森喜朗さんの炎上に見る、現代社会の最重要課題
まず、前提としてですが、私自身は森喜朗さん(以下、森さん)に対してフラットな立場でこのnoteを書いています。もちろん、それ以外の全ての人に対しても同じです。
まずは森さんの会見の全文書き起こしの中で特に重要な部分を抜粋したのでどうぞ。
------引用------
これはテレビがあるからやりにくいんだが、女性理事を4割というのは、女性がたくさん入っている理事会、理事会は時間がかかります。これもうちの恥を言います。ラグビー協会は倍の時間がかかる。女性がいま5人か。女性は競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、自分もやらなきゃいけないと思うんでしょうね、それでみんな発言されるんです。結局、女性はそういう、あまり私が言うと、これはまた悪口を言ったと書かれるが、必ずしも数で増やす場合は、時間も規制しないとなかなか終わらないと困る。そんなこともあります。
私どもの組織委にも、女性は何人いますか。7人くらいおられるが、みんなわきまえておられる。みんな競技団体のご出身で、国際的に大きな場所を踏んでおられる方ばかり、ですからお話もきちんとした的を射た、そういうご発言されていたばかりです。
出典:日刊スポーツ
------引用おわり------
これをそのまま読む限り、森さんが理事をやっているラグビー協会には女性が5人いて、うちの場合は時間がかかる。その原因は女性は競争意識が高いから。一方でJOCにいる女性(理事?)は経験があるのでそうならない人が多い。と、なります。つまり、全ての女性が話が長いとは言っていません。話が長い人もいるし的を射て簡潔に話す人もいると。少なくとも私はそう読みます。
あえて女性の話をしているのは、女性参画の話題でそういう文脈だからです。女性を批判するため、女性差別をするためにしているわけではないでしょう。それは以下の記事を読めばわかると思います。
もうひとつ重要な記事を引用します。
------引用------
私はこの組織委員会に入ってから、女性の皆さんをできるだけたたえてきましたし、男性よりも余計、女性の皆さんに発言していただけるように絶えず勧めてきました。皆さんはなかなかお手を上げてお話しにならない時がたくさんありましたけれども、あえてお名前まで申し上げて「谷本さんどうですか」とか言ってお誘いをして、女性の皆さんに本当によく話をしていただいたと思っております。
まず冒頭にですね、私がオリンピック、パラリンピック一緒にやるぞということになった以上、ご記憶あろうかと思いますが、ロンドンでのオリンピックの後の優勝者のパレード、その後リオで行われました優勝者のパレード、いずれもオリパラが一体でパレードをやるべきだということを主張いたしまして、従来と違うことなので抵抗もかなりございましたけれども、大成功いたしました。それから各種目においてIOCから示されていた指針である1対1、5対5と言いましょうか、女性と男性の比率をできるだけ同じくしようということで、ほとんどの競技団体にお願いして、ほぼ完璧な仕上がりができたなと思っております。
出典:東京新聞
------引用おわり------
ここに書いてあること、つまり、森さんがJOCにおいてなるべく女性を平等な立場で活動できるように行動してきたこと、が本当であれば森さんが女性蔑視的な考えがあるとは考えにくいです。
仮に発言が女性蔑視であったとしても、実際に女性が活動しやすくなるような行動を取っているのであるかもしれませんが、これは、人当たりは良いが全く病気や怪我の治療ができない医者よりも、口は悪いがブラックジャックのような凄腕の医者の方が良いのと同じです。
森さんが実際にどういう人物なのかは私にはわかりようがありません。そういうときこそ、森さんのこれまでの活動、特に女性参画に関する活動を整理し発信するのがメディア、ジャーナリズムの仕事だと思いますが、残念ながら日本においてはそうではないようです。私がそういう情報にたどり着けていないだけの可能性もあるので、知っている方がいればぜひ教えてください。
また、森さんのことをよく知っている人、「森さんに嫌がらせを受けた」「森さんは女性参画のために動いてくれた」、どちらの立場の人でも良いのでぜひ情報を発信して欲しいですね。
森さんのことをよく知らない人たちが騒いでるだけで、森さんのことを知る上ではそこにはなんの情報的価値もないので。
その結果、やはり森さんは女性蔑視的な思想を持っていて、そういう組織内においても女性蔑視的な行動を取っている、とわかれば完全にアウトです。
でも、アウトだからと言って袋叩きにしていいわけではありませんし、森さんを吊し上げたところで、根本的な問題は解決しません。
森さんを批判している人たちの多くは私と同じで森さんのことをほとんど何も知らないのではないでしょうか。会見を見たわけでもなく、ネット記事の中のたった数行の文だけで判断しているのではないでしょうか。
差別をはじめとする社会の分断を増長する原因の1つはそういった情報リテラシーの低さ、釣られ耐性の低さに起因する行動です(これがこのnoteで私が最も言いたいことです)。
これを読んでいる人の中にも心当たりがある人は少なくないはずです。
そういった行動をとってしまう人が増えているような気がしますが、これは一言で言えば社会に対する不満が増えてきているせいだと思います。ここ10年20年でより多くの人が不満の吐口を求めているような気がします。
これまで女性が社会でいかに抑圧されてきたかを表す出来事だと思います。森さんの(切り取られた)発言がその不満を爆発させる引き金になったわけです。
どうすればその課題を解決できるかは難しい問題ですが、少なくとも森さんを叩き、吊し上げることがこの課題の解決策になりません。
差別も理解不足が1つの原因です。1つの記事を読んでわかることはほんの一部であり、それで全てを理解したと思ってしまう。そういった思い込み、勘違いが差別を冗長することになります。
友人関係、恋人関係、家族関係、仕事関係、およそ人間関係の全てにおいて同じことが言えるでしょう。それが人と人を分断するのです。もしくは、分断したいからそうしている人もいるかもしれません。
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![Hiroaki Kato](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/19084118/profile_ba08d210c697360094501ce509bc8564.jpg?width=600&crop=1:1,smart)