『他者と働く』を読んで
おはようございます。
自習室2日目、「さとか」です。
本日ご紹介する本はこちら。
読書の目的
組織の急拡大に臨むにあたり、人事として、”これから起きるであろう問題に準備しておくこと”や、いざという時に切れるカードの量(引き出し)を増やしておくことが重要。
ということで、組織論関連の本も引き続き積極的に読んでいきたいなと。
この本に関しては、「分かり合えなさ」から始める組織論というワーディングが、直感で心に響いたというのもあります。組織の構成員は、結局は他人であり、この「分かり合えなさ」を認め合ったところからしか、最強のチームは生まれないと思うので。
要約(抽象化も含む)
❶技術的問題と適応課題
ハーバード・ケネディ・スクールで25年間リーダーシップ論の教鞭をとっているロナルド・ハイフェッツによれば、組織には、「技術的問題」と「適応課題」があるとしています。
(詳しくは図の通り。)
世の中には、様々なノウハウ本が溢れていますが、おそらくそのほとんどが、「技術的問題」解決のための武器についての本でしょう。
・話す技術、聞く技術、伝える技術
・交渉術
・リーダーシップ論
・組織論
・チーム論
これらには、まさに「技術的問題」解決のためのHOWが詰まっています。
しかし、これらは「銀の弾丸」ではないので、そもそも問題の根本が「適応課題」であった場合に、「技術的問題」の解決方法をぶつけても、無意味なんですよね。(これ、結構やってしまっていたかもという反省...)
そして、この「適応課題」に向き合うためには、前提として「お互いに分かり合えていないことを認める」ことが大事で、その上で、”新しい関係を構築するための「対話」が必要であるとしています。
つまり、ベースの関係性が壊れている状態で、1on1しましょうとか、チームビルディング研修しましょう!というのは、手法として全く違ったのかもしれませんね。
本文にも
曖昧な問題をいかに明確な問題に捉え直すか
という言葉がありますが、「適応課題」なのか「技術的問題」なのかも曖昧なままで、進むのは危険だということ。
(明後日の方向に進んでいる可能性があるので)
❷2つの関係性
哲学者のマルティン・ブーバーは、人間同士の関係性を大きく2つに分類しました。
「私とそれ」と「私とあなた」
です。
それぞれの違いは、上記の図をみていただくと、分かりやすいかと思うのですが。
「私とそれ」は人間でありながら、向き合う相手を自分の「道具」のようにとらえる関係性のことなので、奥さんに対して、「お前は専業主婦なんだから、もっとしっかり家のことをやれよ!」というような感じでしょうか。(急にリアルw)
一方で、「私とあなた」の関係とは、相手の存在が代わりが利かないものであるような関係のこと。
芸能人夫婦で例を挙げるなら、ヒロミさんと松本伊代さん夫妻のような感じでしょうか。。
(伊代さんが”家事ができない”ことを度々TVでいじられていますが、ヒロミさんにとって伊代さんは、”家事をする(道具的)な存在”ではなく、”代わりのきかない、かけがえのない存在”なのが分かります。(本当に素敵なご夫婦ですよね...!!!)
