日本も中国も、ひょっとしたらルール意識は同じじゃね? と思った話
先日noteで紹介した、日本に帰化したい中国人の若者とまた話す機会がありました。
話題は日本での就職活動のことだったのですが、その中で彼が日本のニュースを見ていて、疑問に思ったことを投げかけてきました。そのニュースとはこれ。
彼の疑問は、「日本の新卒採用の活動は6月に解禁するはずなのに、なぜもうこんなにたくさんの内定が出ているのか?」ということでした。なるほど、鋭い質問です。
僕は、「日本の政府が決めた採用活動のスケジュールはあくまで「要請」であって、「法律」でも「条例」でもないから特に強制力がない。だから守らなく何も言われないし、そんな要請を聞いてたら優秀な人をどんどんヨソにとられちゃうから、どの企業も無視して早めに採用を始めてるんだよ」と、簡単に説明しました。
彼はうなずき、「なるほど。なんだか中国みたいですね」と言いました。
僕はそれを聞いて、逆に「ああ、なるほど」と思わされてしまいました。
日本にも「上有政策,下有対策」がある
僕は常々、日本と中国における「ルール」との付き合い方のようなことをnoteに書いてきました。
そこではおおむね、日本人は「ルールはルール」であるとして、律儀にルールを遵守しようとするのに対して、中国人はルールを柔軟に解釈し、またルールそれ自体の影響力を鑑みながら行動を主体的に決める、というようなことを書いています。どちらにも一長一短があり、いわゆる「お国柄」の出ている部分です。
しかし、上に挙げたニュースの例では、ほとんどの企業は政府要請をガン無視しています。日本でも、たとえ政府要請であろうと、守る必要がないのであれば誰も馬鹿正直に従いたいとは思っていないのです。
また、そこにはおそらく「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という発想もあるのでしょう。上記のようないわゆる「就活ルール」が経団連によって示されたのは2016年、その後ルールを主導するのは政府に代わったらしいのですが、その時からいままで企業のみなさんは空気を読みながら、「このルールってどれくらい有効なのか」「破ったらどういうことになるのか」を見極めてきたのでしょう。そして特に何も言われないとわかり、ルールが完全に形骸化したのが現在です。これ、ある意味ではものすごく中国的だなあと思います。
「就活ルール」は要請レベルであり、法的拘束力がないただの指針ですが、このほか明確に法律で禁止されているのがなぜかOKになっていることも、よく探せば日本にもあります。
すぐに思いつくのは、パチンコの「三店方式」でしょう。刑法で禁じられており、本来は公営でなければ開催できないはずのギャンブルを、営業形態を工夫することによるレトリックで事実上実現させています。
中国には「上有政策,下有対策」(上に政策あれば、下に対策あり)という有名な言葉があるのですが、僕はこの「三店方式」の話を聞くたびに、「日本にも「上有政策,下有対策」あったんだ!」という気持ちになります。
日本と中国の違いは?
日本と中国で違うことがあるとすれば、中国は法律的なレイヤーとそのほか政府が出す方針や通知などのレイヤーの区別が曖昧で、ある意味では「空気」とか「さじ加減」としか言いようのない力学でルールの運用が決まるということでしょうか。
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