「WE ARE LITTLE ZOMBIES」(2019)ネタバレあり
「大人になんかなりたくねー」といいながら
彼らは着々と大人になっていく。
基本情報
『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(ウィーアーリトルゾンビーズ)は2019年6月14日公開の日本映画。CMプランナーの長久允の長編映画デビュー作。第35回サンダンス国際映画祭にて日本映画初の審査員特別賞・オリジナリティ賞を受賞。 第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門スペシャルメンション(準グランプリ)受賞、オープニング上映作品。
ログライン
両親を同時に事故で失ったヒカリは火葬場で出会った同じく親を失った3人と共に目的の見いだせない放浪を続ける中で、死や人生について考える。
ストーリー
・次々と、スピーディーに展開するので最初から最後まで飽きさせない。
・冒頭、火葬場での出会い(Inciting Incident)→主人公語りによるセットアップという構成。これからの映画はスロースタートよりもこの展開が増えるかもしれない。
演技・演出
・主人公たちはゾンビというだけあって感情を表に出さない。淡々とセリフとカットで紡がれていく。その中でより映像と音楽が感情を伝える主役となっている。
・8bitゲームと人生をうまく掛け合わせた演出。「僕とアールと彼女のさよなら」であるようなチャプターを映画的に説明するやり方が、ここではゲームのステージに置き換わっている。それが、主人公の人生の始まりとゲームのスタート画面によってダメ押しで強調される。
・眼鏡をかけているのはゲームを買い与えてくれた(そして目が悪くなったので)親からの唯一の繋がり、愛情、という理由付けがしっかりしている。
・郁子はレシートを丸めて吸う、写真は撮るが現像しない、といった「行為」そのものに意義を感じるキャラクター。
撮影
・ジュースを飲むコップについたカメラ、放流されるベタ視点など面白い視点が多い。
・RPGのような真俯瞰の視点。
好きだったところ
・全然エモーショナルな映画じゃないのに、観た後の気持ちはなぜかエモい。
・エモいは古いという世界観。
・オープニングの8bitの音楽と映像の展開。
・駅で携帯を見ながらゾンビのように歩く大人たち、リサイクル工場での出会いからバンド結成(ゴミ捨て場で見つけたゴミのような子供たち)といったビジュアル的にわかりやすいメタファーが重箱に細かく詰め込まれている感じ、その完成度が高くて嫉妬する。
・バンド解散後のマネージャーがごみを蹴飛ばしたあと、彼女に諫められる。その後、ごめんね、ごめんごめん、と優しく反応を伺いながら雨の中ゴミを片付ける。そこにマネージャーの人間味を感じる。また、マネージャーは「自分の人生だもん、自分のことしか考えなくていいんじゃない?」という、今の道徳観と真逆のことをいうが、それがなぜか嫌味にならず、すっと入ってくる。
自分だったらどう撮るか/盗めるポイント
・カットや面白いアングル、音楽を取り混ぜた魅せ方は自分にはできないかもしれないが、絵にどれだけ面白さを入れられるか、というのを最後まで工夫することが大事だと思う。
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https://littlezombies.jp/special/