UN-GO

 変換効率最悪のアニメ、UN-GOについて書くことになりました。タイトルはそのものずばり、UN-GOです。これは坂口安吾の作品をモチーフとしていることから安吾の名前を取っているのですが、ANGOでしょ!!というヘボン式ローマ字的混乱が毎回生じることになる作品タイトルです。恐らく否定の接頭語UNと行くという意味のGOの二つをかけた表記なのでしょう。作品の中身もそんな感じなので、いいネーミングだと思います。
 今のところdアニメストアアマゾンなどで視聴することができ、私もそれを利用しています。全11話。今からでも遅くはない。ついでにCも見よう。僕は一応因果論(本編前を描いた映画の奴)も観ました。

 当然のことながらネタバレしかありません。頑張ってください。


UN-GOとは何か?

 2011年10月にノイタミナ枠で放送されたアニメーション作品であり、以下の通りのあらすじとなっております。

“終戦”を迎えたばかりの近未来の東京。そこでは、探偵業が流行らなくなった代わりに、メディア王・海勝麟六が膨大な情報量と優れた頭脳を生かして、幾多の難事件を解決していた。しかし、実は麟六の推理には裏があり、それをあぶり出すのが、「最後の名探偵」と呼ばれる結城新十郎と、その相棒・因果。世間からは、「敗戦探偵」と言われているが、それでも2人は力を合わせて、様々な難事件の解決に挑むのだった。(引用:Wikipedia

 何故近未来で”””終戦”””なのか、探偵業が流行らなくなったのか、メディア王とは……最後の名探偵とは……因果とは……といったお話になります。最初は1話完結で敗戦探偵の素性や世界観などを説明し、後半は一つの大きな流れとして物語はクライマックスを迎えるタイプのやつです。あと原作が原作なので妙に時代がかったエピソードが多いのがいい。デカい旧家の因襲で人体発火とか。
 なお、探偵が出てくるので推理物と見せかけて実は伝奇です。


UN-GOの思い出

・EDがかっこよすぎる
 いきなりエンディングの話から始まって恐縮です。でも聞いてください。OPもカッコ悪いわけではない(廃墟になった東京が拝めるため)んですが、EDが尋常じゃなくかっこいいんです。特に謎を解決して話が終わって、EDアニメーションに繋がるところ。モノローグっぽいエピローグみたいなやつを入れるところでED曲のイントロが流れ出すところの雰囲気がたまりません。映像も良いです。全く出てこない謎の女性とか、全く出てこない全身包帯まみれの男とか。矢印とか。伏線とか。
 歌詞もいいんですよ。探偵物のエンディングとして”””本当を求め嘘でもいいからなんてね”””なんて歌詞入れ込んでくる。そして曲名がFantasy。

・廃墟と化した東京
 人類の悪徳の象徴にして歪んだ資本主義の具現化でもある新宿駅がボロボロになっています。テロによって廃墟と化した東京は憲兵みたいな人が警備してたりと、戦後という感じを上手く表現していると思いませんか?廃墟と雑居ビルと高層ビルが一体となった東京、嫌いな人居ないですよ。
 戦後と称される日本を都合よく統治するため、権力側が情報操作をしかけまくったり戦意高揚ソングをアイドルに歌わせたり、一度死んだふりをして裏で暗躍したり、陰謀論と真実に対する価値観バトルをしたりするので、示唆に富んでいる(便利表現)作品です。

・結城新十郎と因果
 過去が色々あった敗戦探偵こと結城新十郎は、探偵を名乗るからには探偵として活躍しています。一方因果は……普段はショタだけど覚醒するとタッパとケツのでかい女に変化して人間の魂に干渉して強制的に一問だけ真実を答えさせるという探偵物に必要なパーツを無理やり引き出す便利存在。その際に放出される御魂とかいうものを食べる、戦争大好きな伝奇要素筆頭。何故か覚醒すると部屋が暗くなる特性を持っている。
 顔が良い敗戦探偵の結城新十郎はその名の通り敗戦探偵ですが、原作のフレーズを引用して説教したり人間の本質[要出典]を白日の下に晒すなど、謎を解くというよりは人間の暴かれたくないところを上手く暴き出すという点では稀代の名探偵ですね。五十年前の作品のフレーズですよ。もっと人間は進歩した方が良い。あと、いろいろなものの美化を極端に嫌います。いいですね。エンディングで意味ありげに両手を広げて突っ立つのは顔が良い主人公の特権です。

