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マインドガンタレット

鐘縞 孔明

「ここが……」
 私がここを訪れた理由……それはある人を殺してほしいから。
 ここには、とても恐ろしい殺し屋がいるという噂が流れている。
 築60年は経っているであろう、オンボロビル。
 この中に私の求めている人がいる。
 そう、私の父を殺してくれる人が……


 5階建てのビル、エントランスに入るとすぐに、エレベーターがある。
「このエレベーターかなりボロボロだけど大丈夫よね……」
 1、2、3、4、5、R、
 ここの屋上に……
 私が屋上のボタンを押すと、エレベーターのドアが閉まり、上の階へと登って行った。
 ガタゴトと嫌な音を立てながら、屋上に到着した。
 チン!
 まさしく古いエレベーターの音。そんな事を思いながら、屋上に一歩踏み入れる。エレベーターを出ると屋上に直結していて、ガラス戸を一枚隔ててすぐ屋上につながっている。


 広い屋上の真ん中に、真新しいプレハブが目に飛び込んできた。
「あれが、殺し屋の住まい?」
 なんか拍子抜な気分だった。
 入り口のところに看板が立てかけてある。
 初めは遠くて見えなかったけれど、近づいていくと、はっきり見えるようになった。



__あなたの想い伝えます 探偵事務所__



「あなたの想い伝えます 探偵事務所? ここ殺し屋の住処じゃないの?」
 噂と違う事実に、疑問を打ち消せないまま、とりあえず扉の中に入ることにした。
 ガラガラとドアを開けると目の前に来客用と思われる机、それを囲むようにソファーが3脚。机の上は、本やら書類やらが散乱している。

二人掛けの長いソファーと、一人掛けのソファーが二脚。どちらも、書類や本で埋め尽くされていた。
 探偵事務所の割には、お客さん来てなさそうだけど、大丈夫かな?
そんなことを思いながら、左の奥に目をやった。
 左の奥には事務机、その奥に高級そうな社長椅子に、深く腰掛けて天井を眺めている男がいた。
あの人が……
「あの……」
と声をかけようとした時、
「いらっしゃい……お客さん?」
 天井を見たまま、男が声をかけてきた。
「よっ!よろしくお願いいたします!」
要件を言う前に、緊張のあまり、深々とお辞儀をしてしまった。
恥ずかしさのあまり、下げた頭を戻せないでいると、
「相当お困りのようですね。とりあえず座ってください。」
と男が声をかけてくれた。
 恥ずかしさを紛らわしながら、ゆっくりと顔を上げると、男がソファーと机の上を掃除していた。
 男の顔は整っていて、俗に言うイケメンだった。
年齢は、多分20代後半くらいだと思われる。
 最初だらしない姿で座っていた男は、よく見るとベストをビシッと着こなし
紳士的で、そして何よりとても笑顔が素敵な人だった。
 男にエスコートされるまま、長いソファーへと腰をかけた。
「で、ご用件は? どう言ったご相談ですかね。」
そう言うと男は、私の目の前に座った。
「おっと、失礼いたしました。私こういうものです。」
と男は、胸ポケットから名刺を取り出し、私に手渡してきた。


