進化した『ねぴらぼ』 NEO PIANO CO.LABO. “Invention” 後編

2月11日、この日は発明家、トーマス・エジソンの誕生日。2021年の同じ日、4人のピアニストたちが ”音楽のINVENTION~発明~” に挑戦した。全18曲、約2時間30分にも及ぶコンサートレポート後編。(前編はこちら

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【MC】

『Lingus』を演奏し終えて再びMC。かてぃんの「(Lingusを)誰がやろうって言ったのコレ(笑)」という投げかけに全員の視線が集まると、「あっ、僕ですか?」とおどけるけいちゃん。「旧から新へ」と衣装が変わったことにも触れた。サポートメンバー紹介の場面では「サポートでこの曲(Lingus)って言われたら顔面蒼白になる」と菊池。最大の敬意をもってサポートメンバーを讃えた。

【Dancando no Paraiso】by Cateen

敬愛するジャズピアニスト、上原ひろみのナンバーを披露すると自ら曲紹介するも、「絆創膏を貼りたい。」と言ってステージ上で貼りはじめるマイペースなかてぃん。チャット欄では指の損傷を心配するコメントに対し、ファンからの「たぶん保護のために貼るのだと思う」との慣れたコメントが和やかに飛び交ったが、弾き始めると空気が一変。かてぃんの鋭く冴えた音の銃弾に撃ち抜かれる。途中、わらべうた『かごめかごめ』を挟みこんだり、熊吉郎と『どらえもんのうた』『新宝島』『熊蜂の飛行』など楽しそうに掛け合う場面も見せた。高橋のドラムソロも圧巻だった。MCでかてぃんが話した「5年越しのリベンジ」は大成功で間違いないだろう。

【YABUSAME】by Cateen & Kei-chan

かてぃんが再びマイクを持ち「けいちゃん来てー」と呼びかけると「はーい、いくよー」と応えるけいちゃん。作曲をするときは泊まり込みの "合宿" をするという仲良しふたりの連弾だ。流鏑馬と名付けられた曲は前作『KABURAYA(鏑矢)』の続編的なものだという。曲はどことなくKABURAYAや浄土に通ずる和風のニュアンスを持ちながらも、流星のようなフレーズや壮大なサビのメロディからは果てしなく広がる宇宙や未来を感じとった。騎乗し馬を走らせながら矢を放つ流鏑馬さながらの疾走感が大河ドラマのオープニング曲のようでもあり、彼らの快進撃を感じずにはいられない。息の合ったふたりが笑顔でアイコンタクトをしたり、互いの手を交差させたりしながら紡ぎだす旋律に両ファンが聴き入った。曲の中にショパンの『革命のエチュード』の雰囲気が漂っているようで、互いの "Invention(発明)" を持ち寄り融合させた "Innovation(革新)" なのかもしれないと考えさせられた。

【透明シンデレラ】by Kei-chan

「二作目のお歌を弾きたいと思います。準備はいいですか?」そう言って無邪気に笑ったけいちゃんが出してきたものは、浄土より "歌" 要素がふんだんに入ったイケボ全開の危険物だった。準備はいいですかと言われてはいたものの、ここまでのものを出されては準備など無駄だろう。初音ミクとのデュエット感も増し、リズム隊の鳴りも最高のタテノリナンバーだ。夢で見た馬車に乗って狂乱の舞踏会へと誘われるしかない。Bibbidi-Bobbidi-Boo!

