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JAPAN-TAG 日本デーへ。30.05.2024〜02.06.2024 フランクフルト〜ヴィースバーデン〜デュッセルドルフ〜ケルン旅行記 3.

 6月1日土曜日朝、友人KとYは一路ニュルンベルクへ向かうため、早朝のフランクフルト中央駅からICEで旅立った。2人のこれからの旅の無事を祈りつつ、ホームから発車するICEを見送る。ドイツで日本の友人を見送るのは初めてだった。彼らはこれから中欧、東欧を抜けてトルコまで旅をする。自分よりよっぽどヨーロッパを堪能している。一方、自分はドイツランドチケットでの安上がり旅なので、ICE, ICは使えない。ゆっくりとデュッセルドルフに向かうことにした。
 フランクフルト中央駅8:21発のHKB RE99に乗って Siegen Hbfを目指す。ドイツランドチケット旅にとって、IRとREは都市間を結んでくれているありがたい列車だ。予定では2時間弱で到着するはずだったが、途中駅で謎の停車が入る。なかなか出発しそうにない。アナウンスがすべてドイツ語なので遅延の理由もわからず、とにかく列車内で待つしかない。たまにアナウンスが入ると、乗客が落胆の声を上げるので、運転再開の知らせではないことは確かだ。40分ほどの停車ののちようやく発車すると、車内から歓声と拍手が巻き起こった。日本だったら最悪の空気になっていてもおかしくないが、あまりイライラするような人もいない。ドイツの人々の気の長さには、東京で生まれ育った身としては、毎度学ぶところがあるなぁと感じている。
 1時間ほど遅れて、Siegen Hbfに到着。予定していた10:10発のRE9には当然乗り継ぎできないので、次のRE9に乗ってケルンを目指す。ドイツ鉄道の旅では予定の乗り継ぎができなくなることが多々あるので、とりあえず来た電車に乗る精神が大事だ。その際も、来た列車の目的地からその列車に乗るべきかどうか、判断が求められる。だから、ざっくりとした地理感覚は養っておくに越したことはない。RE9は、ホーエンツォレルン橋を渡り、ライン川を東側から越えてケルン市街へと入る。車窓からホーエンツォレルン橋の欄干に大量に付けられた南京錠が見えた。当初の予定から2時間ほど遅れて、ケルン中央駅に到着。すぐにデュッセルドルフに向かってもよかったが、急ぐ旅でもないので、せっかくなのでケルン大聖堂に寄ることにした。
 ケルン中央駅の南口を出ると、目の前にいきなりケルン大聖堂が現れた。こんなに駅の近くにあるとは思わなかった。あまりのスケール感に目眩を覚える。なんとか写真に全体を収めようとするも、かなり離れないと尖塔の先がはみ出てしまう。この日はあいにくの天気だったが、曇り空と鈍色の大聖堂がよくマッチしていた。大聖堂に続く階段には大勢の観光客が座っていた。マリオのコスプレをした大道芸人らしき人が、入口の前でパフォーマンスをしており、それが厳かな雰囲気を少し和らげていた。入口で寄付を募ってはいるが、入場自体は無料のようだ。この世界的建築物にタダで入るのも何だか気が引けたので、20セントだけ手渡し、中に入ることにした。
 大聖堂の内部は、とにかく天井が高い。壁面にいくつもあしらわれたステンドグラスも目に入る。一つ一つが非常に大きい。ステンドグラスには当然宗教画が描かれていることが多いが、奥の方にカラーモザイク柄の巨大なものがあり異彩を放っていた。これはドイツの現代美術の巨匠ゲルハルト・リヒターの手によって作られたものらしい。伝統と革新の融合を表現しているのだろうか。天井に描かれた現存しているフレスコ画も見ることができた。1時間ほど内部を散策し、外に出た。
 再びフランクフルト中央駅に戻り、SバーンS6に50分ほど揺られてデュッセルドルフへ。デュッセルドルフに来たのは、この日行われた年に1回開催の JAPAN-TAGに参加するためである。元々アニメやゲームが好きなので、それらがドイツでどのように受け入れられているかは気になっていた。フランスなどは日本のアニメや漫画がかなり流行っていると聞いていたが、ドイツはあまりそういうイメージはなかった。そのため、年に1度のお祭りとはいえ、小規模なファン同士の集まりくらいの認識で気軽に参加しようと思ったのだ。デュッセルドルフ中央駅に降り立ってすぐ、かなりの割合で日本のアニメキャラクターのコスプレをしている人を見かける。駅の外に出てみても、人通りが絶えない。これは思っていたよりもすごいことになっているのではないかと感じ、驚きと嬉しさが押し寄せてきた。