  あなたの想い伝えます
  探偵事務所 坂霧 相馬


 真っ黒な名刺に、白い文字でこう書かれていた。
「さかきりさんっていうのですか? よろしくお願いいたします。」
そう言うと、坂霧さんが続けた。
「学校関係? それとも、家庭関係?」
坂霧さんは、膝の上で両手を組み、前かがみで私の顔をじっと見つめていた。
「あの……ここって、殺し屋の住処なんですよね? 噂で聞いて……その……どんな願いでも叶えてくれるって。」
そう言うと坂霧さんは姿勢を正しながら、少し上を見て、
「すべて、というのは難しいかもしれませんが、
 僕に伝えられなかった想いは、今のところありませんでした。
 とだけお伝えしておきます」
と、にこやかに笑って見せた。
私の緊張をほぐそうと、ゆっくりとした口調で、優しい笑顔を崩さず、話を続けた。
「少し、お話をしましょう。あなたのお名前は。」
そう言うと、片手で、どうぞとやってみせる。
「ささかわ、笹川ともみ、と申します。」
 あまり名前は聞かれたくなかったけど、坂霧さんの紳士的な態度に思わず本名を名乗ってしまった。
「笹川ともみさん。素敵な名前ですね。学生さん?」
 そう言うと、坂霧さんは人差し指を立てて、私の制服についている、校章を指差した。
「そうです。近くの宮の上学園に通っています。」
 私の返答に目を少し見開き、驚いた素振りを見せる。
「へー。名門のお嬢様じゃないですか。」
 そう言うと、すかさず次の質問をしてきた。
「コーヒーが好きなのかな?」
 坂霧さんの質問に、返答することで、私は心の中を探られている気がしてなんとも言えない気持ちになっていた。それはこれから、父の殺しを依頼しようとしているからで、世間話をしているうちに、話にくい状況になってきていると、感じたからでもあった。
「いいえ、あまり好きではありません。」
このままじゃいけないと思い、霧坂さんに切り出した。
「あの……あまりプライベートな事は、その……話したくありません。」
そう言うと彼は、笑顔のまま、
「申し訳ありません。怒らせるつもりは。最後に一つだけ、お母さんは家にいつもいるのですか?」
なんでこんな質問するのだろうと思いつつも、『最後の』と言う言葉に少し安心して答えた。
「いいえ、母は社長なので、いつも家にはいないです。」
 そう言うと立ち上がり、自分のデスクのところに歩きながら坂霧さんは続けた。
「お父さん……お父さんのことを嫌っている。」
 私は彼の言った一言に、耳を疑った。動揺を隠せずにいる私は、坂霧さんの方を見た。彼もこちらを向きなおり、話しを続けた。
「まず、この事務所なんて言われているか知っているかい?」
 私はゆっくりと頷いた。
「そうさっき、ともみさんが言った様に、殺し屋の住処と言われているんだよ。そんなところに用があるお客さんは、大抵誰かを憎んでいる。」
 そう言うと、坂霧さんは考える素振りをしながら、部屋の中を行ったり来たり歩き始めた。
「そして、名門校のお嬢様。お金がかかるから、お父さんがお金を工面しているのかと思っていたけど、お金を稼いでいるのはお母さんの方。」
 私は部屋の中をゆっくり歩きまわる坂霧さんを、目で追いながら彼の話を聞いた。
「そうなると、いつもお父さんは家にいるんじゃないかな? そしてコーヒー、これは君が入ってきた時から、ずっとコーヒーの香りがしていたから、好きなのかと聞いた。そうしたら、君は好きではないと答えた。だとしたら、誰がコーヒーの匂いが服に染みつくまで飲んでいるのか。」
 坂霧さんは立ち止まり、こちらの方を向いた。
「そう、家にいるお父さん。そして君はコーヒーが嫌い。これは、お父さんが好きなものだから嫌いなのかと思ってね。」
 そう言い切ると、途中からうつむいて話を聞いていた私のそばまでやってきて、両手を握ってくれた。
「きっと辛いことがたくさんあったんだろうね。僕でよければ力になるから。大丈夫、私に任せてください。全て上手くいくよ。」
坂霧さんの笑顔と、その言葉に、私はギリギリで堪えていた、いろいろな感情が一気に溢れ出し、声を出しながら泣いてしまった。

