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teamZERO ひとつの区切り

この日の狩りはパイロンオーと如月の2人だった。

『如月様!お誕生日おめでとうございます!』1月25日は如月の誕生日、長い狩猟生活ですっかり誕生日を忘れていた如月、これは毎度のことだが決まってチームの仲間にそれを教えられる。

『あぁもう一年駆け抜けたのか・・・』

『今日は如月様の行きたいクエストに付いて行きます!』

大体一発目の狩りは良い結果が出るジンクスを感じている如月は、ゆっくりとカウンター席に座るとパイロンオーの奢りである最高級の食事をガツガツと一気に食べ始めた。肉に食らいつき、口の中のものをスープで流し込み、パンを口に押し込むと、更に肉を詰め込みその口で『じゃぁビラボレアジュをぶんにゃぐりにいごー』と言った。

不思議なことにそれを聞き返すこともなく『おお!ミラボー!』と喜ぶパイロンオー・・・これが付き合いの長さからくるものなのかは不明だ。

『ところで背負ってるスラッシュアックスで行くのです?』

『あぁ、全然使えないけど』

『わかりました!』

あの強敵相手に使えないスラッシュアックスを担ぐ勇気は認めたいところだが、勇気だけでどうにかなる相手ではない・・・それはパイロンオーも十分すぎるほどわかっている、チームで挑み続けて何度も退けられている相手だ、しかもみんな手慣れた相棒と呼べる武器を手にしての話、なぜ如月はここで練習もろくにせず旧型スラッシュアックスの記憶しかないのに担いでくるのか・・・バカかお前は・・・と言いたい、言いたくて仕方がない、言葉には出さないモノの如月の顔面1cmまで顔を近づけて睨みつけるその顔は十分の百倍物語っていた。

『わかる、わかるよパイロンオー、いいから任せなさい』

『わからないけどわかりました』

精いっぱいのパイロンオーの反抗だった。

現地に赴くと早速ミラボレアスが我が物顔で塔のてっぺんを陣取っていた。その生意気なトグロ姿に何度イラつかされたことか。

地上に降り立つとパイロンオーは姿を隠して砲台へ向かい、如月はクラッチクローでミラボレアスの上腕にしがみつき、背負った巨大な斧で胸に一撃をかました、そのまま傷口を片腕一本で突き刺さったスラッシュアックスの柄をグリリと捻じり、傷口を広げた・・・何と言う強靭な如月の筋肉。上腕に足をかけて踏ん張り、飛びあがる勢いで斧を傷から抜くと、そのまま空中で一回転して地面に着地した。如月の行動は凄まじいのだが、ミラボレアスにとっては蚊の一刺し程度の事、そんなことは承知の上、お構いなしにソードモードへとフォルムチェンジしたスラッシュアックスで斬れるところを斬りまくる。イラついたように如月を狙って火炎弾を吐き出そうと大きく息を吸い込んだミラボレアス、その一瞬の隙をついて隠れて砲弾を装填していたパイロンオーが一気にその弾を吐き出させる。パイロンオーの相棒のアイルー、「大佐」が1台を担当し、もう1台はパイロンオーが担当した、砲弾数は10発、その全弾が胸に命中し、白目をむいてミラボレアスが失神した。如月の相棒アイルー「正宗」が声をかける!『爆破でござるニャ!』パイロンオーと如月はミラボレアスの頭付近に巨大な樽型の爆弾を4つセットした。パイロンオーがガンランスを構えて如月を見る、クラッチクローを構えて如月はマフィアのボスが殺せと命じる時のように口元で『キッ』と音を発した、その瞬間パイロンオーは龍撃砲のトリガーを引いた。ガンランスの先に光が灯る、その光は大きくなり、まるで周囲の光を吸収するかのように見えた。

【ガオオオオン!】

竜撃砲の発動と共に引火した爆弾4つが大爆発を起こした。光で前が見えず、爆発音で耳がふさがれたが、如月は感覚だけでクラッチクローを放った、如月が勢いよく地面から飛び出してミラボレアスの頭に引き寄せられた。その反動で頭を強く打ち、軽く眩暈がしたがスリンガーを反射的にミラボレアスの顔面に全弾打ち込んだ。驚きとその最新型狩猟補助武器の威力によりミラボレアスの身体が完全に流されて壁に激突!フラフラしているミラボレアスの頭目掛けて飛び込んだパイロンオーはガンランスの弾丸を空中で全弾ぶち込む大技を魅せた、更に怯むミラボレアスの頭にもう一度しがみついた如月は最大に溜まったスラッシュアックスソードモードの属性エネルギーをその角目掛けて一気に解放した!

【ダンダンダンダンダンッバリバリバリボゴォオオオオオ】

その戦いは時間にして20分程だった、準備が完了した撃龍槍がミラボレアスを貫き、倒れたミラボレアスの角目掛けて如月が狂ったように斧を振り回して何度もぶち当てた、ヒビが入ったのを見逃さなかったパイロンオーはガンランスの先をヒビに押し当て密着状態で龍撃砲を解き放った!ノックバックで壁に叩きつけられるパイロンオー、しかし悲鳴を上げたのはミラボレアスの方だった、その衝撃で首を持ち上げたミラボレアスの頭上から角の破片がドカドカと降り注いできた。撃龍槍の設置台から叫び声をあげながら走り込み、高く飛び上がった如月は残ったもう一本の角に対し、斧のフルスイングを叩き込んだ!

【バカーーーーーーン!】

音を立てて砕け散ったミラボレアスの2本の角。

残り時間4分と言うところでその瞬間が訪れた。

何が決め手だったのかわからない程の追い込みの中、ミラボレアスがついに倒れたのだった・・・

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『やっとこいつの倒れる姿が見れましたね如月様』

『長ったな・・・でも・・・』

『ええ、終わりじゃない・・・ですよね』

『あぁ、こいつはチームで沈めなきゃ意味がねぇ気がするんだ』

『私もそう思ってしまい、申し訳ございません』

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集会所に戻ると、アラゴノレンが到着していた。

『倒したんだって!?流石のお2人さん!おめでとうございます!ええええ?如月さんスラッシュアックスで行ったの?』

『あぁ、属性とかめんどくさくなってチカラで押そうと思ってさ、その証拠にこれ、毒属性だから』

『どどどどど毒ぅ???』2人がその型破りなスタイルに驚いた。

『いや、言われてみれば我々は属性や効率にとらわれ過ぎていたのかもしれませんね・・・それもアリで申し訳ございません。』

『とにかく討伐おめでとう!お2人さん!』

『ありがとう!でもチームで倒したくて申し訳ございません、今日は如月様の誕生日祝い狩り狩りなので、如月様の行きたいクエストで回します』

『お!おめでとう如月!』

『おっ!ありがとう!アラゴさん』

『じゃぁミラボレアスのクエスト貼ったから行くぞ!ほら!鉄は熱いうちに触れてって言うじゃないか』

『あの、アラゴノレン様・・・今日は如月様のお誕生日・・・で・・・その如月様の行きたいクエストを・・・その・・・熱い鉄も触ってしまっては・・・火傷してしまうのでもうしわけぇ・・・ございません・・・』

『どうしたよ!最高級の飯奢るから座れよ2人とも』

『ごちでーす』『ごちでーす』

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