・海勝梨江
 かわいい。大体厄介ごとをひっかけてくる世間知らずなお嬢様の枠。父である海勝麟六さんはジャパンジャスティスネットワークシステムホールディングスの社長として、メディア王として、戦後日本の情報を操作しプロパガンダや情報統制にいそしむ傍ら、名探偵としてプロパガンダ推理を披露し、それを公の見解にすることで””””””美しい結末””””””を生み出すという現実的現実改変能力者。それが海勝麟六。
 そんな父の元で蝶よ花よと育ったせいか、父親のような立派な探偵になりたい!→父はメディアを操作していた!→敗戦探偵こそが本物……?というちょろめの思考回路で主人公パーティに参加します。かわいい。いい子です。

・虎山泉
 この物語のキーパーソン。当たりがキツく貴重なパンツスーツ姿のインテリ眼鏡女検事。海勝父の側で非情にも情報統制に加担する腐敗した権力者側の人間ですが、同じ体制側でもほかの組織と戦ったり戦わなかったり、本当は絶対に許せないことへの折り合いをつけてやっていくなど、それなりの正義感を持つところが可愛いです。彼女の可愛さのせいでこの物語が始まったと言っても過言ではない。ちょっとした元凶。

・風守
 ピンポイントで狙って来やがったなクソ!!!というキャラクター造形をしたピンポイント破壊者。ロリボディに宿されたネットワークに遍在するAIという、このアニメにおけるちょびっツ。突然ねじ込まれた人間の悪意の結晶です。あきまへんよ。
 それはそれとしてやっぱり近未来にはこういうハイテクからくりメカが必要ですね。全世界のネットワークセキュリティが風守の一部であるという、まあ、人形使いです。本物のサイバーパンクはここにある!!

・別天王
 UN-GOといえば別天王で決まり!!!
というくらいの存在です。その名の通り別の天の王であり、まあ、別の天の王と言われてもおかしくないほどの力を有する伝奇要素その2。言霊による条件付きの現実改変能力を有しています。条件付きではありますが、広範囲かつ大人数に現実改変を食らわせることが出来るため凶悪。とはいえ、割と強引な力技で改変が破綻させられるので、下記ランキングでは下位に位置することになります。

・小説家(自称)
 別天王の外付けパーツ。いかにもキーパーソンヅラして出てくるキーパーソンもどきです。現実改変能力者その2。ただの狂った俗物なので、これ以上の感想はありませんが……OPにもEDにもいないしね!キーパーソンになりたければ出てみせろ!!!

・現実改変
 思い出しました。現実改変能力を食らった人間が現実改変された世界でどう行動するのか、描写が良いんですね。まいた伏線をしっかり回収するところもいい。現実改変の制限と、外から見ればどう破綻しているのか、現実改変にどう立ち向かうのか……これもう推理物じゃねえよ

・倉満美音
 はい出ました。刈り上げヘアスタイル眼鏡女性議員。この上なく優秀なデマゴーグですね。以上です。

・BGMがよすぎる
 推理から何からかっこよすぎ。特に答えを暴き出すBGM””””””光””””””はこ検索性の悪さもありながら名曲です。かっこよすぎる。

・ブルーライトヨコハマ
 街の明かりがとても綺麗ね・・・

最強ランキング

 この記事は最強ランキング作れないんですがどうしましょ。エントリーは三人。因果、風守、そして別天王。何故なら人間以外だから。人間の強さは大体五分です。

1位 因果

2位 風守

3位 別天王

 難しいです。誰にも得意不得意があるのでじゃんけんになりますね。
 真実を暴き御魂を食い散らす因果はその特性の通り人間や別天王に対する致死攻撃が可能ですが、風守(AI)は嘘をつかず魂を持たないため因果を無効化します。風守は警察のデータベースに侵入したりする。一方、別天王は言霊を利用して局所的な現実改変能力を行使し、それには因果ですら逆らえませんが、半面、能力には人間の言葉が必要であって単体では脅威足りえない点や、事象を外側から観測することで矛盾が生じる場合は現実改変が失われる点、風守による外部からの力技(電撃)での楔を打ち込まれて現実改変を潰されたりします。あと、因果に純粋にパワー負けします。因果にボコられ風守にボコられ、俺もう生きていけねえよ。


終わりに

 いやあ、本当にいいアニメでしたね。別天王という規格外の力を手にしてしまった人間の愚かさ、陰謀論を信じ込む人間の愚かさ、人を愛する人間の愚かさ、と、とにかく人間の愚かさしかないアニメーションです。人間の愚かさと人間の愚かさを肯定することみたいな、坂口安吾の……そういう……たぶん原作が……アレ読みにくくて……そういう感じなんだと思います。
 速水星玄はカス!!!!!!!!!!!!とは言い切れないんですが、まあ、そういう感じです。


 あわせて読みたいノイタミナ2011年枠のnoteです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?