小説版『アヤカシバナシ』親友
これは、鈴木(仮名)先輩が経験したと言う話です。
出張先で、仲の良い幸平(仮名)から携帯に着信があった。
幸平と仲は良いものの、いつも時間を共にしている訳でもなく、
高校時代の親友、疎遠ではないがあまり今は会っていない…
そんな感じだったと言う。
『おう、幸平久しぶり!どうした?』
『・・・・』
『もしもし?』
『パチ・・・パチ・・・』
『え?何?』ブツッ・・・ツーツーツー・・・・
『幸平・・・何だったんだろう・・・』
時間も遅かったし、混線とか色々あるだろう・・・
それよりも疲れが先に出ていた先輩はホテルのベッドで眠りについた。
先輩はあまり人付き合いをしないので、友人では幸平にしか携帯電話の
番号を教えていなかったので、その出来事を帰宅して知ることになる。
地元に戻った先輩は気になって、幸平に何度も電話をしたがつながらなかった。
現在使われておりません・・・が聞こえてくるだけ。
特に気にも留めず、直接幸平の家に遊びがてらいく事にした。
【ピンポン!!!!】
こんなに鳴らなくてもいいだろう!というくらい大きなチャイムが鳴った。
恐る恐る幸平の母親が出てきた。
『あ!鈴木くんじゃない!元気だった?』
『どうも、すみません顔出さなくて、幸平いる?』
『やっぱり・・・知らないんだね・・・』
そう言うと幸平の母親が大粒の涙を流した。
『あんなに仲良しだった鈴木君の姿が見えなくてね、
来て欲しいなぁ、喧嘩でもしたのかなって…ね…心配してたのよ』
『あの・・・なにかあったんですか?』
『幸平…事故で死んだのよ』
『ええ!????嘘でしょ???いつですか???』
『〇月〇日、バイクでね・・・』
『俺、長期の出張で出てたんですよ・・・あ、でもその日なら
幸平から俺、電話貰ってますよホラ・・・
ちょっと出たけど電波悪くて話せなかったんですけど…』
そう言って着信履歴を幸平の母親に見せる鈴木先輩。
『鈴木君、この日は火葬場で・・・その・・・
そっか、幸平が呼んだのね・・・。』
『え、だって、え!?あ!!!』
とっさにあのパチパチと言う音は焼ける音と気が付いた鈴木先輩。
焼却炉からかけてきたとでも言うのだろうか。
『お線香あげてあげてくれる?』
『あ、はい、もちろんです』
衝撃もあったけど少し怖さもあって、涙が出なかった鈴木先輩。
幸平の家に上がり、お線香をあげ、母親と少し話をして帰ることに。
『それでは・・・』
頭を下げる鈴木先輩に幸平の母親が一言。
『鈴木君、家の呼び鈴ね、壊れてから何年もそのままなの、
電池入れてないのよ、あんな大きな音出して・・・
幸平は嬉しかったのね、また来てね・・・』
鈴木先輩はそれを聞いて爆発するように涙が溢れ、
声をあげて玄関で泣いたそうです。