 JAPAN-TAGのメイン会場はライン川沿いなので、駅から市街地を抜けつつ川を目指す。せっかくなので、ヨーロッパのリトルトーキョーとも呼ばれるインマーマン通りの周辺を歩いてみることにした。インマーマン通りの入口に差し掛かると、いきなりカタカナで思い切り「インマーマン通り」と書かれた標識が目に入る。通り沿いには、焼き鳥屋やラーメン屋が軒を連ねており、どの店にも行列が絶えない。久しぶりにラーメンでも食べられたらいいなぁと気楽でいたが、この盛況っぷりではいつ店に入れるかもわからない。歩道は祭りの参加者と思しき人たちで埋め尽くされ、普通に歩くこともままならない。どうやら、とんでもないタイミングで来てしまったらしい。ドイツに来てからしばらく都会の喧騒から離れていたので、あまりの人の多さに酔いそうになり、そそくさと通りを後にしてライン川へ向かった。
 ライン川はデュッセルドルフ旧市街沿いを南北に流れ、そのほとりの幅の広い遊歩道を散歩することができる。祭りの今日は遊歩道も参加者で埋め尽くされていて、のんびりと川沿いで物思いに耽るのも難しそうだ。駅からここまで歩いてきて、また川沿いの景色を見て、今まで訪れたどのドイツの都市よりも日本らしさを感じる。デュッセルドルフは第二次世界大戦で壊滅的な打撃を受け、そこから戦後復興により再建したらしい。日本人が住みやすいのも、ビジネスや地理的な要因の他に、こういった歴史を背景とした街だからかもしれない。
 JAPAN-TAGはたくさんの催し物があったようだが、特に目当てのものはなく、祭り全体の雰囲気を味わえればいいと思っていた。みな思い思いのコスプレに身を包み、爆音でアニソンを流したりして楽しんでいる。古い作品のものばかりではなく、最新のトレンドをも掴んでいるようだ。日本にいたときは評判を聞いていただけだったが、実際にこうやって日本のカルチャーが受容されているのを目の当たりにすると、自国の文化に一段と誇りを持てる。日本の若者と同じく、いやそれ以上にアニメや漫画を愛しているように見えるヨーロッパの人々を見て、人は国よりかは文化で育ち繋がるのだろうという気がした。
 趣味でやっている Pikmin Bloom のイベントが行われていたので、それには参加したいと思い、任天堂の公式ブースに向かう。その途中、突然スコールのような大雨に見舞われ、ラインクニー橋の下に多くの人が逃げ込んでいた。コスプレをしている人は気の毒であった。任天堂のテントでイベントのマップと赤・黄・青ピクミンの被り物をもらい、意気揚々と推しの青ピクミンを被ってイベントに参加する。途中、ちらほらとピクミンを被った人たちを見つけ、勝手に同士だと認識して嬉しい気持ちになる。ドイツは人混みで電波が急激に弱くなることもあり、イベントの進捗は困難を極めた。ちょくちょく人混みを離れては電波を復活させ、また川沿いに戻るのを繰り返した。イベントでのみ手に入る苗をすべて手に入れて満足し、もう夕暮れ時になっていたので、会場を後にした。宿もデュッセルドルフで取れればよかったのだが、軒並み料金が高かったので、近くのエッセンに取った。
 Uバーンで中央駅に戻り、そこから電車でエッセンに向かおうとするが、JAPAN-TAG帰りの人々で溢れかえっており、さながら通勤ラッシュのようだった。何本か電車を見送り、1時間ほど待ってREでエッセン中央駅へ向かう。電車の中で、JAPAN-TAGに参加していたと思われるドイツ人2人組の男子たちに話しかけられる。彼らは日本のアニメがとても好きなようで、しかもビーレフェルトの大学で日本語を学んでいるようだ。文化を通じて言語を理解したいという強い思いに胸を打たれた。彼らに日本語頑張ってねと告げて電車を降り、30分ほどでエッセンに到着。
 既に20時近くなっていたので、駅のスーパーで日清のカップ焼きそばと寿司を購入し、ホテルへと向かう。JAPAN-TAGで日本食を食べられなかったので、せめてもの抵抗だ。この日のユースホステルは共同キッチンがあり、そこに大きなダイニングテーブルもあった。優雅な気持ちでお湯を沸かし、晩餐を楽しんだ。食後部屋のベットに倒れ込み、人混みで疲れたので、秒で寝る。

JAPAN-TAG、ライン川沿い

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