シナリオプランニングを活かすためのコミュニティという仕組み
昨日、プロを育てるためのコミュニティについて考え始めるという投稿をした。
これはいきなり出てきたわけではなく、「プロを育てる」というのは最近になって出てきた問題意識。元々は「コミュニティ」の方に関心を持った。
そう考えたきっかけは、シナリオプランニングに取り組んでいく中で生まれたものだということを今日はまとめてみようと思う。
シナリオプランニングを、単なる手法として使うだけでなく、それを活用して変化する環境に柔軟に対応していける(レジリエントな)人や組織をつくっていくためには、コミュニティの考え方は必須なのではないかと思っている。
弊社のメールマガジンやnoteでも何度か書いているとおり、シナリオプランニングで作成するシナリオはアウトプットではなく、インプット。
つまり、シナリオを完成させて終わりではなく、完成させたシナリオを組織内で活用していくことが非常に重要となる。
完成したシナリオを活用する取り組みの例としては、
・外部環境の変化の定点観測を行う
・シナリオを元にして作ったビジョンの浸透を行う
・シナリオを元にした事業計画等を作成する
・シナリオを元にした事業アイデアを形にする
・シナリオを元にした新たな組織資源蓄積のための取り組みを行う
といったようなものがある。
シナリオプランニングのプロジェクトを組織内で行う場合、部門横断的なメンバーで取り組むことが多い。
同じ組織に所属しているといっても、チームをつくった頃はメンバー同士、カタい雰囲気で話していることも少なくない。そんなメンバーも、数ヶ月ほどのプロジェクト期間を経てシナリオが完成した頃には、未来に向かって新たな視点を持つ良いチームになっている。
(これについては少し前に「未来についての対話から起きる変化」で図も交えて書いている)
このメンバーがそれぞれの普段の持ち場に戻り、プロジェクトの成果を展開しようとした頃、周りのメンバーを見て気がつくことがある。
それは、不確実な未来に向けての影響を自分事として考えるようになっていた自分は、いつの間にか組織内では特殊な存在になっているということ。その状況をどうにかしようと最初の頃は思うものの、いつしか元の鞘(さや)に戻ってしまい、そして今までどおりの日常に…。
そうなってしまうと、せっかく時間をかけてシナリオプランニングのプロジェクトに取り組んだ意味はなんだったのかという話しになってしまう。
しかし、実際問題として、シナリオプランニングのプロジェクトで取り組んできたことを、通常の組織構造に持ち込むことは、そう簡単ではない。
そういう悩みをどうにかしようと思っていた行き着いたのが、だいぶ昔に読んだ『コミュニティ・オブ・プラクティス』だった。
この本では、コミュニティを「実践コミュニティ」と読んでいるが、同書の中では、自ら学習していく組織をつくっていくために「二重編み」の組織を作る必要があると説いている。
組織が自らの経験から学び、知識をフルに活用するためには、知識の世話人であるコミュニティと、知識が適用されるビジネスプロセスとを緊密に織り合わせ、いわば「二重編み」の組織を作り上げる必要がある。
(出所:『コミュニティ・オブ・プラクティス』 p.51)
同書のこの後の部分では、ひとりの社員が公式な組織(ビジネスプロセス)と非公式な組織(コミュニティ)に属している状態を「多重成員性(マルチメンバーシップ」と呼び、学習のループを生み出す特徴としている。
これをシナリオプランニングのプロジェクトに当てはめて考えてみよう。
シナリオプランニングのプロジェクトは、先ほども書いたように部門横断的、つまり公式な組織とは異なる体制で取り組むことが多い。
しかし、そのプロジェクトでどんなに良いシナリオができても、(先ほども紹介したように)それをインプットとして導入していく仕組みがなければ、
本来のシナリオプランニングだとは言えない。
ただし、現実的にはプロジェクトの内容をそのまま公式な組織やビジネスプロセスに持ち込むのは無理がある。そこで、活用するのが実践コミュニティの仕組みだ。
非公式な組織である実践コミュニティにおいて、シナリオプランニング後の取り組みを組織のさまざなな文脈で実践する。そして、実践コミュニティの活動を公式な組織に還元していくことをとおして、公式な組織自体にも影響を与えていく。
このようにシナリオプランニングと実践コミュニティの考え方を結びつけることで、公式な組織と非公式な組織での循環をつくり、その時点の公式な組織の状況を超えて、シナリオを活かす土壌を組織の中に育んでいく。
そんな仕組みを実現するために日々奮闘中。
(この考え方を一緒に深めていってくれる人、募集中!)
【PR】シナリオプランニングの意味やつくりかたをコンパクトに解説した実践ガイドブックを公開しています。
Photo by Daniele Riggi on Unsplash