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秋の夜長と三浦大知『球体』独演
突然ですが、大切な人が目標に向かって懸命に進む姿って、その目標がなんであれ、応援し、見守っていきたいと思うものですよね。
だけど、本当にその目標が何であっても、見守っていられるでしょうか。
例えばそれが、結果的にその人を脅かすものだったら?
※これは私が『球体』独演を初めて観た感想をまとめたノートです。
あくまで感想であり、考察ではありません。
初見の感想を供養したい
私は、2018年『球体』がCD発売された際、サブスクで音源を楽しんでいました。
そして2022年の夏、YouTubeで配信されていた"独演"を初めて視聴したのですが、、、
その凄まじさに衝撃を受けてしまい、1年経った今でも心が囚われたような感覚があります。
その感情は少し偏っていて、独特で。
その気持ちを供養する意味も込めて、感想をまとめて記しておきたいと思います。
※初めてこの公演を観てからかなり経ち、作品に対しての感じ方や受け取り方はかなり変わったので、いつかこのノートは加筆修正したいと思います。 別noteに書きました↓↓
(私が思う)『球体』あらすじ
この独演に登場する人物はたった一人。
その登場人物の名前は明かされていません。
初めてこの独演を観た時、「この人は何度も自ら死を選び、同じ一人の人生を繰り返しループしている」と思いました。
『球体』の中の一曲「誘蛾灯」の歌詞に、以下のような歌詞があります。
記憶開く 歪む場面
深く刻む 二重螺旋
遺伝子レベルで刻まれた"愛する人への執着"が、人生を繰り返す度に顔を覗かせ、そのせいでまた自らの命を手放してしまう。
それを延々と繰り返している人が、この登場人物なんだと思いました。
幸/不幸を評するもの
物語中盤でこのループに気づいてからは、終始胸が引き裂かれそうでした。
何度も愛する人を失うあの人は、傍から見ると明らかに不幸です。
でもなぜか、人生のループという選択肢を選ぶあの人の中には、だんだんと幸福が広がっていくように見えます。
"人生をやり直す"という選択を心の中に押し留めている時は死んだように生きていて、"人生をやり直す"という決断をする時は生きる希望に満ちている。
世間一般のいわゆる幸福を充てがわなくても、自分の中に確かな幸福を見つけ、また一歩、一歩と、足を踏み出しているようでした。
「テレパシー」中盤の間奏を聴いていると、幸福への足掛りを見出して歩み出す、そんな瞬間が思い浮かびます。
その歩みを加速させていく様には、確固たる意志を感じました。
絶望の歌か、希望の歌か
独演を観るまでは、私にとって「飛行船」は希望の歌でした。
でもまさか、その「飛行船」で絶望するとは思っていなかった。
独演に登場する飛行船は、あの人を"新しい人生"へと連れて行くものでした。
テレパシーでの加速が、歩みを飛行船へと向かわせる推進力が、胸を潰していくように迫ります。
「飛行船」のアウトロに、"バンッ"という音が入っているのですが、「飛行船」のライブパフォーマンスを観ると、この音は解放するような開いた音に感じます。
しかし独演の舞台では、飛行船のドアを閉める瞬間と重なる音となっており、他者からの干渉を拒絶するような閉じた音に感じました。
その愛の歌を受け止められるか
独演の終盤に披露される『世界』という曲は、とても柔らかで大きな愛の空気に包まれた曲です。
幾つの時を超えて 僕らはこうして何度でも
巡り合える
その笑顔の ためならば
惜しむものなど 何ひとつもない
私はあの人の選択を認め、多幸感溢れるこの歌に満たされるべきなのかもしれない。
だけど出来ない。
歩き出すその目的は"死"で、それがあの人の希望であるという事実を前に、どうしても、悲しいと思ってしまう。
この愛の歌に満ちる、あの人の愛が大きいほどに、その歌が素晴らしいほどに、私の中の悲しみは大きくなってしまいました。
あの人の部屋には"硝子壜"がひとつ置かれているのだけど、きっと希望の象徴であるそれすら、投げ割ってしまえばいいと思ってしまう。
それほどにあの人の中に残る温かさは強烈で、残酷に思えました。
誰の悲しみに泣くのか
考えてみれば、自分がこの歌を受け止めきれないこと自体も、すごく悲しくて。
もしかしたら、ループの中に取り込まれているのはあの人ではなく、私なのかもしれない。
あの人の希望が死であると思い込んでしまっているのは私で、そのループから抜け出せないのは、私なのかもしれない。
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独演を初視聴した後、『球体』の初回盤を手に入れ、独演を何度でも観られるようになりました。
結局私は、自分がこの愛を受け止められないことに泣いているのかもしれません。
だからこそ、救いを求めて、また独演を視聴するのかも。
また繰り返し、ループをしていこうと思います。