システムアーキテクト 品質管理システムの構築【記述式の徹底解説】(令和4年春問2)
2023/7/19 メンバーシップ開設に伴う修正
本記事ではシステムアーキテクトの午後(記述)対策として、令和4年午後1問2で出題された過去問の解説をします。
問題
過去問の問題文、出題要旨、採点講評は試験センターからダウンロード可能です。
問題文全文
出題趣旨(試験センターより)
採点講評(試験センターより)
問題特性
食品製造の現場における品質管理がテーマであり、様々な業務や機能についての説明が本文にはありますが、設問で問われているのはそのうちの一部です。
設問1が担当者変更に関して
設問2が品質検査の実績入力
設問3が出荷前承認に関して
という具合です。
まずは設問文から目を通して、キーワードとなる機能や業務をインプットしてから、そのキーワードに沿って問題文を詳しく読むのがよいでしょう。
たとえば製造の工程や品目の仕様などは紙面も大きく割かれて説明がありますが設問では問われないので、詳細に理解しようとすると時間が足りなくなってしまいます。
ざっと読んで大まかに理解して、設問文のキーワードを中心に時間と集中力を使いましょう。
解法
設問1 検査担当者変更機能、及び品質検査指示作成機能
(1) 検査担当者変更に必要な属性
第一問から問題文全面に目を通す必要があり、要求されるデータベースの知識もそれなりに高く、業務イメージの想起も求められるので、難易度は「難」としました。
はじめに検査担当者をめぐる業務である「品質検査実施準備」業務について理解する必要があります。
具体的には"シフト表"のようなイメージを持てたかというところがポイントです。
上記のようなイメージを持つためにチェックする問題文の箇所を述べていきます。
1日に3回の「便」があることが上記から読み取れます。
曜日・便・品目ごとに担当者は1人であることが分かります。
上図で下線を引いた文章の次に、「担当する一部又は全部の品目」という文があることから、1人が複数の品目を検査してよいことも分かります。
シフト表のイメージがわきましたら、検査担当者を変更する業務について具体的に考えていきます。
Aさんが月曜日に早退のため便3を欠席するとします。
このとき品目1と品目3の検査に穴が出るので、どのように対応すればよいでしょうか?
上に下線で引いた箇所の通り、特定の製造日・便において担当者都合で検査を実施できない場合は、他の担当者に変更するとあります。
検査担当者変更に関しては、新システムに対しても要望があります。見ていきましょう。
品質検査の実施見込回数を参照したいとあります。
また変更元と変更先とで見込回数の算出方法を変えたいと書かれています。
どういうことか、図で確認しましょう。
変更元(Aさん)は品目ごとの見込回数なので、
品目1の見込回数:1
品目3の見込回数:1
のように参照できればよいです。
変更先(DさんやGさん)は検査担当者ごとの見込回数なので、
Dさんの見込回数:3
Gさんの見込回数:3
のように参照できればよいです。
なお、見込回数が複数回ということは、1回の品質検査で合格したのではなく、不合格となり複数回の製造工程が走ったことの表われです。
検査責任者としては見込回数の情報をもとに検査担当者の変更を判断することになります。
以上が新システムでやりたいこととなります。
やりたいことが分かったので、実装について考えていきましょう。
設問で問われているのは空欄「a」について、すなわち「検査担当者変更」ファイルについてです。
表2の「検査担当者変更」機能は上図の赤い枠線で囲った通り
「検査担当者変更ファイル」
「品質検査指示実績ファイル」
「検査担当者マスタ」
の3つにアクセスします。
「検査担当者変更」機能ははじめに「製造日・便及び変更元検査担当者を指定する」とあります。
以降の(A)~(D)のプロセスをシフト表を変更するイメージで説明します。
はじめに(A)で指定した曜日・便の品目コードを抽出します。(A)でアクセスするのは「品質検査指示実績ファイル」であり、品質検査の実績回数がわかります。
次に(B)で指定の曜日・便の社員コードを抽出します。
次に(C)にて(A)と(B)の結果を結合すれば、指定の曜日・便の担当者別・品目別の実績一覧を表示できる元データができあがります。