 一通り泣き終わり、落ち着いたところで、坂霧さんが、紅茶を持ってきてくれた。
「これ、僕のオリジナルブレンドなんだ、美味しいかどうかは保証しないけどね。」
「ありがとうございます。」
一口紅茶を飲むと、ローズマリーの酸味の強い香りと、ダージリンの、芳醇な味が口の中に広がった。
「おいしいです! とても!」
「よかったね、今日は当たりだ。」
 坂霧さんは相変わらずの笑顔で、こちらを見ながら質問してきた。
「で、僕に何をして欲しいんだい? お父さんの暗殺かな?」
 私は坂霧さんの目を見ながら答えた。
「はい。父を殺して欲しいです。」
 坂霧さんも私の目を見ながら答える。
「理由は?」
 そう言われて、坂霧さんには全て、私のことは見通されている気がしていて、理由を説明していないことに気がついた。
「私の本当の父は、私が幼い頃に亡くなっています。今の父は母の金目当てで、母に上手く取り入った、最低な男です。再婚したのは3年前、私がまだ中学生だった頃です。結婚する前は母にも私にも、とても優しくていい人だったので、父親になることに一切、反対はしなかった。でも、いざ結婚したら、急に人が変わったように……」
坂霧さんは、うつむきながら話している私の横に座り、肩に手を置いてくれた。
「ゆっくりでいいよ、落ち着いて」
 その言葉に、元気付けられながら続けた。
「仕事をしていたんです。でもあいつは結婚を機に仕事を辞めて、ずっと家に入り浸るようになったんです。亭主関白で、家にいるのに何もしないで、毎日のように、怒鳴りちらして。私はそれがたまらなく嫌で。」
 あいつは元々他人なのに、話しながら思い出しただけでも、腹立たしくなってきた。
「私に対して暴力とかは、して来ないんです。でも物に当たり散らして。 酒癖がとても悪いし、この前あいつが暴れて、投げた食器が母に当たってしまって、 顔に大怪我をしたんです。 それで、本当にもう限界で。母に、あいつと別れるように言ったんです。」
そう言うと、坂霧さんは母のことを心配してくれた。出血が激しかっただけで、大事はなかったと伝えると、
「なんで、別れられないのだろうね。」
と別れられない理由を聞いてきた。そのことについては、私も不思議だった。あいつと別れてしまえば、それで全て解決だと私も思っている。
ただ、できないのであれば、殺してしまえと、単純な考えに至ってしまっていた事に坂霧さんと話していて気がついた。
「わからないです。聞いても教えてくれなくて。」
 そう言うと、霧坂さんは立ち上がり、笑顔で聞いてきた。
「じゃあ、お父さんの事、殺しに行こうか?」
坂霧さんの言った一言に、私は少し動揺というか、彼ならあいつを殺さなくても解決できるのではないかと、期待を込めて答えた。
「でも、あの……お金とかあまりなくて、でも殺さないまでも、離婚させる事とかはできませんか?」
そう言うと、坂霧さんは笑顔のまま続けた。
「そうですね……おっと、報酬の話をしていませんでしたね。」
と霧坂さんは、自分の机の方に行き1枚の紙を持ってきた。
「ここにお出しできる金額を書いてください。」
私は紙とペンを受け取り、今持っている全財産を書き込んだ。
__23万円__
霧坂さんはそれを見て、
「これでは、殺しはできませんね。と言っても私は、殺し屋ではありませんがね。」
と、笑顔で答えた。
 やっぱり坂霧さんは、私の心がわかっているのだと、この時私は確信した。
 霧坂さんは紙とペンを取ると何かを書き加えた。
__前金 3万__
__成功報酬 20万 __
「このくらいでいいですよ。離婚させればいいのですよね。」
と言うと、霧坂さんはこちらに紙を渡してきた。
「はい、大丈夫です。」
私は、財布の中から3万円霧坂さんに渡した。
「封筒とかいまなくて、裸で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。」
そう言うと霧坂さんは、膝をつき3万円を受け取り。
「承りました。」
と丁寧にお辞儀した。
「それでは向かいましょう。」
 そう言うと、坂霧さんは入口付近に置いてある。ジャケットとコートを羽織、扉を開けた。
「え!いまから行くんですか?」
 私がそう言うと、坂霧さんは笑顔でこちらに振り向き。
「話は早い方がいいと思いますよ。」
と言い、扉から出て行った。
 私も霧坂さんの後を追いかけて、エレベーターの方に向かって行った。
「ところで、お家はどちらにあるんですか。」
 エレベーターを降りながら霧坂さんが聞いてきた。
「私のお家は、ここから電車で30分くらいの隣町にあります。」
 そう言うと霧坂さんは胸ポケットから、鍵を取り出した。
「じゃあ車で行きましょうか。」
 そう言うと、霧坂さんはエレベーターのボタンの下にある鍵穴に鍵を差し込んで鍵を回した。
「それは?」
そう私が尋ねると、
「これは、地下の駐車場に行くためのボタンだよ。」
と霧坂さんが答えた。
上部にある階数表示が、一階を指したと思ったら、表示が消えてしまった。
エレベーターの扉が開くと、辺りは真っ暗で、しばらくして、明かりがパッと着いた。
「すごいですね。秘密基地みたい。」
私は、素直に驚いて、今の状況を楽しんでいた。
「この建物、もともと僕の祖父の持ち物でね、祖父がこういったギミック好きだったんだよ。それこそ、秘密基地みたいで、素敵でしょ。」
 私は、目の前の光景にとてもびっくりした。目の前には、綺麗な車がたくさん駐車されていた。とても、古そうなものから、新しいそうなものまで、 10台以上の車が、その駐車場には置かれていた。
「これ全部、霧坂さんのですか?」
そう言うと霧坂さんは、エレベーターを出ながら、
「そうだよ。と言っても祖父のコレクションだったものを、ここに集めて、有効活用しているだけなんだけどね。」
「すごいです。」
そう言うと、霧坂さんは私を手招きして、
「それじゃあ行きましょう。」
と赤と黒のミニクーパーの鍵を開けた。

