ルシファーさんの習い事ｰジム編ｰ

　悪魔のルシファーさんは最近、下界のことに興味津々。
人の願いを叶えて魂を食らうことに少し飽き飽きしていた頃、一枚の広告を見つけました。

「一緒に筋肉を鍛えませんか」

　スポーツジムの広告です。
写真にはにこやかな笑顔のマッチョなお兄さん達が写っています。
ルシファーさんの目にはそのマッチョなお兄さん達がキラキラと映りました。

「たのもー！！！」

　ルシファーさんはジムの扉を叩きます。
中には筋トレをするマッチョがたくさん。
受付のお姉さんに連れられ、お試しのパーソナルトレーニングを受けてみることにしました。

「ルシファーさん、なかなか筋がいいですよ！このまま次いってみましょうか！」

トレーナーさんに言われるがまま、さまざまなトレーニングに挑戦していきます

（私も、あんなムキムキに…！）

「さぁ今度はダンベルやってみましょうか！10回2セット、いってみましょう！」

「1……2……3……」

　回数を数えながらダンベルを持ち上げます。
トレーナーさんはニコニコとサポートに入ります。
おや？回数が割り増しされているようです。
ルシファーさんはプルプルしながら「この人間が…！！」と根性でダンベルを上げ下げしていました。

「ルシファーさん、お疲れ様でした！今日はここまでです！栄養補給のプロテイン、飲んでおきましょうか！」

　トレーナーさんに差し出されたチョコレート味のプロテインを受け取り、飲み干すルシファーさん。
途中あんなにも憎たらしく思えたトレーニングが嘘のような気持ちの良さでした。
全身がプルプルするほど疲れているはずなのに、体も心も軽く、清々しい気持ちです。
それはいつもの人間の魂を食らう瞬間よりも気持ちが良く、爽やかで心地いい時間でした。

「また来る…」

そう呟くとトレーナーのお兄さんは元気よく「ありがとうございましたー！！！」と返してくれました。

　清々しい気持ちで外に出るルシファーさん。
人の魂を食べること以外に楽しさを見出してしまったルシファーさんは、今度はどんな習い事をするのでしょうか。
それはまた別のお話。