最後に(D)で、変更元担当者(Aさん)の品目別の実績回数
品目1の見込(実績)回数:1
品目3の見込(実績)回数:1
変更先(DさんやGさん)は検査担当者ごとの実績回数
Dさんの見込(実績)回数:3
Gさんの見込(実績)回数:3
を表示することになります。
以上の情報をもとに検査責任者は検査担当者の変更を行い、新システム(検査担当者変更ファイル)に登録します。
検査担当者変更ファイルに必要な属性を考えると、
製造日
便
の情報が必要(プロセス(A)や(B)の抽出条件であるため)であることがわかります。
また、具体的な担当者変更には品目ごとに行う必要がある
(たとえば、
品目1はDさんが代行する
品目3はGさんが代行する
のように)
ため、品目も必要な属性(登録する上で必要)であることが分かります。
(2) 検査担当者変更で検査責任者が行うこと
前問と同様、検査担当者変更機能に関する問題です。空欄 b については以下の部分です。
検査責任者が新システムにおいて(A)~(D)の工程で見込回数(実績回数)が表示された内容に基づいて行うことは何かという問題です。
〔新システムの要望〕から確認します。
実施見込回数は作業負荷の目安のために参照するものであり、検査責任者が各検査担当者の作業負荷を確認することが読み取れます。
よってこれを20字以内でまとめます。
(3) 社員コードの抽出元への要件
問われているのは特に(B)の社員コードを抽出するプロセスです。
見込回数を抽出するには品質検査指示実績ファイルがあれば事足りるはずなのに、あえて検査担当者マスタから社員コードを抽出しているのは何故か、という問題ですね。
検査担当者マスタは曜日・便・品目ごとに1人割り当てられている、いわばシフト表の基本となる情報が格納されているマスタです。
実績ではなく基本情報から社員コードを抽出している理由は、〔新システムへの要望〕に答えがあります。
上の引用の太い線で書いた通り、実績として検査担当者への変更が入った場合でも、変更前の割当てに従って集計してほしいという要望があります。
見込回数は細い線で書いた通り、前週の実績回数から算出するので、もしも担当者の変更が入っていた場合、「品質検査指示実績ファイル」からの抽出では「変更後の割当て」から担当者が抽出されてしまうことになります。
よってこれを30字以内にまとめます。
設問2 次に品質検査対象となるロットを表示する条件
下線①は以下の部分です。
下線①に「さらに二つの項目」とある部分が問われています。問題文を読んでヒントを探しに行く方法もよいですが、テーブルの属性情報から類推する方法もあります。
属性の数は多いのですが、順に確認してあたりをつける方法ですね。
下線①にすでに「社員コードが検査担当者自身と一致すること」という条件が書かれているので、他に2つ属性と条件を指定します。
品質検査の実績を入力するプロセスでのことなので、属性「検査結果」についての条件がつくことは想像できるのではないでしょうか?
"合格" "不合格" などの結果が入っていれば次に表示する必要は無いので、"未実施" であることが条件となります。
もう1つは、品質検査の業務の説明が書かれている箇所を確認します。
検査担当者は受け取った全てのロットに対して「古い順に」という指定があることに気付きます。
よって、属性情報を見ると「製造完了日時」という項目があるので最も古いものを次に表示してやればよいことがわかります。
設問3 について
解説は有料記事となります。
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総評
解答一覧
問題特性(再掲)
いかがでしたでしょうか?
基本的にはデータベースの知識に自信がある方向けという印象ですが、シフト表作成や担当者変更、出荷前承認に必要な視点など業務知識・経験も問われていそうです。
実装面・業務面が両方問われるのはシステムアーキテクトの特徴の一つですね。
本記事はシステムアーキテクトの記述式(午後I)の初の解説記事です。今後、過去問の徹底解説記事を充実して参ります。
ではそれまで。
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