カティンの森

※2024.7追記:世界デビューを受け、角野ファン視点での当noteをもう少し広く読まれてもいいような気がしたのでタグ追加などしました。併せてこちらの記事もご一読いただけると幸いです。
N響×尾高忠明×カティンの墓碑銘

ずっと……このことは書いていいのかどうか迷っていました。

この1年、角野隼斗がショパンコンクールに参加すると知って、ショパンのこと、ポーランドのこと、たくさん知りたくてWebの中にある情報を貪るようにしてきた中で知ったことがあります。

私はもうイイ大人ですが、日本の歴史もこの歳になって初めて知るようなことがことがまだまだあったり、ましてや海外の歴史なんて……という本当に無知なヤツなんです。

なので私が知らなかっただけでみんな知ってるだろう。そうも思います。けど私と同じく知らない人がいたら、予備予選が始まろうとしている今、知ってほしい……知るべきことだと思い、書いてみることにしました。

前置きが長くなりましたが、タイトルにある「カティンの森」とはポーランドにとっての極めて残酷な出来事にまつわる場所です。

第二次世界大戦時、ポーランドの西半分はナチス率いるドイツに占領され、アウシュヴィッツで多くのユダヤ人らが強制収容されていました。同じ頃、東半分はスターリン率いるソビエト連邦に占領されていて、居場所のない政府機関は亡命……戻る国のない2万人を超えるポーランド将校らがこの森で命を奪われたという大きな事件があったと……。長くなるので詳しくはググってください。映画にもなっています。(←AmazonPrimeVideo)

綴りは「Katyn」、読みは「カティン(カチン)」。地図でみるとカティニ、とも表記されています。お気づきの通り、角野隼斗の別名である「Cateen(かてぃん)」と似ているのです。外国語圏での「Cateen」の発音はおそらく「カティーン」や「キャティーン」で、カタカナで書いたときほどは似ていないと思うのですが、「Katyn」は日本人的な発音の「かてぃん」に似ています。参考動画Katyn massacre: Tensions continue between Russia and Poland

私はこのことを知った時、ポーランドの人が彼のこの名を不快に思うのではないか、という思いが一瞬よぎりました。でも同時に、これは深い深い不思議な縁なのではないかとも思いました。

「かてぃん」の由来は「かっちゃん」だという話ですが、4文字にする時に「かちゃん」や「かっちん」にしないで「かてぃん」になったのも不思議でした。彼がポーランドに至る伏線だったとしたら、神様はなんと巧妙な仕掛けをするのかと。

日本で起きたことも含め、第二次世界大戦から80年近くが過ぎようとしている今、私たちはその記憶を未来に継ぐことが困難になりつつあります。おそらく、ポーランドの若い人たちも、徐々に。

戦争による怒りや恨みの感情は、ずっと持ち続ける必要はないと思います。世界中が優しさで繋がる未来のためにも。

けれど戦争で起きたことそのものは、決して忘れてはいけないことで、角野隼斗のような人物がその記憶の一端を担うことは、とても意義があることではないかと思うのです。

彼の名がショパンコンクールの歴史に、音楽の歴史に、人類の歴史に刻まれるとき、同時にこのことも再び刻まれることでしょう。

少なくともファンである私の中には、確実に忘れることのない記憶になりました。

彼にしかできないことが、あるのかもしれないなと。

そんな大きなものを背負いたくはないかもしれない。ただ楽しく音楽を続けたいだけかもしれない。けれど、彼には神様が力を授けた理由がある、そんな気さえしてきます。

でも彼は特段に気負わずともいい。ただそこで楽しく奏でてくれるだけで、それが世界に降り注ぐ癒やしの光になるのではないかなと思います。

ポーランドの悲劇で始まり日本の悲劇で終わった第二次世界大戦の記憶を、ポーランドのChopinと日本のCateenが継ぐこと。決して偶然ではないのかもしれないと思わずにはいられない妄想アマチュア作家の独り言でした。

こんなことを考えながら聴くと、カティンの森からポーランドへと魂を帰すような旋律にも聴こえてきます……。ショパンと共に、どうか安らかな眠りを。

追記。かてぃん、こと角野隼斗さんからTwitterにリプいただいたので貼っておきます。

そもそもがKatynだったとは……更に驚きです。
(というかリプをいただいたというのが個人的にはもっと驚きで2時間経過してるのにまだ心臓が爆走しています。滅多にリプしない人なので。)

この短いながらも誠実な言葉の中に、きっと彼なりの想いがあるのだろうなと感じました。

もうすぐ予備予選、その想いをのせて、思うように演奏できることを願っています。そしてその音が、ポーランドを、世界を、全てを優しくあたたかく包む光となりますように。

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