【先輩インタビューVol.7】株式会社総合車両製作所 星野 夏大さん(2021年卒)
埼玉大学を卒業し社会で活躍する先輩にインタビューする企画「先輩インタビュー」シリーズの第7弾は、2021年に埼玉大学工学部機械工学科を卒業し株式会社総合車両製作所に入社された星野夏大さんに、Youth Buddyの小林と前地、長田がインタビューしました。
星野さんが勤務されている株式会社総合車両製作所は、鉄道車両やコンテナを製造する輸送用機器メーカーです。安全・安心・快適性の追求をものづくりの原点とし、それらの追求の中で表からは見えない細部まで徹底的に気を配ることをものづくりの信条としている企業です。日本で初めてステンレス車両の国産化に成功し、現在では山手線の車両から新幹線車両まで幅広く製造しています。
株式会社総合車両製作所HP
https://www.j-trec.co.jp/
プロフィール
― どのような学生生活を送られましたか?
私は中学校から高校まで野球をやっていました。大学は工学部の機械工学科に進学し、流体力学研究室で卒業研究をしました。大学3年次には1年間の休学をし、カナダに留学しました。
― 留学をした経緯について教えてください。
自分は大学に入った当初、明確にやりたいことがあって入った訳ではありませんでした。そのまま2年生、3年生となった時に、自信を持って人に話せる成功体験がなく、「このままでいいのかな?」と思っていました。そこで、自分のやりたい何かを見つけたいと考え、思い切って留学しました。カナダに留学したきっかけは、高校の修学旅行でカナダのビクトリアに行ってとても良かったからです。
教授には卒業が1年遅れることになり結構心配されましたが、自分で休学手続きをして、学校やホームステイ先を調べて、連絡を取って行き、すごく良い経験になったと思っています。今でも覚えているのが、行きにバンクーバーの空港で乗り継ぎの便が欠航になってしまって、英語も分からない中でどうやって手続きをしたら良いか分からず、帰りたいと思ったことです。
― 留学で学んだことについて教えてください。
カナダでは人も考え方も違うんですけど、周りは自分そのままを受け入れてくれて、「その考え方素敵だね」とか、「そういう感性最高だね」みたいに毎回褒めてくれて、そこでちょっとずつ、今まで自分をよく分かっていなかったなと感じました。留学に行ったことによって、自分自身ってこういう人なんだ、こういう考え方を持っているんだというのを周りから受け入れられたことで認識できて、それが自分の中で大きな自信になったと思います。
― 卒業研究について詳しく教えてください。
流体力学研究室にいました。流体力学とは、簡単に言うと空気の流れをパソコンでシミュレーションしたりして、冷蔵庫の中やエアコンによって部屋の中がどういう空気の流れになっているかを研究する分野です。私はペイント塗料を塗布する専門の企業と共同で、どういう気流の流れやどういう装置で塗布したら効率よく塗料が塗れるのかを研究していました。実際にその企業が大学に来られて一緒に実験を行いましたが、やればやるほど深みにはまっていく感じでした。
大学はアカデミックな内容をやる一方で、企業は実用性を求めるので、そこの折り合いをつけて進めていかなくてはいけないところがすごく大変でしたが、卒業研究を通して自分が得られたものはとても大きかったと思います。
―学生時代を振り返って、これをやっておいた方が良かったと感じることはありますか?
抽象的になってしまいますが、自分の好きなことにチャレンジするべきだと思います。私自身もカナダ留学というチャレンジをして、すごく良かったなと思っています。チャレンジは勉強に限らず、自分の本当に好きなことに向き合って、その中で「自分がどういう人なんだろう」とか「何が好きなんだろう」とか「自分ってどういうことに対したら本気になれるんだろう」みたいな、自分と向き合うことによって、自信が持てるような経験が得られると思います。その経験や自信は、社会人になっても大切になってくると思います。
就職活動では自分が好きな「乗り物」を軸に
― 大学院に進学するという選択肢もありますが、しないという選択をなぜされたのですか?
私のいた機械工学科は修士に進む人が多かったのですが、私は修士に行く明確な目的ややりたい研究がなかったので学部卒で就職しようと決めました。
― 就職活動はいつ頃から始められましたか?
