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「何もしないをしてほしい」が理解できなかった中国嫁の話

かなり前の話ですが、中国人の嫁と関係が良くなかった時期があります。何をしていても、何を話してもどちらともなく言い争いが始まり、最後は大ゲンカになるまで終わらない、という状態でした。

そんなある時、2人で「これは良くないよね」という話になり、自分が怒ってしまった時、あるいは怒りそうな時にどんなことをしてほしいかお互いに決めておこう、ということになりました。せめてケンカがエスカレートするのを回避しようという、前向きな夫婦の話し合いです。

嫁がどんなことをしてほしいと言っていたのかは昔のことすぎて忘れてしまったのですが(そういうとこやぞ)、僕がこんなふうにしてほしい、と言った時の嫁の反応のことはよく覚えています。

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僕はその時たしか、「怒りが湧いてくると冷静に話ができなくなるから、いったん放っておいてほしい」というようなことを言いました。ちょっとカチンときた時に、こちらが落ち着こうとしているのに、畳み掛けるように何かを言われてついカッとなってしまったことが多いように思っていたからです。

ところが嫁の反応は、「うん、それはわかった。で、何をすればいいの?」と、もう一度同じことを質問してきます。いやだから、いったん放っておいてほしい、っていったんだけど……と説明しても、「いやそれはわかってる。それで、何をすればいいの?」と来ます。無限ループってこわくね?

どうにも話が噛み合いません。僕は何もしなくていいというか、むしろ「何もしない」をしてほしい、ということを伝えようとしたつもりだったのですが、嫁にはどうにもそれが理解できないようでした。

同じループが何周か続き、結局その話し合いの空気そのものが徐々に険悪になり始めました。本末転倒とはこのことです。ああもうなんでこうなっちゃうかな、と思いながらも僕が諦めて話を打ち切ろうとすると、嫁はそれも気に入らなかったようで、ちゃんとわかるまで話をしましょう、と言い出します。

その後は……どうなったっけ? 結局また大きめの言い争いになったのか、軟着陸できたのかは定かではないのですか、ともかくその「放っておいてほしい」→「わかった。で、何をするの?」 というループのことは、わりと鮮明に覚えています。

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それから年月が過ぎ、中国の人への解像度がそれなりに上がったいま当時のことを思い返すと、嫁の言いたかったことや考えていたことが、当時よりはわかるような気がします。

おそらく中国人である嫁にとって僕の言っていることというのは、「何もしないってことが、どうして相手のためになるの?」というようにしか解釈できなかったのではないかと思います。

これだけだと分かりにくいので、下に解説します。

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