今回は、「夫婦関係」を例に出しましたが、対話とは、
権限や立場と関係なく誰にでも、自分の中に相手を見出すこと、相手の中に自分を見出すことで、双方向にお互を受け入れ合っていくこと。
とあります。
そして、この「対話」こそが、適応課題を解いていく鍵になるわけです。
❸適応課題4種類
適応課題は、まさに”人と人、組織と組織の「関係性」の中で生じている問題”ではありますが、”関係性のこじれ”といってもいくつか種類があります。
本書の中では、4つの”関係性のこじれ”について言及されていますが、どれも馴染みのある(?)もので、何かしらの組織に所属する人で、このいずれにも直面したことがないという人はいないのではないでしょうか。
❹ナラティブ
まず、「ナラティヴ(narrative)」とは物語、つまりその語りを生み出す「解釈の枠組み」のことです。
”自分の中でのストーリーはどうなっているのか”ということですね。
また、本書では、
置かれている環境における「一般常識」のようなものなの。
としているのですが、以前、とある上場企業のCEOの方にお話しを聞いた時に、「人事の人は、”一般常識では”と言いすぎる」とおっしゃっていましたが、その話しともリンクするような気がしています。
”一般常識では”という言葉を口にした瞬間に、自分のナラティブに固執し、相手のナラティブは無視してしまっている可能性もあるということなので、気をつけなければ。。
❺対話のプロセス
「お互いのナラティブの溝に向き合い(お互いに分かり合えていないことを認める)」ながら、そこから新しい関係性を構築していくにはどうすれば良いか、その対話のプロセスが描かれています。
具体的には下記の通りです。
1.準備「溝に気づく」
2.観察「溝の向こうを眺める」
3.解釈「溝を渡り橋を設計する」
4.介入「溝に橋を架ける」
ここで、一つ思ったのが、人事の人たちは、
「現場の巻き込みが難しい」
という言葉をよく口にするなと。
これも「人事側のナラティブの中」で生きているからこそ、この言葉が出てくるのではと思うのです。
私の場合、自分自身が現場出身(事業部サイドの経験の方が長い)なので、おそらく、元々相手側(現場)のナラティブを知っているが故に、あまりこの問題に苦しまずにここまできました。
ただ、現場出身でない人事の方であっても、下記のようなプロセスを踏めば、「現場の巻き込みが難しい」という苦しみから開放されるかもしれません。
❻対話を阻む5つの罠に気を付ける
”人と人、組織と組織の「関係性」の中で生じている問題”である「適応課題」に向き合うためには、新しい関係性を構築するための「対話」が欠かせないことは分かりましたが、ここで大事なのが、
対話している”つもり”
状態に陥らないことです。
”つもり”は、思い込みによるコミュニケーションミスを引き起こしますので、なるべく避けたいところ。そのためには、陥りやすい”つもり集”を理解しておく必要がありますね。
上記の5つは、どれもみなさまにとっても「あるある」と頷けるものかと思います。
(私自身、昔は、②押し付けになりがちでしたが、そこを修正したら今度は、①迎合や③馴れ合い、という次の課題が出てきたので、なかなか難しいですね...)
あらかじめ”陥りやすい罠”をわかっておくことで、それを避けるための”意識”を高めておくことが可能です。
自分の意見、Next Action
本書の中でも登場した”ナラティブ”について考えた時、ふとBLEACHのこのシーンを思い出しました。
”お前の護りたいものが”
”私の護りたいものではないのだ”
BLECHでこのシーンを目にしたのは、一体何年前だったか...というくらい前のことのような気がしますが、その時も、かなり衝撃を受けたのを覚えています。既に”組織の難しさ”に直面していたこともあり、”人と人の関係ってそうだよな”と実感が深かったのでしょう。
本書(『他社と働く』)の中でも、
自分のナラティヴに即した正論はほとんど役に立たない
とあるように、それぞれに、それぞれの「正義」があります。
自分のナラティブ内の正義を振りかざしたところで、適応課題の解決にはつながらないのですね。
今後は、曖昧な問題に直面した時に、まずはそれが、「適応課題」なのか「技術的問題」なのか、明確な問題として捉え直すことを冷静に行ったうえで、「適応課題」に対しても感情的にならず、新しい関係構築のための対話のプロセスを丁寧に回していきたいですね!
そして、「自分ができる」ことは当然ながら、これに基づいて、他のメンバーにもアドバイスできるようにしていきたいなと。
これが「組織全体」で意識→行動に移せるようになれば、組織としての強度が増すことは間違いないので、またそちらの進捗については、もう一つのnoteの方でも折を見てご報告できればと思います。