「地頭の良し悪し」は存在するが、それでも努力のほうが重要という話

個別指導で20年近く、数百人を指導(主に数学)してきた立場から「地頭」について自分なりにまとめてみました。うまくまとめられていないところ、説明足らずのところもあるかと思います。質問等あればコメント欄にお願いします。

地頭の良し悪しは存在する

私は「地頭の良し悪し」は存在すると考えています。勉強を教えていればすぐにわかりますが、明らかに理解力には個人差があります。それが地頭の良し悪しによるものなのか、努力によるものなのかがわかりにくいので、度々この議論が起こるんだと思います。

その差は小学校低学年の時点ですでに現れます。小学校2年生で掛け算の九九を覚えさせられますが、すぐに覚える人もいれば7の段をいつまでも覚えられない人もいます。地頭の良し悪しは存在せずみな同じだとするとこの差は説明できません。何かわからないけれど、何かしら個人差があると考えるのが自然だと思います。

地頭の良し悪しとは何か?

「地頭の良し悪し」を定義するのは難しいですが、私は以下のように考えています。

・何かを理解し再現できるようになるまでのトレーニングにどのくらい時間を要するか
・「地頭の良し悪し」そのものを測定することは不可能だと思われる
・が、それを把握することはできる

要は、ある知識やスキルを身につけるのにかかる時間が少ないほど「地頭が良い」ということです。ここではあくまでも知的活動に関するものを中心に考えます。知的活動とは何か、も別途議論する必要があるかもしれませんがここでは置いておきます。

地頭の良し悪しを把握するための要素

・記憶力
・理解力
・論理的思考力
・洞察力
・推理力
・応用力
・空間把握能力
・想像力
・言語化力
・抽象化/具体化力

・各能力は他の能力と重なる部分があるかも
・各能力は全て後天的に身につける、強化できるもの
・他にもあるかも

以下、それぞれの能力を簡単に説明します。

記憶力
・定量化可能
・単位時間あたりに覚えられる英単語の数が多ければ学習に有利になる

理解力
・定量化可能
・同じ問題を解説して、類題を解けるようになるまでにかかる時間で測定できる

論理的思考力
・定量化は難しい
・物事を論理的に考えることができる能力
・例えば、場合の数を考える時にアルファベット順や昇順/降順に整理できる、あるいはそうのように整理するメリットをすぐに理解できる
・読解力にも影響する要素
・コナンくん的な能力

洞察力
・定量化は難しい
・文章、あるいは状況、環境から情報を引き出す力
・コナンくん的な能力

推理力
・定量化は難しい
・与えられた情報から、あり得る選択肢を増やすあるいは減らす力。また、あり得る可能性に優劣をつける力。
・コナンくん的な能力

応用力
・定量化は難しい
・身につけた知識やスキルを他の物事に結びつけることで理解しやすくする力。また、それらを他の物事に転用し問題を解決する力。

空間把握能力
・定量化は難しい
・図形やある物体の構造などを空間的に把握、理解する能力
・図形の問題を理解したり解くのに使う
・サッカーなどのスポーツの上手さにも影響する

想像力
・定量化は難しい
・ある状況や設定などを具体的に考え整理する能力
・洞察力、推理力と合わせて使われることも多そう

言語力
・定量化は難しい
・ある物事を言語化する能力、あるいはその逆の能力
・数学の文章題を読んで立式する、あるいはその逆のときに使う

具体化力/抽象化
・定量化は難しい
・抽象的なものを具体的なものに例える力とその逆の力
・文字係数を含む方程式や不等式、関数の問題を考える時に使う

頭の良し悪しはこれらの能力そのものをトレーニングする、あるいはこれらの能力を使って何かのトレーニングをする時にかかるバフみたいなもので、×0.5とか×1.5の人もいれば×10みたいな人もいるかもしれない。

他の言葉で例えるなら、「しあわせタマゴ」を持ってるポケモンみたいな状態です。1.5倍の経験値がもらえる、みたいな。

ほとんどの人にとっては地頭の良さよりも努力の方が重要


・いくら頭が良くても1秒も勉強をしなければ、頭は悪くても努力してる人には勝てない
・・極端な例だけど、生まれてから一度も数学的なものに触れたことがない人(例えばジャングルで動物に育てられた人とか)はほとんどの小学生に算数のテストの点数で勝てない
・未来において獲得している能力は確率密度関数的に決定される

一定時間内に獲得できる能力=努力した時間×地頭の良し悪し×トレーニング効率

例えば、地頭の良し悪しが1.0の人Aと1.2の人Bが数学のテスト勉強をする場合、AがBに勝つにはBの1.2倍より多くの勉強をすれば良い(トレーニング効率は等しいものとする)

A:13×1.0=13
B:10×1.2=12
A>B

指導経験上、ほとんどの人の「頭の良し悪し」の数値は0.5~1.5くらいの間にあるように思われる。稀に極端に低い、あるいは高い人もいる。自分が観測しているのはあくまで数学などのいわゆる学校の勉強に関するものだけだが。

「どれだけ努力できるか」も、頭の良し悪しの影響を受ける

・数学は解ければ楽しいが、解けないと楽しくない
・頭の良い人は頭の悪い人に比べて数学を楽しいと思える回数や時間が多くなる
・楽しければそれに費やす時間は増える
・このへんはいわゆる脳の「報酬系」に関係すると思われる
・良い感じに「報酬系」を育てられれば努力できる人間になれるかも

