Vol.12 最新の小売トレンド〜Micro-fulfillment〜ヨドバシエクストリームとその顧客満足度
今回のテーマは、日本のMicro-fulfillmentとしてヨドバシエクストリームとその顧客満足度を取り扱っています。
Micro-fulfillmentは、フルフィルメントの一種です。EC業界においては、ユーザーからの受注、商品梱包、発送、商品受け渡し、代金回収、カスタマーサポートといった一連のバックヤード業務をフルフィルメントと呼び、顧客体験の向上する上で重視してきました。例えば、古典的なEC事業者は、地方に大型の集中倉庫(フルフィルメント・センター)を持ち、数日かけて購入者の住所まで配送を行います。一方、Micro-fulfillmentは都市部に分散する店舗や、小型倉庫をフルフィルメントセンターとします。つまり、ユーザーは同日(30分〜数時間とサービスによって異なる)に商品を受け取ることができます。当然、ユーザーの利用するデバイスがPCからスマートフォンに移行したことで位置情報の利用が進み、このトレンドは一層強くなりました。
※YODOBASHI XTREMEサイトよりキャプチャ引用
以前のメールマガジンでは、韓国のCoupangを取り上げました。Micro-fulfillmentは世界的に普及しているアイディアなので、日本も例外ではありません。ヨドバシエクストリームは、家電・カメラ総合量販店ヨドバシカメラが2015年から試験的に始めたMicro-fulfillmentサービスです。対象エリアは、東京都23区全域、東京都下・横浜市・川崎市・相模原市・新潟市・甲府市・甲斐市・中巨摩郡・仙台市・札幌市・大阪市・京都市・福岡市の一部地域となっており、都市部の配送拠点から自社社員による配送を行います。これにより、消費者は最短30分で購入した商品を受け取ることができます。
当社の2021年3月期の全社売上高は7,318億円で、そのうちEC売上高は2,221億円。デジタルチャネルの構成比は30%を超えています。その原動力がヨドバシエクストリームです。例えば、日経ビジネスが大手インターネット調査会社マクロミル社とともに行った顧客満足度調査では、Amazonや楽天といった最大手のEC事業者を突き放しています。
都市部の配送センターから短時間で手元に届く、Micro-fulfillmentを武器に成長してきたと聞くと、生鮮食品や飲食の配送サービスが主だと思わえるかもしれません。しかし、売上で当然家電やパソコンといった家電量販店の売れ筋が圧倒しています。但し、家電量販店では、一般的でない食品やヘルス&ビューティー、日用品といったカテゴリーも揃え、利用点数では日用品のほうが高くなっています。このことから長年、当社のポイントを軸にした顧客管理や、デジタル施策を主導してきた藤沢和則社長は、「店頭で買いたいものと、ネットで買いたいものは違う」と認識しています。
ここまでヨドバシエクストリームを支えていたMicro-fulfillmentを紹介しました。都市部の商品を地域の消費者に即日配送するアイディアは突飛なものではありません。日本でも2000年代からお酒の通販カクヤスが都市部の店舗や小型倉庫からmicro-fulfillmentを行って、顧客満足度を高めています。消費者にとっては、今すぐ使わない商品でも、同日に届くのは体験的に全く異なる質を提供しています。
次回は中国のアリババグループ傘下の盒马を中心としたニューリテールとMicro-fulfillmentの関係を紹介します。
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