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サバの先住民とKDCAーサバ州最大のお祭り「収穫祭」
何かと略字が多いマレーシアですが、このKDCAも頭文字を略したものです。
カザダン・ドゥスン・カルチャー・アソシエーション
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これがKDCAの正式名称で、カザダン・ドゥスン族の文化施設となっています。
カザダンドゥスンと一口に言っても違いがあります。
写真を見るとわかるように、民族衣装も違うし、住居も違います。
KDCAにはそれぞれの家を再現した施設やお土産屋さん、奥にはトラディッショナルマッサージもあります。
なかなかのお値段ですが、スルタン(王)マッサージというメニューがあって、気になってます。
そして、中央には大きなホールがあり、カザダンドゥスンの一大イベント、カアマタン(収穫祭)では美女コンテストが行われます。
カザダンドゥスンって?
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一括りにされることが多いですが、ドゥスン族、カザダン族は違います。
言葉も似ているものの、違いがあるそうです。
また、KDCAにはムルッ族も含まれているそうです。
ムルッといえば、テノムという山岳に多く住む民族ですが、そのムルッ族とは別に、カザダンドゥスンムルッというくくりの人たちがいるのだそうです。
彼らは農耕民族で、半島のマレーシア人に比べると外見も日本人に似ています。
稲を作り、米を食べ、酒を作る。
カザダンドゥスン族の踊りはイネ踏みのステップで地味なのですが、盆踊りとそう遠くない感じがします。
ただし、楽器はインドネシアのガムランとほぼ同じです。
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KDCAの巨大ワキッド
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ホール正面に行くと目に飛び込んでくるのが、この巨大ワキッド。
収穫祭に行った時に会ったドゥスンのご老人の話では、この大きなワキッドは今では2つしか残っていないそうで、そのうちの1つがここに飾られています。
歴史を知る人も少なくなったと、歴史の本を勧められて買ってきました。
ワキッドとは、背中に背負う竹のカゴです。稲などを狩るのに使われていたものでしょうが、今でもタンパルリなどの市場では普通に売られていますよ。
ちなみにKJSの運動会でもワキッドレースという種目があり、ワキッドを背負い逃げる敵チームにいくつ玉を入れるかを競ってました。
追いかけ玉入れですね。
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ちなみに、KDCAの門を潜ると正面に見えるのがこちら。
豊かに実った稲と水牛です。
ドゥスン族の家がみられる
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今、実際にこのような造りの家です暮らしている人がどの位いるのかは分かりませんが、家々が再現されています。
地域によって作りの違う家がならんでいますが、ここではサバ州西側のものが多いですね。
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地域ごとにケニンガウ、ラナウ、ピナンパンなどの家があります。
サバ州はマレーシアの中の1つの州ですが、その面積は日本の本州と同じくらい。
また、熱帯雨林のジャングルなので、標高も変わってきます。
キナバル山のふもとクンダサンや、ラナウなどの高地の家は窓が閉まります。
夜間は寒いんですよ。
一方、東海岸沿いの家は風通しがよく作られていて、窓どころか壁もない、中には家の中で釣りができるような作りの家もありました。
これらは、サバ州立博物館で見られます。
KDCAでは、通常有料で見ることになりますが、収穫祭のお祭り、カアマタンの時は無料で入ることができます。
カアマタンとは?
