コロナでESTAが切れてアメリカから出られない話(2021/10/8 完結)
はじめに
6月からアメリカはLAに滞在しており、90日よりちょっと手前で帰国を目論んでいたところ、コロナウイルスに感染しダウン、PCRテストで陽性反応が出たため、飛行機には乗れず(そもそも起き上がることすらツライ)ESTAが失効してしまった私の、アメリカ脱出作戦です。
こんなに手間取ると思わなかったので同じような境遇の人向けに情報をまとめておきます。
※なお、状況は逐一変わるため、ここでの情報はあくまで私の経験談であり、ここから生じた不利益の一切に責任は負えませんので、あくまで自己責任でご参照ください。
基本情報
・ESTAはビザではなく、Visa Waiver Program(WVP)の一環で、ビザがなくてもアメリカに入国できますよ、というもの。
https://travel.state.gov/content/travel/en/us-visas/tourism-visit/visa-waiver-program.html
・そのため、原則延長はできない。だがこのパンデミックの状況を踏まえ、コロナ感染などの特別な状況に限り、30日(2021年9月現在、追加で申請をすれば更に30日可能のようです)の延長が認められる。
・申請はUSCISに電話。通常の対応でないためか、応募フォームがない。
経緯1 (8月末)
ESTAの期限内に申請を出すのが原則とのことで、フラフラの状態でUSCIS(移民局)の誤ったフォームで申請してしまう。これは自分が悪いのだが、別の人にアシストしてもらいながらフォームを入力していった際、ESTAの項目がなく、あとで変更するつもりで別のビザステータスを記載。後ほど、これが運命の分かれ道だったことに気づく。
経緯2 (9/4)
無事回復した後、USCISで作った自分のページにBiometric Appointment(指紋採取)に来てくれと言われる。9/4に届いた書類の面接日は9/28。かなり先になると思いつつ、その時はまだ体力的にも死んでいて、回復にいつまでかかるかわからなかったので一旦そのままに。
経緯3(9/10頃)
PCRテストで無事陰性に。すぐにでも帰りたいので指紋採取を早められるかUSCISに電話する。(書類曰く電話しか手段なし)
USCISのコールセンターは大人気のアトラクションである。
120分待ち。ファストパスなし。
ちなみに女性の声で案内されるのだが、かなり正確な文章も聞き取る。しかも人っぽさを出すためか、カタカタとキーボード入力している素振りまで見せるので、途中で普通の人間だったのかと思い、機械音声相手に謝りを入れるという失態を冒す。チューリングテストか。
精神的ダメージが半端じゃない。
心のHPを削られつつ、遂にオペレーターと会話。
自「面接日を早めたいんだけど」
オ「早めるのは無理、遅らせるのみ」
いやいやいや、衝撃的過ぎて頭が真っ白に。ここで動かない頭をフル回転。
自「なら日本のアメリカ大使館でその面接できない?」
オ「こっちだとわからないからそっちに電話してみて」
ということで大使館へ連絡を取るが、日本では受けられないとのこと。ESTAの窓口にも在ロサンゼルス大使館にも連絡をしたが、ダメの一点張り。
しょうがない。こうなったら待つしかない。
経緯4(9月中旬)
ここにきて、延長申請のステータスを変えないといけないことを思い出し、再度USCIS電話。人を欺くチューリングテスト機械音声に「VISAステータスを替えたい」と告げると、番号を押してと言われ、延々とオペレーターに繋がらない。しょうがないので、前回と同じように「Biometricのアポイントメントを変更したい」と告げると、無事オペレーターへ。今度は90分待ち。もはや短く感じる。
自「今申請しているI-539フォームのステータスを変更したいんだけど」
オ「ESTAはこのフォームじゃできないわ」
ここまで来て絶望が襲う。やり取りの末、その部門の人からかけ直してくれるとのこと。
経緯5(9/21)
もう来ないんじゃないかと思った頃、遂に電話が来る。相手はCBP(Customer and Border Protection)。おっさんである。映画の中の警察署で若いやつとコンビになってるめんどくさがりさんのイメージが浮かぶ。このタイプはまともに取り合ってくれない可能性あるな、と覚悟するが、意外にも丁寧に話を聞いてくれて、向こうで情報を送ってくれるとのこと(ちなみに後でわかったのだが、送り先はUSCIS、なんで直接申請できないんだ、という疑問が油田のように湧く)
コロナのケースで初めての申請だったら1,2日で受理のメールが来るはずだよ、となんとも優しいお言葉。今回の件で一番暖かい気持ちになった。お礼をいい、連絡を待つことに。
経緯6(9/22-9/27)
待てど暮らせどメールが来ない。こっちでは基本的に人の言う事は信頼できないので、念のためこちらからもUSCISに電話をして、まだプロセスの最中であることを確認する。
経緯7(9/28)
お昼ごろ、遂にメールが。急いで開けると、Denial Notification(却下)である。焦って理由を読むと以下の通り。
"9/22に追加の情報をリクエストしたけど期限の9/24までに返信がなかったので却下したよん。"
急いでメールを探すも、そんなものは来ていないし、昨日も自分はUSCISに電話をして状況を確認しているのだ。とりあえずメールを返信し、USCISに電話。約90分後、電話が繋がる。
自「却下メールをもらったけどメールも電話も来てないんだけど」
