「寄生獣 -ザ・グレイ-」 - あの物語の外の世界へ
★★★★★
原作の「寄生獣」はアニメで観たクチなのですが、とても好きな作品なのでこのドラマが作られる話を聞いてから公開がずっと楽しみでした。「新感染」のヨン・サンホ監督なので映像クオリティへの期待も高く、主人公が女の子なのも興味を惹かれる部分。しっかり韓国ドラマなのだろうなという予想とともにスタート。観終えてみて、なるほど監督の原作に対するリスペクトというか愛がよく分かると思いました。「寄生獣」は「寄生獣」でも原作の物語の映像化というわけではなく、同じ世界線の中の別の場所での物語としてしっかり成立しているわけです。スピンオフ的な位置を守っていて、憧れの相手を決して侵食せず、けれど同じステージに立つ、みたいな。なので恐らくガチの原作ファンの方でも映像技術の進化ふくめて楽しめる気がしました。
あらすじ
ある日、空から謎の生命体が何体も降ってきます。彼らは人間に寄生する生物でした。その中の一匹がとあるライブイベントに来ていた男性に取りつくと、男性の頭が変形して長い刃物のようになり、その場にいた観客たちを次々に斬り殺す事件が発生、寄生生物はその場で警察により射殺されました。
スーパーで働くチョン・スイン(チョン・ソニ)は、レジで前科持ちの男に因縁を付けられます。すると仕事帰りに原付で走っていたスインをその男が車ではね、さらには追いかけてナイフで脇腹を刺すのです。ですが病院で目を醒ましたスインはケガもなく無事。スインの叔父で刑事のチョルミン(クォン・ヘヒョ)がやってきますが、スインは確かに刺されたのに、と言うばかり。しかも彼女を刺した例の前科持ちは引き裂かれたような傷を負って死んでいたのです。
数カ月後、韓国政府は寄生生物を「ザ・グレイ」と名付け、国民には知らせず秘密裏に駆除を続けていました。チェ・ジュンギョン(イ・ジョンヒョン)は自身の夫がグレイに寄生され、自らも殺されかけた女性。グレイの対策チームを率いて寄生生物の駆除にあたっていました。しかも彼女は、寄生された夫を生け捕りに他の寄生生物たちをおびき寄せる「猟犬」に使っていました。
暴力団員のガンウ(ク・ギョファン)は敵対組織のメンバーを殺そうとして失敗し逃走していました。久しぶりに実家に寄ると、姉・ギョンヒの様子がおかしいことに気づきます。しかも「妹のジニは遠くへ行った」と意味深なことを言われ、気になるガンウ。
ギョンヒは寄生されていたのです。その後、ギョンヒの仲間がスインを見つけ接触しているところを、ギョンヒをつけてきたガンウは目撃します。まさしく寄生生物としての姉の姿を見てしまい驚くガンウ。一方で、事情の分からないスインは恐怖におののくばかりでしたが、不意にスインの意識を乗っ取り、彼らに「同族である」と告げる寄生生物。スインもまた寄生されていたのですが、どうやら他の個体とは状況が異なるようです。
スインに仲間になれと告げて去っていったギョンヒたち。隠れて見ていたガンウはスイン(に寄生している生物)に見つかります。寄生生物はガンウを殺そうとしますが、スインへの伝言を伝えることを条件に助けます。
目覚めたスインはガンウからその伝言を聞かされることに。ジキルとハイドのようだから、と寄生獣のことをハイドを文字ってハイジと呼ぶガンウ。ハイジはスインに寄生しようとしたが、刺されて瀕死だった彼女の体を治すのに必死で脳を食べることができず不完全に乗っ取った状態になっていると説明します。
1日で15分だけスインの意識を乗っ取れるらしいハイジ。いわば変種の寄生生物になってしまったので、同族の仲間になろうとすれば殺されると言います。その後、寝ている間のノートでのやりとりで自分の状態を把握していくスイン。ショックを受けますが、彼女のところにも駆除の手は迫ってくることになり…。
愛されバディとなるスインとガンウ
原作の新一とミギーに似た状況に陥ったスインとハイジ。ただこの組み合わせの場合は、意識交代制なので共闘はなかなか難しい設定です。そこでふたりをうまく繋いでくれることになるのがガンウ。演じるのは「D.P.」でお馴染みのク・ギョファンですが、今回もちょっと軽くてバカをやってしまうけれど情に厚い良いお兄さんという感じで。とても似合う役柄。ハイジがどうも悪い奴でもなさそうだと察し、過酷な状況に追い込まれるスインを助けてくれる癒しポジションになっていきます。ほんと好きです、ク・ギョファン。
そして寄生獣の醍醐味といえば、寄生するうちに人間の感情を学んでいく寄生生物。スインの中で行動するうちに、彼女の他人を信じる感情を少しずつ理解していくことになります。チョン・ソニがスインとハイジのオン・オフをうまく表現していて、ハイジの心の動きがなかなかに味わい深かったです。
ラストシーンまでぬかりなく
全6話、至極エンタメ寄りのつくりでもあるので、原作のような深みだったりを表現するのは土台難しいとは思いますが、作り手が原作に感じた魅力のエッセンスみたいなものが凝縮されていて、コンパクトにまとまった観やすい物語です。映像技術はさすがの一言、アクションと相まって見応え抜群でした。
またニュースなどにも出ているので触れますが、ラストシーンは本当に隠しきれない原作愛というか、原作者へのラブレターみたいな気持ちで添えられたシーンなのかな?とグッと来てしまいました(真相は分かりませんが)。やっぱり「寄生獣」好きはミギーに会いたいって思ってしまうのでしょう。私みたいなにわかでもそうなので…。これがまた新一&ミギー側に繋がっていくとしても、それはそれで面白そうです。いずれにしても、原作の、「寄生獣」という作品の世界観がいかに強固で奥深いものか実感する一本でした。
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