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英語だとharvest festival、つまり収穫祭のお祭りです。
サバ州は毎年5月30日、31日にKDCAで大々的におこないます。
マレーシアはイスラム暦、ヒンドゥー暦、中国暦など、それぞれの暦で毎年日にちが変わる祝日ですが、カアマタンは変わらないのです。
ちなみに、
Kotobian Tadau Tagazo Do. Kaamatan
がお祝いの言葉です。
このような形になったのは戦後ではないかと言われていますが、この収穫祭は実は5月の1ヶ月間続くのです。
その最終日が30.31日なのです。
この2日間は、KDCAにある各家でご馳走やお酒が振る舞われたり、ダンスをしていたり。
カアマタンに来る海外からの観光客も多いので、お土産屋さんも出てます。
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どちらかと言うと、自分たちが飲めや歌えやのお祝いをしていて、民族衣装を着た人たちがたくさんいますよ。
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広い駐車場は屋台で埋め尽くされます。
初めて行った時に驚いたのが、豚の丸焼きがあったことでした。
肉まんも豚の形をしているんです。中身はもちろんporkです。
※マレーシアは一応イスラム国家です。
車を停めることろを探すのが一苦労なので、一度grab taxiで行ったことがありました。
ドライバーはムスリムのお兄さんでしたが、カアマタンに行ったことがあるか聞いたところ、
行ってみたいが、豚肉を売ってるから行けないとのこと。
豚を焼いてる煙がモクモクしてますものね。
この時期は皆帰省して、田舎で祝う風習があります。
挨拶回りは絶対のようで、一軒尋ねてはご馳走とお酒を出され、また一軒尋ねてはお酒を飲み、、、で何日もかかることがあるそうですよ。
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また、ロングハウスと呼ばれる家に住んでいた民俗。実際片田舎にいくと今でも見かけますが。
結婚した子どもは隣に部屋を作ってそこで暮らします。そして、その子どもが独立すると更に隣に部屋を作ります。
そうして親族一同で暮らしているので、長い家だと端まで回るのに4日かかることもあるのだとか。
子どもの空手チームがドゥスンのチームだったのでした。
カアマタンの翌週でしたが、館長先生がカアマタンで帰省していてまだ帰ってこられないから今日は休み、ということが本当にありました。
5月になると集落のあちこちでお祭りが開かれます。
イメージ的には地域の盆踊り大会みたいな感じです。
ボボヒザン
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カザダンドゥスンの中で重要な立ち位置にいるのが、ボボヒザンと呼ばれる人たちです。
カザダンドゥスンでは女性のみですが、霊が降りる女性がなれるのだそうです。
精霊のお告げを聞く事ができるボボヒザンは、今でも存在しているんです。
ちなみに、サバ州にある世界遺産の山、キナバル山には精霊がいると信じられており、キナバル山に足を向けて寝ないという話も聞いたことがあります。
2015年、キナバル山で起きた地震の際には、州長が記者会見で「精霊の怒り」と言った事でも有名です。
ボボヒザンは白魔術なども使いますが、携帯電話を持ち、生活はいたって一般的なようです。
ビューティーコンテスト
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カアマタンの目玉がビューティーコンテストです!
各地域のごとにコンテストを勝ち抜いた美女たちが、最終日の2日間KDCAで行われるビューティーコンテストに出場するのです。
1日目は私服、2日目は民族衣装なんだとか。
もちろん美しさだけではありません。
具体的な審査内容は分かりませんが、ドゥスンの友達に聞いた話では、スピーチコンテストもあるそうです。
見た目の美しさだけで競うわけではないってことですね。
たまたま美女達が会場入りするところにはちあわせしました。
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さて、多言語のマレーシア、何語でスピーチするのかというと、英語とドゥスン語です。
プミプトラ制度を敷いてから、マレーシアはマレー語が必須になりました。
ただ、マレーシアに合併する前、長くイギリス領だったこともあり、ムスリムよりクリスチャンが圧倒的に多いことや、家庭の会話が英語という人も多いるんです。
友達の子どもの例をあげると、中華学校に通っています。授業は中国語で行いますが、もちろんマレー語と英語も必須です。
家ではマレー語。
そして、家で親がドゥスン語を教えているのだそうです。
中には、ドゥスン語が話せない人もいます。
家庭の中で継承されていないのです。
では、ドゥスン族同士の日常会話は何語なのかというと、マレー語が多いです。
そんな中でもドゥスン語を受け継いでいくために、ビューティーコンテストは一役かっているように思えます。
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ドゥスンの民族衣装は、黒地に金のスパンコールがついた縁取りが基本です。
袖がある地域、ワンピーススタイルなどそれぞれで、興味深いんですよ。
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一際派手なこちらの民族衣装は、カザダンドゥスンムルッ族のもの。
インドネシアにもいるムルッ族は首狩り族として有名です。
ダンスも穏やかなドゥスンと比べ、竹槍を持ち、派手なパフォーマンスで見応えがあります。
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チャイニーズニューイヤーが終わると、カアマタンが近づいてきます。
ショッピングモールの飾りも、チャイニーズニューイヤーからカアマタン一色に変わり、民族紹介のブースなども出始めます。
5月にサバに行くことがあったら、注意してみてみてくださいね。
民族衣装に興味がある方はぜひこちらもどうぞ。
マレーシア・サバ州の先住民「カザダンドゥスン族」の衣装をレンタルしてみた
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