 道案内をしながら、車の中で約30分間、坂霧さんの話を色々聞いた。
 坂霧さんの祖父は、とてもお金持ちということと、父と母はもう既になくなってしまっているということ。あとは、たわいもない話をしながら、私の家の前に到着した。
「ここが私の家です。」
父のことを思い出して、急に憂鬱な気分になってしまった。
さっきまで、非現実的な気分だったから、この感覚は普段の3倍くらいに感じた。
「大丈夫。僕に任せて。」
坂霧さんが、私の態度で察してくれたのか、声をかけてくれた。
「あの、私、大丈夫です。」
 坂霧さんの優しさに応えようと、大丈夫という返事を返した。
 玄関のドアを開けて中に入ると、テレビの音とコーヒーの香り、いつも通りの、我が家だった。
「ただいま」
そう言うと、普段言わない、ただいまに反応したのか、あいつが、こちらに向かってくる音がした。
「ただいま? おいおい珍しいこともあるもんだな。」
そう言いながら、顔を出したのが、私の義理の父。
「どうもこんばんは、初めまして、私こういうものです。」
そう言うと、坂霧さんが黒の名刺を父に渡した。
「よろしくお願いします。」
と言いながら、父に握手をしようと手を差し伸べた。
「おう、よろしく。」
父は坂霧さんの手を握って、挨拶を返した。
「で? 探偵さんが我が家に何のようだい?」
父がそう言うと、
「なるほど、わかりました。」
坂霧さんは頷き、胸元から拳銃を取り出した。
「え! 離婚させるだけって。」
私は混乱しながら、父の前に立ちはだかっていた。
「まあ、落ち着いてください。ともみさん、ちゃんとあなたの分もありますから。」
 そう言うと、坂霧さんはリボルバーに弾丸を詰め始めた。
 赤色の弾丸と、青色の弾丸を一発ずつ詰めた。
「どちらから、打ちましょう?」
 と、坂霧さんはいつも通りの笑顔でこちらを見ていた。
「テメーいい加減に……」
 父が私を突き飛ばしながら、坂霧さんに殴りかかろうとした。
 バン!っと、乾いた銃声が一発鳴り響いた。
 放たれた銃弾は父の胸元に命中していた。
 父は、その場で倒れこんで、動かなくなっている。
「お……お父さん」
 恐怖でわけがわからず、涙がこみ上げてきた。倒れこんでいる父を、私は必死に守ろうと父に覆いかぶさっていた。
「落ち着いてください。ともみさん。お父様は死んでいませんよ。」
 坂霧さんがそう言うと、父はその場で泣き始めた。
「すまなかった、ともみ、本当の事を打ち明けられなくて、こんなことに、本当に私は不甲斐ない。」
 そう言うと、今まで見たことのない泣き顔の父が、私の目に飛び込んできた。
「いったいこれは……」
「ともみさんの気持ちを、お父様に打ち込んだんですよ。ともみさんの分もございますよ。」
 そう言うと霧坂さんは、私の胸に銃口を合わせて、バン!と乾いた銃声を鳴らした。その音を聞いた私は、真っ白な霧の中に入っていった。
____
「あなた別れてほしいの。」
お母さん?
まだすごく若い。
「何を言っているんだ! 子供ができたんだろ。結婚しよう。」
この声はお義父さん。
「あなたには私は不釣合いなの。この子の幸せの為にも、あなたが父親じゃダメなの」
「何を馬鹿なことを!」
ここは、空港のロビー?
「しずか、行くぞ。」
お父さん!?
「じゃあ、そういうことだから、これ、あなたに対しての慰謝料。もう連絡してこないでね。法的にも、もうあなたとは、何にも関係ないから。」
 そう言うと若い母は、スーツケースを置いてお父さんと、ゲートの方に向かっていった。
「おい、子供はどうするんだよ! ちくしょう……ちくしょう……」
 その場で、倒れこむお義父さん。
白い霧が包み込み、
__
また晴れていった。
今度は、今のお家だ。
「ともみには本当の事を打ち明けないで頂戴。それが再婚する条件よ。」
さっきとは違う、最近のお母さんだ。
「でも、俺が本当の父親だ。なぜ言ってはいけないんだ!」
お義父さん。
あいつが、本当のお父さんなの?
「あの子には、笹川家の血を引いてもらわないと、困るのよ。」
また白い霧の中に私は包まれていった。

