見出し画像

もうすぐ教員生活0年目がおわる

greenz.jp編集長を卒業し、京都精華大学に特任講師として着任したのが2016年4月。

2018年度の後期もいよいよ最終週で、ふつうに数えたら大学での教員生活3年目が終わるのですが、なんというか僕にとっては0年目が終わった、そんな気分です。

どうしてかといえば、次の2019年度からがいよいよ本格的な1年目、という予感があるから。とすればやっぱり0年目が終わったのであり、2017年度は-1年目であり、着任したときは-2年目からのスタートなのだった。


もがきにもがいた-2年目&-1年目

あくまで最終学歴は大卒であり、修士号をもっていない僕が大学生に向けて教授するというのは、社会人向けの学びの場作りには経験値があったとはいえ、想像以上に難しい仕事でした。

1年目は手探りの空回り、授業は三振かホームラン。2年目は打率は少し上がったものの中途半端なまま、むしろホームランは減っていく。だんだん授業がある日が憂鬱になり、どんどん自信は失われる...

greenz.jpに着任から半年たったくらいの記事がまだ残っているけれど、まだ楽しそうにはみえます。とはいえ既にそこでも「事実上の転職ですし、マイナスからのスタートですからね」と、未来を予感していたかのように弱音を吐いていたのでした。


研究・教育・校務が大学教員の三本柱だとして、特任講師ということで校務はかなり免除されています。そして研究は、編集と研究の違いさえも知らない素人だったので、悔しいですがあまり期待されているわけではありません。となれば僕にもっとも求められていたのは教育であったにも関わらず、このありさまだったのです。

京都精華大学とのコラボ企画でstudio-Lの山崎亮さん、アサダワタルさんミラツク西村勇哉さん、NOSIGNER太刀川英輔さんといった人たちに相談してみたものの、まだまだ光は見えなかったのでした。


光が見えたひとつの質問

そんなときにわかに「beの肩書き」が注目を集めて、僕の自尊感情は少しずつ癒やされていくのですが、「本業であるはずの大学から逃げている」という気持ちはぬぐえませんでした。それは2018年4月時点でもそう。

そして、その重たい気分を一瞬にして祓ってくれたのが、京都のお姉さん的存在であり、『beの肩書き』の編集担当でもある杉本恭子さんの、ちょっとしたひとことでした。

新しくウスビ・サコさんが学長に就任したときの晴れのパーティーで、僕があいかわらずうじうじ弱音をはいていると、杉本さんはいつもの調子でこう尋ねてくれました。

YOSHさんは何をしているときが幸せなんですか?

それはまさにbeの肩書きワークショップで僕が参加者に促している問いでありながら、自分自身がその答えを見失っていた核心を突く問いでした。

そして、その問いに自然と出た答えが、これでした。

授業の組み立てを考えているときですね。

このシンプルな答えに自分でもビックリしたのを覚えています。「そっかー、やっぱり、それかー。じゃあ、いま最高の環境にいるじゃん」と。


授業をつくる喜び

そこから毎週のように、次の授業に向けてスライドをつくるだけでなく、ワークショップのためのオリジナルのシートをたくさんつくる生活が始まりました。

半年の授業での学びを測る「ソーシャルデザイン」受講生アンケート、何ができるようになったかを振り返る「スパイラルアップ」シート、メンバーに感謝の気持ちを伝える「フィードバック」シート。その数はゆうに20種類を超えると思います。

他にも「beの肩書き」をはじめ、「コミュニティすごろく」や「MOYAMOYA研究」など、いま大学外で提供しているプログラムの原型が、この場でブラッシュアップされていきました。

それは教授のプロとして当たり前のことをしよう、ということではあるのだろうけど、独学者でありアマチュアの僕がそのことに気付き、腑に落ちるまでに、マイナスの2年間という修行期間が必要だったのでした。


「唯一寝なかったのがこの授業でした」

まだ来週の「ICTメディア演習」(学生50名)が残っているけれど、昨日の「社会起業演習」(学生5名)授業での感想が嬉しかったので、最後にシェアしたいと思います。

自分の中にある考えや夢を整理できました。授業で話したモヤモヤは人前で話すのはほとんど初めてだったのですが、そのことと将来の夢がつながったのは、この講義が自分を見る機会をくれたからだと思います。(4年生)
普通の授業だったら自分で考えないし、大体は寝てしまうけれど、この授業で寝たことはないし、眠くならないことに気づきました。この授業は身近なことを取り上げることが多く、新鮮さはとてもあったと思いました。(3年生)
この授業を通して、自分のことが少しは知ることができたんじゃないかと感じた。あまり言葉にすることがなかった自分の感情を拙い言葉ではあったけれど、外に出すことができてスッキリしたり、他人のモヤモヤしていることなどを聞いて共感したりできたので人として成長できたんじゃないかと思った。(4年生)
人の悩みなどにふれていく中で、自分の中の悩みも知ることができて、新しい発見につなげることができてよかったです。自分の中と向き合うことで、自分の本心にせまることができました。(3年生)

「もう、おまえらあ...!」って抱きしめたくなる感じですね。

といっても自分の中の深い話を勇気を持ってオープンに話してくれる学生の気持ちによって、質が変わっていく授業なので、いい授業になったとすれば、みなさんが本当に素晴らしかったんです。ありがとうございました。

そしてもうひとり、この素直な感想に、マイナスからプラスへ、いよいよ1年目という気持ちを新たにすることができたのでした。

2回生の先生の授業(※注 学生約60名)より、学生とのキョリが近いから楽しかったです。高3の時、先生の授業(※注 オープンキャンパス)を受けて大学を決めましたが、2回の授業で「あれ? こんな先生だったかな?」と少しショックでした。が!今期の授業でまた、先生らしさをみれて良かったです。(4年生)

そう、僕の「らしさ」はいまのこの感じなのだった。

マイナスのときの学生たちには申し訳ない気持ちはいっぱいあるけれど、袖振り合うも多生の縁、いつか何かで困ったときには、いつでも連絡してくれるとうれしいな!

そして来年の授業では初めて最初から最後まで本格的に、空海にヒントを得たソーシャルデザインのフレームワークを応用していくことになります。春休みはしっかりその準備を。うん、はりきるぞい!

はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