小学生と見知らぬおばあちゃんとの大冒険

遡ること小学校4年生頃。
うちから小学校までは徒歩15分ほどの場所に位置してた。

下校する時は、気心知れた友達2人(姉さん、まーちゃん)と草をちぎって集めたり、木の棒片手にかき分けて歩いたりと何でもないようなことが幸せだったと思いながら過ごしていた。

姉さんはクラスでも頼れる姉御肌の存在。正義感が強いけど、好きな男子にはモジモジしちゃうからギャップが可愛い。

まーちゃんは冷静沈着。クールに答える反面、笑いには貪欲でわたしがたまたま起きたボケに全力で突っ込んでくれる。

そんなある日。
いつものように幸せだったと思いながら帰り道の
横断歩道を渡ろうとした時、1人のおばあちゃんがキョロキョロと辺りを見回していた。
なぜかわたしと友達たちは軽い気持ちで声をかけていた。

姉さん「あれ、どうしたのー?」

おばあちゃん「前に行った手芸屋さんがどこだったかわからなくて...」

私「そうなんだ...じゃあ一緒に行こうよ!」

おばあちゃん「え、いいの?連れてってくれると嬉しいな」

私たち「よっしゃ、行くぞー!」

正義感の強い姉さんと、面白いことが起きそうだとワクワクしているわたしがかなり積極的にお店探しに乗っかった。
面白いことが大好きなわたしだから、いいエピソードがてきたら友達に話そう!というややよこしまな気持ちも手伝った。

そんなこんなで即決で困っている人を助けたいわたしたちと、見知らぬおばあちゃんとの大冒険が始まった。

ぼんやりと覚えてることは2つ
1つ目は、商店街の中にあること。
2つ目は駅から少し離れてる商店街ということ。

ふむふむ、だとするとあのアーケードかな。と、わたしたちはすぐピンときた。

すぐに駅の方まで向かうことにした。
おばあちゃんは商店街の反対方向に出てきてしまい、離れたところにいたということになる。

うる覚えだが、おばあちゃんは電車で来たと話していた。
手芸屋さんに来たのは孫のためにベストを作ってあげると嬉しそうに話していた。
お孫さんはいくつか聞くと、11歳だった。
ちょうどわたしたちと同じくらいの年齢だったので、そんな話を聞いて密かに自分のおばあちゃんのことを思い出していた。

わたしのおばあちゃんも手芸が得意で、手動のミシンをカタカタと鳴らして小学校で使う体操着袋と上履き袋、エプロン袋を作ってくれた。
そんな姿がわたしは大好きだった。

おばあちゃんが手作りしてくれたものに、本来見えないはずの「愛情」がわたしには見えた。

色んな気持ちを抱きつつ、駅までやってきた。
さぁここから少し離れた商店街に行くが、なんとこの商店街はL字になっており、様々な商店も並んでいる。
わたしたちとおばあちゃんは1つずつ丁寧にお店を確認していった。

商店街の半分まで差し掛かったが、手芸屋さんは見つからない。
「間違っていたらどうしよう」という小学生ながらの焦燥感もあり、より慎重にみんなで確認していった。

まーちゃんはなんと、一軒一軒のお店をメモしながら歩いている。

そして、とうとうお店は見つからなかった。
助けたいと思ってやってきたのに、役に立てなかったのが、悔しかった。

おばあちゃん「どうしようか、駅まで戻る?」

私たち「うん、そうしよう」

軽いノリで困っているおばあちゃんを助けるためにここまで来たけど、役に立てなかった絶望感に襲われた。
わたしはいつの間にかおばあちゃんの愛情を感じて、ベスト作りに協力したい!と思ってたんだ。
でも、見つからなかった。

すると、名探偵まーちゃんがここで気付く。

まーちゃん「そういえば、何軒かシャッター閉まってて、何のお店だろうってところが3軒あったよ!」

そうだ!必ずしも開店しているとは限らない。
さっそくまーちゃんメモを見ながらシャッターが閉まってるお店に向かう。

「あれ?もしかしてここのお店が手芸屋さんかも!」とおばあちゃん。

お店の外観はないが、目の前に立っておばあちゃんの記憶が蘇ったようだ。

結局、お店を見つけることはできたけど、肝心の手芸用品は買えなかった。
でも、おばあちゃんはすごくにこやかに話してくれた。

「お店もわかったし、また違う日に来るよ。みんな手伝ってくれてありがとうね」

わたしたちはその優しい「ありがとうね」を聞けただけでも、すごく嬉しくてさっきまでの絶望感などすっかり忘れていた。

つい数十分前に出会ったばかりの小学生3人と、おばあちゃんだったけど、目に見えない何か温かい気持ちがみんなの心の中にあるような気がした。



そんな出来事からもう二十何年も経つけど、この時の話と、あの時感じたほっこりした気持ちは忘れずにずっと残っている。

この目に見えない「愛情」をこれからの世代の人たちにも受け継いでいくために、常にみんなに優しくあれと考えながら過ごしている。

最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。心から感謝いたします。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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