小説版『アヤカシバナシ』ケアン
雑誌編集の仕事をしていた時の話です。
ラフやカンプを担当しているので、本人が欲しい画像を写してもらう方が早い・・・を、理由に同行することが多かった。
この日はカメラマンと記事担当、そして編集である私の3人で、とある山へと向かった。
まぁよくあるディスカバリー系の特集なので、ロケーション重視の撮影となった。
登山と言う程でもないけれど、1から徒歩ならなかなかキツい登山道。
中腹までは車で行けて、そこから徒歩となった。
まぁまぁ急な角度なので短距離でも無言になるほどしんどい。
やっと到着して早速ロケーションの確認をする私。
『ふわぁ~』・・ガラガラッ・・・
と後ろから聞こえてきたと思ったら私の足元に石が転がってきた。
『何か蹴った?』と聞くと、記事担当のスタッフは『ん?あぁ、なんか石が積み上げてあったから邪魔なので手でどかした』
と言った・・・・。
『それってケアンじゃないの?』
※ケアンとは
ケアンはいくつかの目的のために構築される。埋葬場所の特徴付け及び慰霊山の頂上を特徴付けること、特定のルートを示す道標
『ケアンって・・・誰か死んだときの墓標みたいな?だとしてもこんなところに無いでしょ』
『死だけじゃなくって、何か思いがあって積み上げたかもよ・・・』
『なら安心じゃん、幽霊とか来ないでしょ』
あまりにあっけらかんとした記事担当の態度に私も『そうか、そうだね』となんとなく押し切られてしまった。
翌日、その記事担当から上司へ、事故って右手首を骨折したと連絡が入った。
これは偶然なのだろうかそれとも・・・・。