それでも努力の方が重要

・時間は有限だが、ほとんどの人は可処分時間の半分も努力のために使っていないはず
・同じような能力の人に勝つにはその人より多くの努力をすればいいし、ほとんどの場合そのための時間は十分にあるはず
・なので自分の頭の良し悪しを考える時間があるなら努力するために時間を使った方が良い
・勉強でもスポーツでもゲームでもやればやるほど上達するし、やらなければ何も変わらない

効率は後回し

・何かを勉強するときに最初から効率の良い方法で勉強するのは不可能
・効率を上げるには効果を上げるか、時間を減らすしかない
・効果的な勉強をするには経験が必要
・・似たような問題を比較して勉強する、など
・同じ効果で時間を減らすにも経験が必要
・・ぱっと見でわかる問題は省く、など
・「経験」をサポートできる指導者がいることは重要だが、生徒自身の「経験」が特に重要
・経験しなければ自分事にならないから
・以上より、最初から効率を求めるのは不可能(特に独学の場合)
・同じ人間が、同じ時間内で2倍の英単語を覚える方法はないが、覚える時間を2倍にすれば2倍の数覚えられる
・なので、最初のうちは可能な限り時間を使って勉強すべき

限界まで時間を使ったら効率を上げることを考える
・ある程度経験を積んだら勉強方法を改善していくと良い
・例えば、大学受験生が受験勉強スタートして1日10時間勉強し始めたとする
・それを1か月続けたあとで勉強方法を改善するのは有効

ゲームでも同じで、ほとんどのゲームはTimeToWinである
・ほとんどのゲームにおいて、10時間しかプレイしてない人は1000時間プレイしている人にほぼ100%勝てない
・運の要素もあるがそれをある程度コントロールすることもできるし、それはやはり努力によるものである

努力できる才能は後天的なもの?

・これも「地頭の良し悪し」と同じで、バフがかかってると思われる
・例えば、小さい頃から何かに熱中して集中したら何時間でもそれをやっている人がいる
・こういう人は興味を持ったことに時間を使うことを努力とは思わない(苦痛と感じない)どころか、喜びと感じる
・親の影響もあるかもしれない(子供に対して常に肯定的かどうか、とか)
・そのままその道のプロになる人もいる
・藤井聡太とか
・そういう人は人生の早い時期にそういうものに出会っただけかもしれない
・人生のどの時期にそういうものに出会うかは誰にもわからない
・だからこそ、いろんなことを経験してみるのは重要
・親だったら子供にいろんなことを経験させてあげるのは重要だと思われる
・熱中しているものがあるなら、それをサポートしたり自由にやらせてあげることも重要だと思われる(これらは後天的なものである)

努力では越えられない壁

・この壁は存在するかもしれないが、それを議論できるレベルに達する人はほとんどいない
・人生のほとんどの時間を費やしてもなお壁にぶつかったときに考えればよい
・それ以外の壁は言い訳である

「頭が悪い」という呪い

・親が自分の子供に、教員が生徒に言う「お前は頭が悪いから」という言葉は、事実かもしれないがそれ以外の部分に呪いをかけている
・それはやる気である
・上述のようにアウトプットは頭の良し悪しよりも努力(費やした時間)の影響の方が大きい
・「頭が悪い」と言う言葉は努力するやる気を奪う強力な呪いである

結果を出している人はそれだけの努力をしている

・例えば東大に受かった人に「地頭が良いから」と言う人がいるが、東大に受かった人のほとんどはそのような妬みを持つ人よりはるかに努力している
・ほとんど人には彼らの努力は見えない
・努力したことがある人はわかるのでそんなことは言わない
・エンゼルスの大谷選手は確かに天才かもしれないが、それにふさわしい努力をしている
・ウェイトトレーニングをしてメジャーリーグで戦える体を作ったがそれは、才能とは無関係である(体格が恵まれているのは確かだが、努力しなければ現在の大谷はいないはず)
・プロスポーツ選手の中にも、少年時代は期待されていなかったが努力してプロになった人もたくさんいる(男子サッカー日本代表の長友とか元代表の中澤とか)
・メッシみたいなのは極端な外れ値なので考えてもしょうがない(4~5歳くらいのプレイ映像をみるとすでにメッシであることがわかる)

だからこそ自分は「頭の良し悪しは存在する」と言うことにしている

・すでに書いてきたように頭の良し悪しは確かにあるが、ほとんどの場合努力でカバーできる
・頭の悪い人は自分でもそう思っているので、「君は頭悪くないよ」と言う言葉は慰めのために言っていると理解しているし、その分余計にイラつく
・自分の能力を認めた上で努力することの重要さを経験した方が良い
・なので、自分は「頭の良し悪し」は存在すると言うことにしてます
・生徒にわざわざ「お前は頭が悪い」と言うことはないし、その必要はないけど
・言うとしたら「頭の良し悪しは確かにあるけど、そんなことよりもやるかやらないかの方が重要」

まとめ

・頭の良し悪しは存在するが努力することの方が重要
・人生はTimeToWinである
・使える時間は有限である


初めましてヒロです。勉強プロデューサー/コーチ:Lv50。無人島:Lv2。サバイバル:Lv2。YouTuber:Lv1。ブログ:Lv3。Twitter:Lv5。Note:Lv2。Lvは全て自称です。