神話界 部活対抗 歌合戦♪【ストーリア夏企画2023】
※ 今回の作品は、神話創作文芸部ストーリアさんの2023年夏企画に参加をしております。
今年の夏企画の発表は吉田翠さんのオープニングセレモニー
に始まり。
8/8(火) 悠凛さん
8/9(水) 吉田翠さん
8/10(木) 矢口れんと部長
8/15(火)成瀬川るるせさん
の順番で来ておりまして、私こと、すーは5番目の作品発表者になります。
みんなでチャレンジするお題は「ストーリア学園」です! 神話と学園ものの組み合わせ。面白くなるしかない発案の笹塚心琴さん、ナイスチョイス。
これはもう、学ラン番長スサノオ君の体育館裏に来いや〜だよね?
いやいや、せっかくなのでもうちょい神話の方々を……と、真夏の暑さにも負けず溶けかけたワタクシの脳ミソをコネコネいたしまして。
完成したのは、小説に歌を組み込んだ「神話界 部活対抗 歌合戦♪」でございます。
神話創作文芸部ストーリアの皆様の作品とともに、うだる暑さをひととき忘れて楽しんで頂ければ幸いです。
それでは、本編をどうぞ。
【歌入り小説】神話界 部活対抗 歌合戦♪
神話界に、燦然と輝くストーリア学園。
八百万の日本神話からだけでなく、そりゃもう、まことに多くの神話界からさまざまな神々が通っております。
さまざまなひと、いや神々が数多く集えば、やはり気の合わない神も、派閥もあるということでして。
ここに、それぞれ変型させた、なかなかに個性的な学ランを身にまとい、堂々と遅刻をしてきたグループが。スサノオ君と、わらわらと彼を慕ったスサノオ部の神々でございます。
「あ〜、暑いしクソたりぃわ、学園なんてよ〜」
「スサノオ番長……いや部長、そーですよねぇ。授業なんてバックレますか」
と、口では言うものの、みんなに変型学ランを自慢したいフクザツなお年頃のスサノオ君と、そのお付き神たち。学ランのポケットに手を突っ込み、夏の緑のツタが美しく絡まる学園の扉をくぐって、続く広大な庭をダルそうに歩いています。
すると……。
「スサノオ部! 時間も規律も守らないあなた方は、学園に来なくても良くってよ?」
学園の庭、校舎前に立ちはだかるのはブロンドの美しい女神。テミスさんとそのグループ、テミス部でございます。
「ぁんだよ、テミス部? ケンカ売ってんのか?」と、面白そうなことが起きたという顔のスサノオ君。
「今日という今日は、規律と掟を乱すあなた方を、許せませんわ!」と顔を赤くして怒るテミスさん。やれやれ、いつもの毎日だねぇ、と遠目から見守る神々も学園の庭に集まってきました。
「分かった、今日は決着をつけようじゃねえか! このストーリア学園のな、校歌を決めるんだ! スサノオ部とテミス部で今から歌を披露して、優れたほうが学園の校歌に決定だ!」
「負けた方は学園を去るのですわね? ええ、よろしくってよ!」
二柱の神のあいだにバチバチと散る火花。勝手に決めないで〜、とこっそり聞こえた気がしたのは、無音無形、いや影の薄い校長……大いなる始まりの神、日本ではアメノミナカヌシさまの幻のお声かもしれません。
勝手に決まったスサノオ部とテミス部の校歌決定歌合戦、まず歌い出したのはスサノオ君たちからでした。
♪ 八重垣の 学園護る 益良夫は
嗚呼 我ら スサノオ部 風に 学ラン たなびかせ〜♪
さすが古事記からの時代の歌い手、スサノオ君。お付きの神々との痺れる男性合唱は、なかなかのものでございます。
「はわ〜、素敵な歌声ですわね…、い、いいえ! あたくしたちテミス部のほうが素晴らしくってよ? エウノミア、ディケー、エイレーネー、クロートー、ラケシス、アトロポス、行きますわよ!」
『『ハイッ、お母さま!』』
学園に、母たるテミスさんと娘さんたちの女神が一緒に同じ部活の学生として通う設定はありなのかというツッコミは最もながら。神話はなんでもありということで、ひとつお許し頂きましょう。
♪ ララ〜、オリュンポスの 12の神々には なっていない 私たち テミス部
それでも 法と掟は絶対なの 秩序と正義と平和を守り 地球のどこでも 過去現在未来のいつでも おしおきよ♪
美しい女性陣のハーモニーながら、歌の内容はなかなかに恐ろしく。世界の掟を司るテミスさんと娘さんたちから、逃れられる者はいないというゴツい主張の歌でございます。
「どうだ、俺らスサノオ部の歌がいいよな?」
「あたくしたち、テミス部の歌は最高ですわよね?」
スサノオ君とテミスさんの問いかけに、ワイワイと二分していく学園の神々。
「これじゃあ、決まらねえな…」と当のスサノオ君も困り顔。
「そうですわね……あっ、通りがかりのいい人材がいるわ!」
突然の、憐れな旗振り役となったのは、我らがストーリア学園の先生のひとり、ゼウスさんでした。
「えっ、ワ、ワシ?」と、テミスさんの急なご指名に慌てるゼウスさん。
「ゼウス、聞いていましたわよね? あたくしたちとスサノオ部、どちらの歌が優れていて?」
当然あたくしたちですわよね、の圧に押されつつも。
……聞いていて、惚れ惚れする歌をスサノオ部も披露しておったし……遅刻なんぞ、ちっぽけなことで怒るテミス部にホイホイと味方をしたくもないが…女神の機嫌を損ねるのはよろしくないのう……さて、どうするか。
神々のまとめ役、ゼウス先生としての政治判断が、瞬時に下されました。
「どちらも採用!」
ええ〜、ブーブー、とスサノオ部、テミス部を始めとした神々から、少々文句も出ましたが。
「まあ、ゼウスが言うんじゃ仕方がねえよな! テミス、あんたたちの歌もなかなか良かったぜ」
「ゼウス……この裏切り者……スサノオ部のひとたちのほうが、よほど清々しいですわ! ええ、先ほどの歌も素敵でしたわ、スサノオ」
「ど、どうかな、これからお茶会か、そうだな、テミス部だけに、テニスでも」
「うふふ、よろしくってよ! ただし授業はちゃんと受けてくださいますわね」
「お、おう。美女にそう言われちゃ仕方がねえな!」
「まあ、お上手」
スサノオ君の精一杯のナンパを、快くOKしたテミスさん。仲良く校舎へ入っていきました。
そしてストーリア学園は、今日も平和だったようです。
by 生徒会書記 ガブリエル
♪おしまい♪
※作品補足※
スサノオ君は、日本神話の言わずもがなの暴風神。アマテラスオオミカミさま、ツクヨミノミコトさまに続く三貴子のスサノオノミコトさま。
テミスさんは、ギリシア神話の掟を司る女神さまで、一説にはゼウスさまの2番目の妻とも。彼女が部員として従えて呼んだお名前の女神さまたちは、すべてテミスさまの娘です。
バックレる、は授業を抜け出してサボること。管理システムに、とりあえりず休む理由は告げてサボることが主な今の高校生だと、やったことすらない死語かもしれません(^^;)
八重垣の~、は日本神話のなかでスサノオノミコトさまが詠んだとされる歌をすこしお借りしています。
生徒会書記として語り部を担ったガブリエルさまは、言葉を司る大天使になります。
次回のストーリア学園は8/17(木)チャレンジャーは笹塚心琴さんです。
coming soon!
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