小説版『アヤカシバナシ』母が見た者
居間で母と一緒に珈琲を飲みながら
テレビを見ていた中学生の私。
母親が突然目を抑えて『目が痛い!』と苦しみ、本当にボタボタダラダラと涙を流し始めました。
滝のようにとはまさにこのことと言うくらいに。
どうしようもない私は救急車呼ぶか否かを聞くしかなかった。
母は『そういうんじゃ・・・ないから・・・
眩しくて目が潰れそうに痛かった・・・だけ・・・』と言うと、タオルで目を抑えながら呼吸を整えた。目が開くようになったのでボソボソと話し始めた。
『さっきね、あんたの後ろに女の人が立っててね、
それに気づいたら突然凄い光だして・・・それで目が・・・』
『誰も居ないし光ったのも私は見えてないから・・・そっち系?』
『あ、似顔絵かいてよ、説明するから』
『う、うんいいけど』
『目は細めで・・・そうそうそんな・・・髪は真ん中分けで長いの、で、着物着てて・・・そうそう・・・』
と説明を受けて描きあがった絵を母親はそっくりだ、まさにこの顔、この人そのものだというのです。
さすがにプロの警察の似顔絵職人でもそこまではないと思ったが、どうしても譲らないので、父親が何か知っているか帰ったら聞いてみることに。
数時間して父親が帰ってきた。
話を説明し、私が描いた似顔絵を見せた。
『この人らしいんだけど・・・』
『は?なんで知ってる?』
『え?』
父親は神主をしており、とある神社から絵を貰って来たそうで、風呂敷をほどいて見せた・・・
『この方だろ、神様だよ』
そこには【天照大神】が描かれており、私が描いた母の見た女性とほぼ同一人物と言ってもいいほど似ていた。
母があの時神様を見たのか、私が何かに乗り移られて神を描いたのか、はたまた父親が持って来た絵に何かがあって、先に母の目の前に現れたのか、全く見当もつかない出来事です。
単なる偶然の連鎖かもしれませんけど、違う意味でゾッとしたのを覚えています。