クリキンディ、おはなしのつづき
もとのお話のご紹介
これは、南米エクアドルに伝わるお話。
あるとき、大きな大きな山火事が起こりました。森のなかの動物たちは、命からがら皆、逃げ出しました。
そのなかで一羽だけ、山火事に立ち向かう動物がいます。ハチドリのクリキンディでした。
ハチドリのクリキンディは、小さなくちばしのなかに水を含んで、燃え盛る火へと水をかけます。
何度も何度も、懸命に水のあるところから山火事のところへと、はばたいて働くハチドリのクリキンディを見て、動物たちは「そんなことをしてなんになるんだ」と口々に言います。
小さなクリキンディは応えました。
「わたしは、わたしにできることをしているだけ」
クリキンディのもとのおはなしは、これでおしまいです。しかし語り手の私としては、もうすこし続きが欲しい。ここからは、ちょっとアレンジを加えた私なりの「ハチドリのクリキンディ、お話のつづき」です。
「ハチドリのクリキンディ、お話のつづき」
山火事へ一羽だけで立ち向かい、必死になって小さな水を何度も何度もかけるクリキンディを見て、動物たちは思い直しました。
「俺たちも、あのクリキンディを手伝おう」
森の生きものたちはそう言って、一匹、また一匹と、山火事に立ち向かう者が増えていきます。
象は鼻にたっぷりと含んだ水をシャワーのように撒(ま)き、猿は器用に両手をお皿代わりにして、水をそこにすくって二本足で歩いて水を運びます。鳥や四つ足の動物たちはクリキンディのように口に水を含んで、ぷっぷっと火に向かって吐きかけました。
それでも巨大な山火事は収まりません。
「困った困った。もうダメだ」
動物たちのうち、諦める者も出てきました。
その時! 空を飛ぶ機械がやってきました。人間たちが乗っています。
「私たちも火を消すぞ!」
機械からは大量の水が、火に向かって散布されました。
そうして、みなが力を合わせたとき。
一陣の風が吹いて、煽られた炎がいくつか、たちまちのうちに空の一か所に集まり……それは、真っ赤に燃え盛る体をした、一羽の巨大な鳥になったのです。
『我は鳳凰なり。我も力を貸そう!』
高らかに響く声に、動物たちも人間たちもみな、一度に頭を垂れました。鳳凰が招くように大きなつばさをはためかせますと、山火事の炎はひとつ残らず鳳凰のからだへと集まってゆきました。
こうして山火事は、ようやく森から消えました。
おしまい
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