バカの壁を越える方法。
今日(3月7日)にBooks&Appsで公開された記事"AI研究者が発見した、「バカの壁」の正体"がtwitter界隈で話題になってますね。
記事では「AI vs. 教科書が読めない子供達」という本の中で、東ロボくんの研究の副産物として、「教科書が読めていない生徒がかなりの数いるのではないか」ということがわかったことについて言及しています。
今回はこのバカの壁を越える方法を私の経験をもとに書いてみました。基本的には指導者の立場でどうするかということを書いてあります(残念ながらバカの壁は、本人の力だけで越えるのは難しいと思います)。
記事の内容(本の内容)を一部、引用します。
「アミラーゼという酵素はグルコースが繋がってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない」
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢の中から一つ選びなさい。
セルロースは( )と形が違う
1デンプン
2アミラーゼ
3グルコース
4酵素
3/8追記
ツイッターでアンケート作ったので回答してみてください。
正答がわかるでしょうか?
AI研究の副産物としてこの手の問題を解けない、つまり文章を正確に読めてないない生徒がかなりの数いることがわかったらしいです。
長年、小中高生や浪人生、社会人に英語や数学などを教えている私にとっては、この「バカの壁」は今に始まったことではなく昔からわかっていた問題です。
そしてその解決策もある程度わかっています。
読めない理由としては以下のような原因が考えられます。
①長い文章になると主語と述語が把握できない
②情報をコンパクトに整理できてない
③難しそうなワードがあると読めなくなる
④三段論法が理解できてない
①長い文章になると主語と述語が把握できない
次の3つの文章をご覧ください。
「アミラーゼという酵素はグルコースが繋がってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。」
「アミラーゼはデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。」
「アミラーゼはセルロースを分解できない。」
当たり前ですが、3つ目が一番理解しやすいと思います。ですが、ちゃんと読める人は1つ目の文章から3つ目の文章の意味を読み取ることができます。
上記の問題が解けない人でもこの3つ目の文章は容易に理解できる思います。つまり、文章が読めない人は、文章が長くなると読めないということです。
②情報をコンパクトに整理できてない
これは①の結果からわかることですが、読める人は1つ目の文章を3つ目の文章に変換することができています。情報をコンパクトに整理するスキルが高いからです。
読めない人はそれができず、主語や述語の関係が追えなくなっています。形容詞や副詞などの余計な情報をカットできないことが主な原因です。
③難しそうなワードがあると読めなくなる
アミラーゼ、グルコースなどの言葉を聞いたことがない場合、もしくは聞いたことがあるけど難しそうだいう印象を持っていると読めなくなる人が多いです。
そういうワードが出てきた瞬間にシャットダウンしてしまうようです。
これも英語の文章を読んでいると顕著に表れますね。知らない単語が出てきた瞬間に一気に読めなくなる人は多いです。
そういう人は文章を読むときに、単語だけ拾って適当に繋げているだけの可能性が高いです。英語だとモロこれです。
文の構造、特に主語と述語、を把握するという習慣がなくなんとなく読んでるだけです。
これらの問題を改善する方法例としては以下の方法があります。
改善策①:箇条書きで整理する
改善策②:質問する
改善策③:主語と述語を整理する(整理させる)
改善策④:余計な情報をカットして読ませてみる
改善策①:箇条書きで整理する”についてはこんな感じです。
・アミラーゼは酵素である
・アミラーゼはデンプンを分解する
・デンプンはグルコースが繋がってできたものである
・セルロースもグルコースでできている
・デンプンとセルロースは形が違う
・アミラーゼはセルロースを分解できない
これができればこの手の問題は簡単に解けますが、おそらく「バカ」は文章を整理して箇条書きにしてねと言ってもできるようになりません。
なので、指導する場合はこれを基準に適切な発問をする必要があります。例えば以下のような質問を生徒にするといいと思います。
改善策②:質問する
「アミラーゼは酵素、デンプン、グルコースのうちどれだと思う?」
「アミラーゼは何を分解するって書いてある?」
「グルコースでできてるものは何と何?」
こんな感じです。
文章が読めない人の特徴の1つに、「そもそも疑問を持つ習慣がない」というものもあります。この質問はそれを改善する方法です。
質問することで生徒はなんとなく「ああ、そういうところに注目すればいいのね」ということがわかってきます。
慣れてきたら、「この文章を読んで何か気になることはあった?」と疑問に思ったことを尋ねてみるというのも効果的です。
改善策③:主語と述語を整理する(整理させる)
主語と述語がわかれば文章はだいたい読めるんですが、そのためにはその主語と述語がなんなのかを把握できないといけません。自力で把握できないから読めないので、主語と述語を把握する一歩手前まで連れて行かないといけません。
そのためには例えば、「セルロースを分解できないものは何か?」と聞けばいいと思います。
こう聞けばそれが何か一生懸命考えますからね。それが分かれば、次はこうです。
「アミラーゼはセルロースを分解できないのはわかった。」
「じゃあ、グルコースからできているものは何と何?」
この問題を解くために、というよりも「文章を読むときはこういうことを考えながら読むんだよ」ということを理解してもらうためには、こういう質問をするのが有効です。
これがわかれば、上記の箇条書きのリストが作れるようになります(一部はまだですが)。
・デンプンはグルコースからできている
・セルロースもグルコースからできている
改善策④:余計な情報をカットして読ませてみる
文章が読めない人は情報が多すぎるので読めなくなっているので、余計な情報をカットしてみましょう。
「アミラーゼという酵素はグルコースが繋がってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。」
「アミラーゼはデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。」
「アミラーゼはセルロースを分解できない。」
この例はすでに書いたものですが、生徒が1つ目の文章の意図がわからない場合は、2つ目や3つ目のように情報をカットした文章を読ませるといいです。カットの仕方は上記だけではなく他にもいくつかあると思います。
これらの文章を比較することで、「アミラーゼ」と「という酵素」や「グルコースが繋がってできた」と「デンプン」の関係性が見えてきます。
「形容詞とは何か」とか「副詞とは何か」を教え始めると余計に混乱するのでできるだけ避けたほうがいいですね。
改善策番外編
最後に番外編を。
文章だとわかりにくい人が多いんですが、絵で書くとわかりやすくなる人がいます。例えばこんな感じ。
図が汚いのはお許しください。
この図を見せながら「グルコースでできてるけど、形が違うのはどれとどれ?」と聞くとたぶんわかってくれるはずです。
ただし、文章のどこの部分が図のどの部分を表しているのかをちゃんと理解させておかないといけません。そうじゃないと、この図の意味はわかっても読解力は上がりませんからね。