中国西安市で起きたデモへの雑感。その究極の原因とは
今日は中国で話題の件についてです。日本語でもニュースソースがありました。
先週あたりから、陝西省・西安市で中学生の子どもを持つ保護者(中国語では「家長」という)による、デモなどの抗議活動が各地で行われています。中国のSNSやニュースではほとんど見られませんが、Twitterなどにはその様子が流れてきています。
抗議の背景には、高校受験にまつわる不正の問題があります。
中国では学生にとって一世一代のイベントである、大学受験の「高考」がありますが、その前哨戦としての高校受験「中考」もたいへん重視されています。
この高校受験では通常、省や市などの地域ごとに試験内容が決められ、その点数によって行ける高校が決まります。学生は戸籍にもとづいて、地元の試験を受けることになります。
そして、今年の高校受験にあたっては、隣の河南省からやってきた学生が西安市で不正に受験していた例が相当数あるのではないかという話が出てきました。さらにそういった学生は、業者に頼んで成績を不当に底上げしているなどの噂も流れました。
もしそれが本当であれば、本来なら地元の学生が合格していたはずの枠が、河南省からの不正な流入によって奪われてしまったことになります。
もちろん西安市の受験生や、その保護者は納得がいきません。そこで怒りに燃えた保護者が、政府当局などに対して「この件を徹底追求しろ」と圧力をかけるために抗議活動をおこなっている、というのが今回起きたデモの構図です。
西安にいる知り合いに聞いたところ、少なくともその人の周囲にいる受験生の親は、ほとんどすべてがデモなどの形で抗議に参加しているそうです。かなり大きな騒ぎのようです。
こうした動きを受けて、当局の側は不正受験をあっせんした業者を多数逮捕したり、不正をした学生の合格を取消にする措置を検討するなどと発表しました。
ただ、すでに高校に行けないと決定してしまった学生への処置はどうするのかということや、不正受験をした受験生がもっといたのではないか(否定されていますが、当初は4万人という話が出ていました)ということへの追求をめぐって、抗議の声はいまのところ止んでいないようです。
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かように大きな問題になっている本件ですが、そもそもなぜ河南省の学生(ないし、そうしようと決める権利を持った保護者)は、不正な手段に手を染めてまで隣の陝西省で受験をする必要があったのでしょうか。
その答えは、地域ごとの受験システムが生む不平等・不公平にあります。
これも先述の知り合いに聞いたことですが、今年は河南省にはざっくり100万人、西安市のある陝西省には30万人の高校受験生がいたそうです。それぞれの省の高校合格率は50%程度なのですが、全体の学力としては河南省のほうが高いといいます。
つまり、同じ学力でも河南省のほうが高校に合格しにくく、高校への進学が難しいということになります。さらには人数が多いぶん、良い学校への競争率も河南省の方が高くなる傾向にあります。
そこで河南省の学生には、場所を変えて受験するインセンティブが生まれます。いわば、ボクシングであえて階級を落とすようなことが行われているわけです。結果として一部の学生は、リスクを冒してでもわざわざ隣の省で受験をしようとしたわけです。
もちろん、そうした不正のせいで割を食ってしまい、進学できなくなってしまった西安市の受験生が被害者であることは間違いありません。しかし、もともと不平等な条件で受験をしなければならない河南省の受験生もそれはそれでかわいそうな境遇ではあるし、難しいところです。
制度に則らずに受験をすることは問題ではあれど、そもそもの制度が不公平であるという点は忘れてはいけないでしょう。
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以下この件に関する雑感です。
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