ペストマスクさんの1日
ペストマスクさんはお医者さんで、研究者。
彼は研究、診察、治療と毎日大忙し。
今日もいつものように朝から調薬のお仕事のようです。
ゴリゴリ……ゴリゴリ……
「あぁ忙しい忙しい」
薬草を飲みやすいように小さく小さく潰していきます。
「マンドラゴラの葉に、眠り虫の羽、ラベンダー、夜光石の粉を少々…」
彼特製の薬は多くの患者を助ける魔法の薬。在庫を欠かさないように毎日新しく作ります。
今作ってるのは不眠症に効く薬。ストレス社会には欠かせない、大切な薬です。
他にも風邪薬はもちろん、火傷を痕も残さず治す薬なんかも彼の得意な薬の一つ。
「ふぅ…」
薬作りがひと段落した様です。次は研究中の万能薬の経過観察。
万能薬は医者、研究者、魔法使いの永遠のテーマ。
実験は欠かせません。
「むむぅ……まだあの成分が足りてないようですね」
ペストマスクさんは試験管と睨めっこ。
何か足りない成分を発見したようです。
ペストマスクさんは後ろの小瓶の中から、青く光る鉱石を試験管に移し、また眺めます。
後ろにはアルコールランプで熱されたまた別の薬品が。
こちらもよくよく観察しなければなりません。
「むっ!もうこんな時間ですか!!」
時計を見るなり、トランクを持って駆け出すペストマスクさん。
まってまって、火の始末を忘れてますよ。
「いけないいけない、これで前回研究所を燃やしていました」
丁寧に火の始末をしてから、改めて駆け出します。
午後は診療所で診察のお仕事。
病院にはいつも沢山の患者さんが先生の診察を待っています。
「ドラキュラさん、貧血ですね。血液パック出しておきますから、ちゃんと呑んでくださいね。」
「ドラゴンさん、また龍さんの真似して無茶な飛行しましたね?翼に塗るお薬出しておきますから、1日2回、朝と夜塗ってくださいね!あと1週間は安静!」
「チャーチグリムさん、夜更かしはダメって言ったでしょ、お仕事以外の日はちゃんと夜寝て下さい、お薬出しておきますからね」
「泣き女さん、またそんなに泣いちゃったの。目擦っちゃダメですよ。涙軽減できるようにハーブティ出しておきますね、あと瞼用に軟膏出しておくから塗ってくださいね」
気づけばもう診察終了時刻。
お手伝いさんに言われ肩の力を抜く。
「今日の患者さんも大変そうな方々ばかりでしたねぇ……」
診察を終えたペストマスクさん。今日最後のお仕事はカフェで所属する魔法医学学会への報告書作成。
お気に入りの羽ペンで、報告書を書いていきます。
秘密の報告書ですから、インクも特別製。透明トカゲのエキスを元に作ったインビジブルインクです。
報告書を書き終え、内容を確認し、フッと息をかけると瞬く間に黒かったインクが透明になっていきました。
これで誰が見ても真っ白な紙のまま。黒く戻すには学会にある特別な魔法薬が必要です。
インクも魔法薬もペストマスクさん特製アイテム。実はとってもすごい人なんですよ。
封蝋をして、遣い鴉の脚に手紙を括り付ける。後は鴉にお任せです。
「先生、お疲れ様です。これは責任持って届けますからね」
鴉はそう言うとバサッバサッと飛んでいきました。
「今日も疲れましたねぇ。」
ペストマスクさんの忙しい1日も今日はこれでおしまい。
お家へ帰って、お気に入りのお酒を嗜みながら、ゆっくり時間を過ごします。
「それではおやすみなさい」
明日もペストマスクさんは大忙しですが、それはまた別のお話。