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『デート・ア・ライブ』概論④
1.はじめに
本稿は『デート・ア・ライブ』概論の第4回目になる。
今回は第3巻の『狂三キラー』について見ていく。
本巻で登場する時崎狂三は『デート・ア・ライブ』シリーズでも屈指の人気キャラであり、彼女を主人公に据えたスピンオフ作品もある。
物語本編にも重要な役割を及ぼしつづけるキャラクターであり、作者の橘公司氏は『デート・ア・マテリアル』で構想に最も長く時間をかけたキャラとしている。
今回も一部ネタバレを含む内容となっているため、未読者は十分に注意されたい。
2.『狂三キラー』あらすじ
主人公 五河士道の通う来禅高校に突如転校してきた第三の精霊 時崎狂三。
自身を精霊であると公言する彼女は、なぜか転校初日から士道の名前をすでに知っていた。
学校の案内を士道に頼む狂三だったが、十香や四糸乃のときとは異なり、彼女は精霊について詳細に知っている素振りを見せる。
学校の帰り、狂三が人を殺している現場に<AST>隊員であり士道の実の妹である崇宮真那が駆けつけ交戦する。
真那は確実に狂三の首をはね、息の根を止めたが、その翌日狂三は何事もなかったかのように学校に姿を見せる。
士道は狂三殺害の凄惨な現場を見て、狂三を「デートでデレさせ」て救う決意をする。
十香と折紙とも日程がかち合ってしまい、トリプルデートの流れになるが、士道はうまくフォローしながらデートを遂行していく。
その途中、士道は狂三がネコをいじめて遊んでいた集団に憤慨し、霊装をまとった姿で人を殺している現場に遭遇する。
士道は危機に瀕するが、そこへ再び<AST>の真那が駆けつけ、狂三の首をはねる。
真那によれば、狂三はいくら殺しても死なない存在だという。
士道は翌日、通常どおり登校してきた狂三に対して、彼女を救うと伝えると狂三は激高し、学校の屋上で<時喰みの城>を展開して生徒らの「時間」を吸い上げていく。
士道の懸命な説得により、一度はほだされかけた狂三だったが、その背後から新たな狂三が現れ、旧狂三の胸を貫く。
狂三の天使は自分の時間を切り取ることによって、何体でも自分の分身を生み出すことができ、事実上の「不死」を実現していた。
絶対絶命の窮地に追い込まれた真那や士道らだったが、そこへ霊装をまとった琴里が姿を見せるところで3巻は終わる。
3.第3巻における伏線
・士道の名前や精霊のことを転校初日からすでに知っている→5項参照 後の巻にも影響
・真那が所属しているというDEM社→第7巻
・士道の義妹である琴里が霊装をまとった姿で登場する→第4巻
4.天使・霊装/識別名
『デート・ア・ライブ』概論では何度も引用しているこのセフィロトの樹であるが、「時崎狂三」は三番目のセフィラである「ビナー」を象徴している。
ビナーは黒色のセフィラとされ、狂三の黒を基調としたゴシックロリータ風の霊装に親和性が高い。
また、ビナーは成熟した女性原理を示し、狂三の大胆な行動やエロティックな雰囲気にマッチしている。
神名は<エロヒム>、守護天使は<ザフキエル>である。
狂三の霊装は<神威霊装・三番(エロヒム)>、天使は<刻々帝(ザフキエル)>である。
<AST>による識別名は<ナイトメア>。
何度殺害しても復活し、人を殺してまわる様子から史上最悪の精霊、悪夢のようだと表現されたことに由来する。
天使<刻々帝(ザフキエル)>は大きな時計盤と短針と長針を模した短銃と長銃から構成される。
全部で12種類の弾があり、それぞれに時間を操る効果をもっているが、その内容は異なる。
最終巻までにすべての弾の効果の内容が明かされたが、ここでは主要な弾についてのみ見ていく。
1の弾(アレフ) 対象の時間を加速させる
2の弾(ベート) 対象の時間の進み方を遅くする
4の弾(ダレット) 対象の時間を巻き戻す(傷なども元通りになる)
7の弾(ザイン) 対象の時間を停止させる
弾を使うためには<時喰みの城>で吸い上げた「時間」を消費する必要があり、その時間の残量は狂三の左目の時計盤で確認できる。
なお、この「アレフ」や「ダレット」といった呼称もセフィロトの樹が関係していると思われる。
上記のセフィロトの樹の図では、それぞれのセフィラから線が引かれていることが分かる。
この経路はパスと呼ばれ、例えばケテルからコクマーへ向かうパスは「アレフ」と呼ばれ、ケテルからビナーへ向かうパスは「ベート」と呼ばれる。
弾の名称はこのパスに由来するものと考えられる。
また、パスはタロットカードの番号にも対応している。(タロットカードについてはDEM社が出てくる巻で詳述する)
5.時間と不死
いままでのエレメンタルとしての精霊とは一線を画した存在が狂三である。
(十香は地、四糸乃は水のエレメンタルを持っており、第4巻では火、第5巻では風の精霊が登場する)
この「時間」によって狂三は「不死」を獲得しており、これは哲学的な命題になり得る。
哲学的アプローチについては、”概論”の範囲を超えるため、軽い紹介にとどめておく。
興味があれば以下を参照されたい。
・カイロス的時間とクロノス的時間
・ハイデッカー『存在と時間』
・スティーヴン・ケイヴ『不死の講義』ー不死の4つのシナリオ
「不死」という概念についてはnoteに記事にする機会があるかもしれない。
6.スピンオフ作品との関連
何度も本概論でも言及している通り、時崎狂三をメインヒロインに据えた東出裕一郎著の『デート・ア・バレット』というスピンオフ作品がある。
こちらも映像化されている。
『デート・ア・バレット』は現在('22/5/1)7巻まで発売されている。
こちらでは、セフィロトの樹の「マルクト」や「ホド」、「イェソド」といった名前が直球で登場し、それぞれの領域を渡り歩いていくというプロットになっている。
反転体について第7巻で触れた際に、もう一度詳しく見ることとする。
7.まとめ
今回は第3巻『狂三キラー』について諸概念を確認した。
狂三は今後のストーリーにおいて要所要所で登場する特に重要なキャラクターである。
→第4巻へ続く