就職活動は3年の夏から始めました。乗り物が好きなので、総合車両製作所のインターンシップや航空会社のインターンシップに何社か行きました。あとは、就活サイトでスカウトが来た半導体の会社にもインターンシップに行きました。
― インターンシップなどを通して他の企業を見た上で、総合車両製作所に入社した動機を教えてください。
大まかに言うと、鉄道業界は鉄道車両を作るメーカーと鉄道を使ってお客さんにサービスを提供している事業者に分かれると思います。その中で、私は大学で機械を専門に学んでいたのでその知識を使いたいということと、英語を活かした仕事がしたいなと思っていました。メーカーは、お客さんが国内外問わずにいらっしゃるので、将来的に英語が活きるかもしれないということで総合車両製作所を選びました。別のインターンシップで行った航空会社はコロナで採用中止になってしまいましたが、もし採用中止になっていなければ迷っていたと思います。
さまざまな現場で幅広い経験を積む
― 入社してから現在までの業務について教えてください。
当社の場合、大卒で入社した社員は、プロフェッショナルになるというよりも、さまざまな現場を経験しいろいろな上司の元で働いて視野を広げて、自社や自社の製品に関する知識を深めていきます。私の最初の部署では、電車の運転室で運転士さんがスピードを調節するレバーやドアを開閉するボタンを取り付けました。次の部署では、電車で使う電線を決められた長さで切る仕事をしました。その次の部署では、電車の下側についている色んな機器の取り付けをしました。現在の部署では、現場にも関わりつつ、現場の補助や業務を効率化するためにDX化を推進しています。
― 仕事のやりがいを教えてください。
自分で何かをして人から喜んでもらったり、感謝してもらったりすることがやりがいです。自己完結の仕事もありますが、アウトプットして人にありがとうと言ってもらえるのはモチベーションになります。あとは、鉄道メーカー独特なのですが、当社の電車が走っているのを見ると愛着が湧いて、元気でやってるんだな、自分も頑張ろうって思います。
― この会社に入って良かったと思ったのはどんな時ですか?
大企業だと分業制でやることが明確に分かれているところが多いですが、今いる自分の部署はいろいろなことを自分から「こういうことを変えたらいいんじゃないか」、「これを導入したらもっと良くなるんじゃないか」と提案すると、すぐに動いてくれて、自分が影響を与えられる範囲が大きいことを実感します。その分やることは増えて忙しくなりますが、自分で何かを変えたり、自分の力で周りを巻き込んで動かしたりできるのは、良い経験になっていると思います。
― 入社前と入社後でギャップはありましたか?
インターンシップに参加する前は、工場には職人さんがたくさんいて怖いイメージがありましたが、インターシップが終わってから、そして今働いていてもそうなんですけど、本当に優しい方が多くて、良い方向にギャップがありました。インターンの時点である程度ギャップが埋められた状態で入社したので、入社後にはギャップはありませんでした。
― 入社してから考え方が変わったことなどはありますか?
大学の時は仲良い人と一緒にいて、仲良い人と授業受けて、関わる人が限られていましたが、会社に入ると大ベテランから後輩までいろいろな世代の価値観や考え方に触れられて、自分の考え方の幅が広がったなと思います。
最後に
― 学生へのメッセージをお願いします。
就活に関しては、個々の考え方があると思いますが、自分の軸を持ってやってほしいなと思います。会社に入ったからOKとか、幸せになれるというのではなくて、自分の人生をどうしたいかというのをちゃんと決めて、そこに近づけるような会社を選べれば、理想的だと思います。私の軸は、乗り物が好きなので好きなことに携われるということ、それから20年後にいろんな価値観や考え方が得られることでした。
大学生活に関しては、やっぱりいろんなことや好きなことにチャレンジして欲しいです。失敗も成功も含めて絶対に自分の経験になるし、自分と向き合うことで自信もつくと思うので、自分探しの旅だと思って、いろいろなこと、好きなことにチャレンジして欲しいですね。
― ありがとうございました!
インタビュー日:2023年9月26日
取材:経済学部 4年 小林 尚礼
工学部 2年 前地 祐記
工学部 1年 長田 悠希
執筆:工学部 2年 前地 祐記
(※学年は取材当時)
編集:キャリアセンター