気がついたら、父にもたれかかるように、気を失っていた。
「お義父さんが、本当のお父さんなの。」
私の胸で泣いている父に私は問いかけた。
「そうだよ__ともみ__私がお前の本当の父親だ!」
父は流していた悔し涙を抑えながら、私の目を見て答えてくれた。
「ともみには本当に申し訳ないことをした。頭では、お前と母さんのためだと、わかっていたのだけれど、いい再婚相手になっていようと思っていたけれど、目の前で、お前の成長を見ていて、本当の父親と言えない悔しさと、あいつの事を父と思い慕っている姿を見て、嫌な奴になってしまっていた。」
 父は私の両肩を手で押さえながら、話してくれた。
父は私を抱き寄せ、抱きしめると、そのまま静かに涙を流していた。
それを見ていた坂霧さんは、
「私は、そろそろお役御免のようですね。」
と、持っている銃を胸のホルスターに収めて、いつもの笑顔を浮かべて、
「今回は、離婚させることを失敗してしまいましたので、成功報酬は入りません。これからは、家族仲良く暮らしていってくださいね。」
そう言うと、そのまま行ってしまった。

 それから、帰って来た母を交えて、事の全容を話してもらった。
今まで騙していたことを、謝ってもらい、お義父さんが本当の父親であることなど、すべて教えてもらった。
 最初のうちは頭が混乱していたけれども、時間が経つにつれて、理解を深めて、私は父を許し、父も母のことを許して、幸せな家庭を築いていこうと約束した。

 その後の話。
 私は霧坂さんにお礼をしたく、例のボロマンションに向かった。
 5階建てのビル、エントランスに入るとすぐに、エレベーターがある。
 1、2、3、4、5、R、
 私が、屋上のボタンを押すと、エレベーターのドアが閉まり、上の階へと登って行った。
 ガタゴトと嫌な音を立てながら、屋上に到着した。
 チン!
 外に出ると、広い屋上の真ん中に、真新しいプレハブが目に飛び込んできた。
 入り口のところに看板が立てかけてある。

 __あなたの願い叶えます 探偵事務所__



最後まで読んでいただきありがとうございました。

マガジンの方に他の短編小説も載せておりますので、興味ある方は是非読んでみてくださいね。

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