あまり
いい天気だ。晴ればかりがいい天気とは限らない。特になにも起こらない毎日、天気だけが毎日違う顔をしてくれる。四季のある国に生まれてよかった。
いつの間にか春の香りがしなくなった。初夏、というかもはや夏がすぐそこに来ている感じがする。と思ったら、雨の前の香りがしたり。夏の前に梅雨が来ることを忘れてしまいそうになると、雨が降る。どちらもすぐそこの背中に寄ってきているくせに、ジリジリと距離を詰めてくる。なんだおまえら、もしかして今年も長居するつもりだな、なんてことを思いながら。
先日、友人があそびに誘ってくれた。その名も「明日にでも捨てられるものを映えさせる選手権」。制限時間は10分で、その間に写真を撮り、なにかしらの文言をつけてInstagramに投稿する。もちろんふたりで勝手にやっているあそびなので、勝敗がつくわけでもなんでもないが、負けず嫌いの血が騒いだ。よーし、しょうもないものを全力で映えさせてやる。
さて、明日にでも捨てられるもの。実は、1週間くらい前に大掃除をしたばかりなので「これ要らないな」というものがなかなか見当たらない。ただの紙屑を撮るのも癪だし、と早々に詰まってしまった。
んー、今いらないもの。洋服だってそんなに持っている訳では無いし、持ちすぎだなってものは特に見当たらないな、と思った時、ふと目に入ったのは砂時計だった。
持ちすぎているもの、時間だ。毎日暇でしょうがない。外に出て得られるものの偉大さを痛感する。人に会えない、意味もなく本屋に入り浸れない。電車を乗り過ごせない、スターバックスでパソコンを開く自分に酔えない。焼き鳥が食べたい。いつもはやりたいことで溢れて、足りないのに、ありすぎて困っている。
砂時計を使えば、時間は見えるぞ!と思い写真を撮った。
【有り余るほど、足りなくて、持て余して、なくなって。】
制限時間の10分はあっという間に過ぎた。「砂時計いらないの?」と聞かれたので、解説を加えておいた。時間は売るほどあるからね、と。返事は相変わらず、わかっているのかどうかわからないような曖昧な「ふーん」。あー今直接会って顔を見ていたら、なんて思ったけど寂しくなりそうなのでやめた。
いつもは足りなくて困ってるのに、今はありすぎて困っている。不思議な感覚だ。そう簡単に、じゃあ明日捨てます!ってできるようなものでもないな、と思いつつ。
しょうがないので、ひとまず今日の時間を抱きしめて大事にしてみようかな、なんて思いながら布団から出ることにした。あーあ、午後からなにをしよう。きっと今日も、あっという間に1日が過ぎてしまうのだろう。
時間か、足りないなあ。
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