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グランマ・モーゼス展(名古屋市美術館)

7月10日から始まった、アメリカのきんさん・ぎんさんのような画家、グランマ・モーゼス展へ行ってきました。

70才のころに、リウマチによって刺繍ができなくなったために、娘さんから絵を描くことをおすすめされて始めたところ、80才のころに大ブレイクし、100才のときにアメリカじゅうからお誕生日のお祝いメッセージを受けて101才で大往生された方です。

160年前のアメリカにお生まれになった女性で、大自然の豊かな恵みがある地域で生まれ育ち、農家の女として当時すべてが村人たちの手作業、簡単な農具による季節の仕事をみんなでこなしていた時代を生きていったひとびとのおひとりでした。

彼女の素朴かつ雄大な自然のなかにあるひとびとの営みを追憶のなかで描いた優しい画風は、第二次世界大戦、そして終戦という暗黒の時代に、ひとびとが失意と挫折の苦しみにあったときに大いにそのこころの傷を潤しました。

絵のひとつひとつに付けられた「りんごバター」などの、彼女が描くポイントを絞ったタイトルも味わい深く、刺繍をずっとされてきたゆえの幾何学模様を取り入れた雪や星、木の幹などの自然の美しさと、アルフレッド・シスレーや、すこし前の印象派の画家たちがアトリエから飛び出して自然の絵を描いた流れを汲むかのような、繊細でひとつひとつの命が生きているように感じられる山や森や川や動物たち。そして、それに対しかなり抽象画的というか、丸にテンテンの目と線の口などで書かれた、ちょっと適当にも見える、自然画のなかの季節の折々を彩る農家のイベントを描いたちいさな人間像。

なにかすごく懐かしいような、形容しがたい暖かい感情、なんというかおばあちゃんのストールとか、お手製のもの。お洋服とかマフラーとか、出来立ての農作物を頂いたときのようなあの雰囲気をこころのなかに抱いて見終わりました。

初期に書かれたお試しのような絵が入り口の最初に飾られていて、その絵はほんとうに、絵は始めたばかりという感じで、描かれた動物も牛なのか馬なのか不明、というようなものだったのが、人生のラストに至るまでに素晴らしく技術的にも絵画的にも成長していて。

人生、いつから始めても出来ることがあるんだな、と元気をもらいました。

コロナ禍での、こころの癒しを求めている方にはぴったりの展示です。

名古屋市美術館での展示は、7月10日(土)~9月5日(日)までで、大阪の展示を終えてやって来たばかりなので、お近くの方はぜひ名古屋市美術館へ。

順次、東京、静岡なども行くようなので、予定としては下記の通り。

静岡市美術館 9月14日(火)~11月7日(日)

世田谷美術館 11月20日(土)~2022年 2月27日(日)

東広島市立美術館 2022年 春 (日にちは現時点で未定)

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーよりメリカナデシコさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。

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