【清新の風】by Goza

ござも新曲をひっさげて登場。大海原への旅立ちをイメージしたという曲を初披露。ござらしい軽やかな澄んだ音色に、直井のバーチャイムがきらきらと風にそよぐように重なる。まさに『清新の風』だ。卒業シーズンに必ず聴きたくなるような清々しい門出の香りがする。同時に、イベントの終演も予感させ少し淋しいような気持ちにもなるが、それがまたいい。始まりがあれば終わりがあり、そこからまた始まる……心に音楽の風が吹き込んで、内に秘めた帆を広げ力強く前へと押してくれる、ひとりじゃない。そんなあたたかさを感じて、とても勇気づけられた。

【Room 335】by All Pianists

ラリー・カールトンの名曲はメンバー全員での演奏。ござの曲と繋げるようにして始まった。暗闇の中からかてぃんがグランドピアノでしっとりとイントロを聴かせると、朝日が昇るようにステージが徐々に明るくなり、次々と様々な楽器が呼びかけに応える。今日一日を振り返るような落ち着いた曲調が切なくも眩しい。なんといっても菊池とござの鍵盤島部隊がチルい。菊池曰く「今日イチ、チルい」らしい。前曲との並びの相性がよく、この2曲がここにあることの意味を感じ、楽しい夏休みの終わりのような淡い感傷に浸る。

【MC】

3回目のMCでは、「(連弾で)ふたりがくっついてるから後ろから見てドキドキした」と菊池がいじるなど、各ソロの感想などを言い合いつつ、「あと100曲やりますか」「干からびちゃう」「あと2曲なんです」と締めくくりに。ござが「何か宣伝とかありますか」と投げかけると、けいちゃんが「僕ら4人ともYouTubeという……」と言い出し、すかさず隣のかてぃんから「絶対知ってるでしょ」とツッコミが入るという、またしてもコントのような息の合った一幕がみられた。

【Some Skunk Funk】by All Pianists

バーでバレずに弾くような菊池の落ち着いたピアノソロから入り、色とりどりの目まぐるしい照明と共にけいちゃんのショルダーキーボードとかてぃんのシンセサイザーがうねり出すと、再び興奮が呼び覚まされた。菊池以外の3人が鍵盤島部隊に属する構成で、前衛的で攻撃的ともいえるサウンドが暴れまわる。菊池が3人の攻撃をかわすようにしてブラームスの『ハンガリー舞曲 第5番』を紛れ込ませる。組み込まれてみれば同じ系統なのだと、クラシック曲の多岐やジャンルを超えたところに存在する音楽の普遍性を再確認した。そして菊池がとうとう "鬼畜" と化して鍵盤を一層激しく乱れ弾き、音楽の形を保っていられるのが不思議な程に全員の音が限界まで昇りつめた。その完全燃焼の様子にチャット欄の拍手が止まらない。

【ボレロ】by All Pianists

まだサムスカの熱が冷めきらぬままの会場は静寂に包まれ、菊池の手がグランドピアノのボディを叩く特徴的なリズムだけが響く。多くの人がこのリズムを耳にしたことがあるだろう。ラストはラヴェル作曲『ボレロ』だ。

かてぃんが迷いなき音色をリズムの上に立ち上げ、多彩に色どり膨らましてゆく。張り詰めた音の中、ござとけいちゃんは二人並んで腰かけ、ほろ酔いで指揮をするように体を揺すってみたり、バレエを意識したような浮遊感のあるステップを踏みながら持ち場についた。このシリアスとコミカルのバランスも彼ら4人でこそ成り立つ。彼らが演奏することで、淡々と積み上げる構造と緊張感が『Lingus』と共通しているようにも感じられる。かてぃんがシンセサイザーに移るとボレロが100年の時を越えて未来へと加速し、ステージと観客がトランスともいえる状態に向かった。昇りつめ膨張しきった曲の終わりに直井が渾身の力を振り絞って響かせた銅鑼は、この場を共有したすべての人の胸に響いたことだろう――

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最後に。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。『YABUSAME』の項でも書いたことですが、このイベント自体が4人の "Invention(発明)" を持ち寄り融合させた "Innovation(革新)" なのだと思います。本当にすごいものを見ている、歴史が変わる時代をリアルタイムで見ている、音楽革命、ピアノYouTuber革命と言える時代の一幕に位置するイベントだと確信しています。

メンバー4人だけでなく、公演に携わったすべての方に心からの感謝をお伝えしたいです。本当にありがとうございます。

■■■アーカイブ2022年6月11日(土)23:59まで配信中



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