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上から下から漏れる中国の個人情報
こんな記事を見ました。
江蘇省の無錫市が、コロナ対策のために集めた個人データ10億件を、個人情報保護の観点から消去したとの発表です。同時にコロナ対策のために使われていた各アプリケーションもサービスを終了するとのことです。
同様の動きは他の地域にもあります。2月中旬には広東省で使われていた「粤康码」といういわゆる健康コード(検査履歴やワクチン接種歴、移動履歴などを管理する地域ごとのアプリ)に付加されていた機能の多くを停止し、同時にそれに関連するデータを消去することを発表しました。
各地方がこうした発表を行うのは、世論の風向きの変化が関係しているように思います。
これまで「情報はどこからか漏れているのだから仕方ない、便利になるならヨシ!」ということで個人情報の流出にはおおらかだった中国の人々ですが、近年はネット社会が浸透したこともあってか個人情報への意識が高まり、以前ほど人々は寛容ではなくなってきています。
「あなたの個人情報はちゃんと消しましたよ、悪用したり横流ししませんよ」とアピールすることが、以前よりも大きな意味を持つようになってきたのでしょう。
また中国で個人情報といえば、最近ではライドシェアサービスの滴滴(Didi)の事件のことが記憶に新しいです。
滴滴はスクショ画像や乗客の顔認証データなどを違法、かつ必要以上に収集していたことがわかり、国から莫大な額の罰金と、ユーザーの新規登録・アプリのダウンロード停止という措置を受けました(今年の1月に解除)。
滴滴は全世界でサービス展開しており、アメリカでも上場を果たしている企業なのでセキュリティ上の懸念が大きく、こうした厳しい措置が取られたと言われています。
これは大きな例ですが、そのほかにも個人情報の運用について当局から企業に指導が入ったり、違法性を指摘される例が増えてきています。国レベルでも、個人情報を慎重に扱う姿勢が見えてきているといっていいでしょう。
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では中国でも今後は個人情報が他の国並みに丁重に扱われるようになるかというと、そう簡単でもない、と思います。
中国においては、どれだけ企業への個人情報への扱いへの姿勢が厳しくなったとしても、「上」と「下」から情報が漏れていくルートが存在し続けるだろうと、個人的には考えています。
「上」と「下」とは何かについて、以下に書きます。
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