カワウソイヤァ!? ーさらざんまい2話より
書き始める前に、ひとつ解説動画の宣伝をさせてください。
たぶん最初は知らんおじさんが四人でしゃべってるだけに見えると思うんですけど、まあ見てください。
漫画家の山田玲司先生の番組「山田玲司のヤングサンデー」にてさらざんまい1話の解説がありましたのでご興味のある方は是非どうぞ。放送は1時間ありましたが、編集で30分ほどにまとまっています。
幾原邦彦監督と同年代ということもあり、監督に「俺がイクニでイクニが俺」な解説が最高に面白く、また物語を作る人としての読解の細かさも魅力です。次の土曜日も1話の解説の補足と2話の解説をやるそうなので、気になる人はニコ生見てね。
さて、今回の気になった部分について書いていきましょう。相変わらず今回も鮮度だけを大事にしている、構成もへったくれもない覚え書きです。
カワウソイヤァ……
なんといっても2話の目玉は警官コンビ・レオマブによる「カワウソイヤァ」でしょう。衝撃すぎて脳みそ溶けるかと思った……。ぬるぬる踊っているところ見て笑いが止まらなかったですね。最高。気づいたらiTunesストアで購入していました。
真面目なこと言うと、エンタメ部分ぽく見せながらも歌詞や演出は深度がヤバイなあというのが初見の印象です。
まずは歌詞の話から。劇中、2人が会議室の中スポットライトを浴びて立ち上がる前の部分。
カワウソ ウソウソ / 奪うぜ タマタマ / 世の中 ウソウソ / 奪うぜ タマタマ
放送分だと「世の中~」のところ以外は「ネコネコ」に置き換えられていました。カワウソの「ウソ」が何を指すかはまだよくわかりませんが、「タマ」は恐らくあのハートのマークの中に描かれている球体でしょう。「奪うぜ」とある通り、搾り取られた欲望であり、尻子玉であり、命のこと、とも考えられます。
去勢された負け犬ども 牙を剥け / 惰性で生きる虫けらよ 身を焦がせ / 欲望を手放すな 欲望を手放すな/ 我らが獲たもの ふたつの運命/ 我らは似たもの ひとつの生命
「去勢された負け犬ども」「惰性で生きる虫けらよ」とは散々な言いようだな……。というかこの文脈だと去勢を施したのは彼らなのでは? 欲望をもっと寄越せと言っているだけなのでは?
「負け犬」という言葉を使ってきたのは面白いなと思っていて、この言葉って資本主義社会の競争に負けた人に使うじゃないですか。受験戦争とか、就職戦争とか、「一緒にゴールしようね」なんて言いながらその裏では他者を出し抜くことを考えざるを得ない現代社会。そこでの敗者は去勢されていて、つまり欲望を持つことが許されなくなっている、と言いたいのかな? と深読みですが思いました。イクニ作品って社会派(チープな言い方……)なので、そのくらいのことは当然考えてそうに見えます。後半の「ふたつの運命」「ひとつの生命」はちょっとお手上げです。2話なので、まだわからない。ちなみにこの歌は歌詞が先だったそうなので、一言一句分析すれば何かが見えてくるのかも……長くなりそうなのでやりません。
そして演出面はやはりなんといっても最後のシーン。「ウテナ」「ピンドラ」でお馴染みの人の胸から何かを取り出すポーズ。お約束シーンを使ったファンサービス、と取れなくもないですが、まだ絶対他に何かある。
「ウテナ」では気高い心・王子様性の象徴である剣が、「ピンドラ」では分け合うことの象徴である運命の果実が取り出されます。(これは個人の読解です。 悪しからず。)「さらざんまい」ではマジモンの真武の心臓でしたが、中に機械の機構部分のようなものが見えました。なんでしょうか、これ……。
そして2人のダンスシーンの後ろでは恐ろしげなことが行われていました。ピクトグラムの人間が箱に入れられて、カワウソのハートマークを押されて運ばれていきます。前回のnoteにも書きましたが、ハコ=個人の閉じこもる境界線です。それが物騒な加工工程を経てゾンビになっていく、とは一体どういうことなのか?
またゾンビの尻子玉を抜いた後、今回の犯人・猫山の犯行現場の写真から猫山が消えました。推測の域を出ませんが、あれは猫山の欲望に過ぎず、実際に行動には移していないのではないかと思います。だから「不当逮捕だ」と1話ラストで発言したのでは? そして警官2人は猫山の欲望を搾取することでそれを現実世界に引きずり出してしまった、とか? なにがストーリー上本当に起こったことで、なにが記号なのかわからなくなってきました。そのあたり根気強く見て考えていきたいですね……。
繰り返しになりますが2話だから全然わからないことだらけです。
カッパ・ネコ・カワウソの共通点
くくったんですけど、これが三竦みとかそういうわけではなく。2話のゾンビは「ネコ」でしたね。劇中歌の「さらざんまいのうた」コーラス部分も「ネコネコ」に変わっていました。今後ゾンビになるものはきっと2文字なんだろうなと邪推します。さておき、この動物たちの共通点は「奪うもの」であるということです。2話サブタイトル「繋がりたいけど奪いたい」ともリンクします。
カッパとカワウソは言わずもがな欲望を搾取する存在で、ネコは「ネコババ」「泥棒猫」の通り、何かを盗むというイメージのついた動物です。また、人間に害を為す妖怪としても知られていますね。さらざんまいは現代の大人の妖怪モノアニメだそうなので、順当なキャスティングだなと思いました。
ちなみにカッパとカワウソは芥川龍之介『河童』の中で敵対関係にあり、戦争をしています。この辺も細かく読んでいったら面白そう。
本筋とは大幅に逸れますが、ネコが空に浮いているシーンがシュルレアリスムの画家・マグリットの絵画のオマージュで、「これは記号だ! 深読みしろよ!」的なメッセージを感じてほっこりしました。そのメッセージを受け取る難易度、はちゃめちゃに高いと思うよ。
さて長くなったので今日もこの辺りで終わります。仲見世通りを走っているシーンのシャッターのメッセージが見てて面白いので、話数が溜まったら書きたいです。
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