childspot
夜の神戸の街並みを歩いて、ライブハウスへ向かう。
行きつけの美容院の近くで、2.30人の行列を見つけて、ラーメン屋の並びだと思った。
でもそこが目指していたライブハウスだと分かり、こんなに街並みに溶け込んでいるのだなと驚いた。
チケットは早めに購入していたから、着いた時には既に入場可能だった。
持参したチケットを係員に見せて、行列を横目に地下へと進む。
ワンドリンク代600円を払って、更に進むと今日のライブ会場があった。
オールスタンディング。キャバはおよそ300人程度。一階席と二階席に分かれていて、二階の方は見やすいように段が幾つか設けられている。
段を支えるビールケースがちらと見えて、およそ芳しくないライブハウスの懐事情を垣間見た。
それでも20年前から存在しているライブハウスだから、コロナ禍を越えたしぶとさも兼ね備えている。
既に人でごった返していたけど、186センチの僕にはあまり関係がない。
迷わず一階席に降りて、端の後ろの方の場所を確保した。舞台が近い。
そもそも、今日のライブを開催する「childspot」というバンドは、大学生の頃に聴き始めたバンドだった。
「ネオンを消して」という曲にふと出会って、衝撃を覚え、言いようもなく曲に酔いしれた日があった。そこからは楽曲が出ているのを見つけたら聴いていた。
普段僕が聴く音楽は、一般的な基準で売れているメジャーな曲が多い。
その中でもchildspotの曲は素敵な曲が多いと思っていたから、当然メジャークラスに売れているものだと思っていた。
それ故に、今日のライブハウスの規模を見て少し面食らった。少なくとも1000人規模の箱だろうとばかり予想していた。
少しして照明が落ちて、メンバーが入ってくる。
観客から拍手が自然と湧き上がった。
みんなスマホで撮影したりするのではなく、目を輝かせてchildspotのメンバーを見ていて、ここには本当に音楽が好きな人達が集まってるんだなと感じた。
初めて見るメンバーの姿は、思っていたよりも若く、初々しかった。
22歳の彼らは、大学4年生くらいの年代だから、そう感じるのも不思議じゃない。
ほんわかな雰囲気の女性ボーカルだったけど、歌い始めるとキリッとして雰囲気がガラッと変わる。
声量と歌い方で瞬時にプロの歌い手だと分かった。
爆音で鳴るスピーカーの音は、ライブハウスを文字通り揺らす。
スピーカーの重低音が腹に響いて、それと対比するようなボーカルの美しい声が心地良かった。
楽曲は最高だった。
「ネオンを消して」も聴けたし、最近のお気に入りの「愛哀」は確かに胸に響くものがあった。
何より、ボーカルの比喩根さんがとても素敵だった。
楽しそうに歌ったり、悲哀を込めて歌ったり、ファンに笑顔を振り撒いたり、コロコロ変わる表情は自然と惹きつけられるものがあった。
色んなライブに来るたびに思うことは、「表現」を自分の思うままにしている姿はなんて素敵なんだろうかということ。
普段の抑圧された自分達ではなく、ありのまま、思うがままに音楽で自分を表現する。
その姿が本当に素敵で、嫉妬すら覚える。
自分も、何か表現をしないといけない。
自然とそう思わされた。
ありのままの自分を解き放って、目一杯の表現をする。
そういう瞬間がないと、人生なんてつまらない
そんなことを改めて考えさせられるライブだった。
彼女達はおそらく、これからメジャーの階段を上がっていくのだと思う。
ただ、今日の彼女は、初となる神戸のライブで受け取ったアンコールの大きさに、感動して涙を流していた。
そういう瞬間に立ち会えてよかった。