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人生は50から! 信長公、アフリカへ行く 三十話「松浦氏の助力を得る」

登場人物紹介

織田信長おだのぶなが: みなさんご存知、尾張おわり生まれの第六天の魔王。この神話×歴史ファンタジー小説のなかでは、本能寺の変で天使に救ってもらう。一般人、一介の冒険商人「小田信春おだのぶはる)」と名乗り一番のお気に入りだった黒人侍弥助やすけをアフリカへ送り届ける旅を始める。

弥助やすけ: 本能寺の変でも、最後まで戦い、信長を守ろうとした黒人侍。気は優しくて力持ち。明智勢に捕まったが放たれ、その後は故郷アフリカへ信長とともにつ。

ジョアン/ジョヴァンニ: 没落する故郷ヴェネツィアでの商売に見切りをつけ、アフリカは喜望峰回りの航路を確立し勃興するポルトガルの帆船に乗って、はるばる日本へやってきた十七才の少年。宣教師ルイス・フロイスの依頼によって信長をサポートすることに。愛称「蘭丸」の名で呼ばれる。

助左衛門すけざえもん: 堺の港で頭角を現し始めた商人。ジョアンと同い年。この物語では、大商人、今井宗久いまいそうきゅうの弟子。海外への強い憧れから、信長たちと旅を始める。のちの納屋なやまたは呂宋るそん助左衛門。

ゴブ太郎: ひとに化けて船に乗っているうちに、日本へ迷い込んできた妖精のゴブリン。信長に「ゴブ太郎」の名をもらい、ともに旅をすることに。

天使ナナシ: 本能寺で信長を救い、その後も旅を見守って同行する天使。

二十九話のあらすじ

平戸松浦氏の娘、まつ姫に告白をした助左衛門は、彼女からの了承を得ることは出来ましたが……彼女の父親、実力者である松浦隆信まつらたかのぶ氏と話をすることになりました。信長公も、少年の恋の成就へと力を貸してくれます。

三十話

「なんと……織田信長公でござったか。これはまこち、驚いたばい」

がはは、と豪快に松浦隆信まつらたかのぶは笑った。跡目あとめは長子鎮信しげのぶに譲り隠居の身としたものの、まだまだ平戸を広くかつてのポルトガルや、非正規ながら交易をするみんの国や李朝りちょう(李氏朝鮮)の国の者たちや、彼らと日の本の者たちの混成部隊である倭寇わこうと恐れられる荒くれ者たちとも通じ、海へと開いた者として、強く影響力を持つ好々爺こうこうやである。

信長は、この豪気な老爺ろうやに助左衛門とまつ、そして弥助とジョアンも連れて目通りを願い、開口一番、自らの秘密を明かした。

本能寺の変を生き延びたのち、侍の棟梁とうりょうをやめてひっそりと商人になったことを告げ、これから日の本を離れポルトガルの港へ向かい、商いをする予定も話した。

「この助左衛門は、堺の街の大商人、今井宗久殿の弟子にもござってな。海を渡る大きなこころざしを持つ天晴あっぱれな若者じゃ。これからの成長株は間違いなきゆえ、まつ殿を嫁がせて、決して損はさせませぬ」

「ほうほう」

ぎらりと精気に溢れた瞳で、隆信が助左衛門を頭からつま先まで見つめた。

「よ……よろしゅうお頼みします」

緊張をしまくった助左衛門がぺこりと頭を下げる。

「助左衛門さんは、ばり良か方ばい」とまつが言葉を添えた。

「いやあ、面白か!」

ぱん、と隆信は膝を打った。

「織田信長公が、生きとったと! これから海の向こうば、旅立つと……もしも嘘でも、こげん大きなこつば言ってのける、魂が気に入ったと! 港に入った西洋船は間違いなく信春のぶはる殿のものばい、良か良か。まつの相手としてまこち面白かつながりじゃとね」

「父さま。良かと?」

「おうさ。そうと決まれば邪魔はせんばい。旅立つ前やけん、若いもんふたりで仲良くせんと。時間がもったいなか。行け行け」

「お、おおきに」

「それでは失礼致します、父さま、皆さま」

若者ふたりは、そっと隆信に礼を言って去って行った。

「感謝を致すぞ、隆信殿」

「信長公。海の向こうば楽しんで、戻ってくるたい。祝儀の代わりに、これを渡しておくばい」

父の顔から、平戸の怜悧れいりな実力者の顔となり、隆信は胸元からひとつの印籠いんろうを出して信長に手渡した。

「これは? 隆信殿」

「この平戸の港に認められた船として、明や李朝に作られた秘密の港や、東洋に点在する島や、南方の国々ともやりとりが出来るようになるばい。あとで地図は渡すけん、それとこの印籠とで広く商いをすれば良かと」

「なんと……! お心づかい、感謝致す」

「まつの婿むこには、まこち大きな商いをして帰ってもらわんとね。がはは、ポルトガルの港も、東洋の港も行き来が出来れば間違いなか!」

「わあ……! 行けるところが増えて嬉しいですね、上様」

ジョアンが期待に満ちた顔をする。

「ノッブ! アフリカへ行く前に、いろんなところへ行こう!」

弥助も白い歯を見せて笑った。

「そうじゃな。隆信殿、期待して、まつ殿とともにお待ちくだされ」

「承知! 無事に日の本に戻れるよう、住吉の方々にも毎日願っておくばい」

信長と隆信は、祝いの杯を一献いっこん酌み交わしたのだった。

(続く)

次回予告

先にキャラック「濃姫号」へと戻った信長公、弥助、ジョアン。助左衛門に恋人が出来たことにうらやましく思う少年を信長公がなだめます。

どうぞ、お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーよりfumoriさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。

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