東南アジアで中国が存在感を増している件
東南アジアで、中国への支持が伸びているとのニュースが流れてきました。
野本響子さんとVoicyでお話しした時に、東南アジアにおける中国のプレゼンスが上昇しているという話は聞いていたのですが(野本さんのマガジンでもたびたび言及されています)、こうして数字が逆転したとなると、またその傾向が一歩進んだのだなということがわかります。
せっかくなので、元データを見に行ってみました。
元の質問は「If ASEAN were forced to align itself with one of the stratebic rivals, which should it choose?」(もしASEANが戦略的ライバルのどちらかと手を組まなければならないとしたら、どちらを選ぶべきだと思いますか?)というもの。
国別の内訳を見てみると、中国への支持がアメリカを大きく上回っているのはマレーシア(75.1%)、インドネシア(73.2%)、ラオス(70.6%)、ブルネイ(70.1%)の4ヶ国で、逆に中国への支持が低いのはフィリピン(16.7%)、ベトナム(21.0%)、シンガポール(38.5%)の3ヶ国です。
中国との経済関係が強く恩恵を受けているインドネシア、ラオス、マレーシアの支持が際立って高く、逆に中国との間に領土問題を抱えているフィリピンとベトナムの支持が低くなっている、とレポートでは述べています。
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ここまでは上のニュースにも書いてあることですが、面白いのはそれぞれの国への信頼感(Perceptions of Trust)についての質問です。
「あなたは、中国が世界の平和、安全保障、ガバナンスに貢献するために「正しいことをする」のを信じていますか?」という質問では、中国はむしろ信頼されておらず、「No Confidence」(まったく信じない)と「Little Confidence」(あまり信じない)と答えた人の合計が過半数を超えています。前年との比較で見ても悪くなっています。
信頼しない理由を見てみると、多くの国で「中国の経済力と軍事力が、わが国の利益と主権を脅かすために利用されかねない」や、「第20回中国共産党大会後、中国の将来の安定がより不透明になった」、「中国が内政に気を取られ、世界的な懸念や問題に集中できないことが心配」というものが多数を占めます。中国の政情や軍事力については、どの国もまだまだ不信感が拭えないことがわかります。
いっぽうで、アメリカについての同じ質問を見てみると、同様に前年比で各国からの支持を落としており、その下がり幅は中国を大きく上回っています。まだ「信頼できる」が優勢ではありますが過半数を割っており、「信頼できない」と答えた人の割合が10%以上上昇しています。
信頼しない理由としては「内政に気を取られ、世界的な懸念や問題に集中できないことが心配」という中国の同様のもののほか、「アメリカが責任ある信頼できる大国だとは思えない」というものが多くを占めています。
つまり、このレポートからASEANの国の中国に対する感情として、僕なりに読み取れるのは、
……ということになるのかなと思います。ニュースだけでは見えないヒダのようなものが見えてきたような気がして、面白かったです。
他にも日本への信頼が意外と高かったりとか、興味深いデータがいろいろあるので、ぜひ元データをみなさんも見に行ってみてください。英語ですが、機械翻訳で普通に読めます。僕はDeepLを活用しながら読みました。
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以下、中国に住んでいて見える、中国から見た東南アジアへの印象について少しだけ。
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