療法で子供時代のやり直しをするみたいな、そういうのを思い浮かべました。

ある意味、すごいタイミングで、教授から「覚悟」や「自覚」の鍵を受け取って、教授がかつて過ごしたニューヨークという大きな部屋の扉を開けに行ったんだなと。

少し時期が違っていたら、かてぃんさんがまだ動き始めていなかったら、訃報のあと、現状よりもモヤモヤしたままで仕事をこなしていかなければならなかったのではないかなと。

だから諸々、本当に、今回の件を知った時は『やったー!』って気分でした。

しかもしかも、海外が拠点になれば、世界中の、まだ彼を知らない人たちが角野隼斗の音楽と出会えるチャンスが増える!


『Life is improvisation』
かてぃんさん、スリリングでエキサイティングな大きいリンゴに食らいついて、たっぷり味わってください!

海外での生活は、楽しいばかりじゃないと思います。でも自分で風を生んで、自分で火を熾せる角野隼斗なら、きっと思いっきり楽しい音楽をやれるんじゃないかな。

"The uncertainty is the most exciting part of life. Life is improvisation!!"

不確実性は人生で最もエキサイティングな部分です。 人生は即興だ!!(Instagram)

かてぃんさん、世界中を飛び回って、生きているうちに、生きている会いたい人にどんどんアポイントとって、もっともっと『絶対にピアノが上手く』なって、かっこよくなって聴かせてください。

私も、生きているうちに、なるべくたくさんかてぃんさんに会いにいきます。まずは6月のアダムズ。楽しみです。
そして小説も書きます。月とか太陽に蟻が言ってるような距離だけど、かてぃんさんに音楽をお願いできるくらいの作品を書きます。
同じ時代に生まれたことに望みを持って。
ショパンに曲を書いてほしいっていうよりかは叶いそうだなって自分を騙しながら笑



野望で締めくくりという、本当に誰の得にもならない自分語りに終始してしまいました。

最後まで読んでくださった方、本当にお疲れ様です、ありがとうございます。ものすごく励みになります。
本当に、ありがとうございました。

20230426追記 

角野隼斗という人は、超絶センシティブで、一方で超絶ポジティブ、あるいは謙虚で慎重でありながら野心家で大胆、なんかそんな人だなぁと、思うのです笑


いいなと思ったら応援しよう!