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記憶に残る仕事
写真の歴史に触れる
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20年以上写真に関わる仕事をしてきましたが、その中でも記憶に残るお仕事でした。
「実家の蔵を片付けていたら古い写真が出てきたけどネガの状態で見ることができないのでプリントしてもらえますか?」
そんなご依頼をもらったのは今から15年ほど前のこと。出てきたネガを送ってもらったら、古い6×4.5版のネガフィルムに加えて4枚の写真乾板が入ってました。
写真乾板とは?
現在は写真=デジタルが主流ですが、私が写真をはじめた頃は「フィルム」が主流でした。これは透明なプラスチックのフィルムに感材と呼ばれる光に反応する薬剤を塗ったものですが、さらにそれより前の時代にはプラスチックフィルムではなく透明なガラス板に薬剤を塗った「乾板」が使われていました。
久しぶりの暗室作業
私自身、知識としては知っていましたが、実物の乾板を手に取ったのはこれが初めての経験でした。送られてきた乾板を見ると細かい汚れやカビが付着していたため、フィルムクリーナーを使ってできる範囲で綺麗にし、自宅の浴室を臨時の暗室に改造して久しぶりの暗室作業です。
プリントをしてみて現像液の中で浮かび上がった写真は、ご依頼を頂いた方のご先祖にあたる方のポートレイトや集合写真などでした。
送られてきたネガと一緒に保管されていた陸軍の軍歌が載った歌集や、写っている背景などから考えると、おそらく昭和初期にどこかの写真館で撮影されたもの。当時の撮影技術や撮影機材に思いを馳せつつ、他のネガの写真も含め数10枚ほどのプリントをしましたが、写真の歴史や日本の歴史にも触れたようで記憶に残る仕事となりました。
今になって思えば、こんな貴重な体験は作業を進める様子も自分自身でしっかり記録しておけば良かったと思いますが、その当時はとにかく貴重な乾板を傷つけないように必死で、そこまで考えが及ばなかったことが惜しまれます。
ご依頼を頂いた方からは、あれから毎年お盆の時期に親族一同でこの写真を眺めながら色々な昔話をしていると聞きました。
そんなこともあり、毎年お盆の時期になると思い出す、記憶に残る仕事になりました。