オ「こっちじゃわからないのでCBPに電話して」
自「でも却下したのはUSCISでしょ、CBPに前回電話したらこっちじゃないとわからないって言われたけど」
オ「今回のケースはこっちだとわからないの」
確かに、メールにもCBPの連絡先が書いてある。埒が明かないので一旦切ってCBPへ電話。
自「却下メールをもらったけどメールも電話も来てないんだけど」
オ「こっちじゃわからないのでUSCISに電話して」
自「今したらこっちに電話してくれって言われたけど」
オ「USCISが一回拒否したものはこっちではどうすることもできないからUSCISに電話して」
電話を待った時間を返せ。
しょうがないのでもう一度USCISに電話。(ちなみに途中で理由もなく切れてかけ直し)
18時過ぎなためか、疲れているオペレーター。
自「(経緯を説明」
オ「72時間以内に担当から折り返すわ」
自「担当ってどこ?あなたの部署?CBP?」
オ「CBP」
細かいやりとりはしたものの、またもや埒が明かないので連絡を待つことに。72時間。
経緯8(9/29)
午後一くらいに先方から折り返し。オーマイガーおばちゃん。
自「(経緯を説明)」
オ「1回目の申請はもう却下されちゃってるから再度申請するしかないわ」
自「でもそれ僕のせいじゃないですよ、電話で何回も確認してますよ」
オ「こっちでできるのはそれだけね」
自「わかりました、じゃあそうしてください」
電話を切る。ため息をつくのもつかの間、再度電話が。
オ「今申請しようとしたんだけど、1回目の却下から10日経ってないと申請できないわ」
自「・・・・」
オ「今できることとしては、22日に送られるはずだった追加情報のリクエストメールを転送するから、それに返信してみて」
しょうがないのでメールを送信。明日電話してまた確認するしかない。
ちなみにこのおばちゃん、こちらが何か聞き返すたびに「オーマイガー」を連発してくる。いやいやオーマイガーなのはこっちなんだぜおばちゃん。
たぶん日本で言ったら「マジか」連発してるオペレーターみたいなテンションだぜ。
経緯9(9/30)
嫌な予感はしていたものの
自「(経緯を説明)昨日メールを送ったんだけど」
オ「却下された申請のメールはチェックしないわ」
自「でもそれ僕のせいじゃないですよ、電話で何回も確認してますよ(既視感)」
オ「別の部署から折り返すことはできるよ、こっちでできるのはそれだけね」
自「昨日もそのやりとりしたんだよね」
オ「24日までに返信がなかったからね」
自「それ何回も言ってるけど、5分前も説明したけどそのメール受け取ってないのね、電話もしてるのね」
オ「こっちでできるのはそれだけね」
自「・・・わかった、折り返し待ちリストに入れてください」
今日だけは、、こいつを聴こうかな。
ループ感が半端じゃない。
経緯10 (10/01)
電話の振動音で目が覚める。
画面を見ると移民局からである。急いで出ようとするが切れてしまう。
時計を見るとまだ6:30である。(おそらく東海岸からかけていて向こうは業務時間)
再度寝ようとするが、2回電話に出ないとリストから外れるらしいので気が気ではない。偽の振動音(心理学的にはfalse alarm)によって何度も起きる。そのうち2回目の電話。前日夜遅かったため、頭が働かない。
自「(経緯を説明)ESTAの申請却下されたんだけど」
オ「今確認したけど、あなたのビザのステータスはB-2(労働ビザ)になってるわよ。これじゃあESTAの申請できないからステータスをまずESTAに変更して」
B-2・・・だと???
自「え、そんなはずないですよ、I-94(入国に必要な書類)もESTAになってるし、前回もそれで申請出してます」
オ「でもコンピューターにはB-2って書いてあるから」
自「それはいつ誰が登録したの?」
オ「わからないけどとにかく変更しないとESTAの延長はできないから」
完全に予想外の方向からの攻撃。過去2週間の話はなんだったのか。
もはや進もうにも今まで通ってきた道すら根本から崩れたも同然。
あとから冷静に考えるともしかすると、一回目に出した申請の情報がコンピューターに残っていた可能性もある。(それにしてもそれはB-1であってB-2ではない)
在米歴が長い友人に相談する。もはやこれ以上こじれる前に移民弁護士に相談したほうがよいかもしれないとのことで紹介してもらう。
月曜、連絡してみることにしよう。
経緯11 (10/04)
LA在住のAさんに相談すると、なぜ最初から移民弁護士に頼まなかった!と突っ込まれつつ、彼女がお世話になっている移民弁護士さんへ取り次いでくれた。状況をリストにまとめ、30分間の無料電話面談をしてもらうことに。
自「(状況を説明)」
弁「そうねえ、結論からいうと、あなた、手続きなんかに時間使わないで一刻も早く出国しなさい」
衝撃すぎて3回くらい聞き返してしまった。こっちでいたずらに滞在日数を延ばすよりは出国してしまう方がダメージが少ないとのことだった。
正直者が救われない世界って・・・
結果だけ見れば約1か月不法滞在、無断で帰国。
だが、もう体力も気力も限界だ。明日、帰ろう。
エピローグ
もはや記事を書く力も残っていなかったので完全に記憶を頼りに記載する。
一番心配だった出国では何も聞かれなかった。セキュリティのお姉さんはスマホから一度も目を上げなかった。
ケンタッキー・フライド・チキンをやけ食いした。
帰りの飛行機は人が少なすぎて、非常口近くの前列がないシートに案内された。(だが逆にCAさんたちが通る中で堂々と寝られないチキンな私でした)
空港での長いPCR検査を経て、無事帰国。
次回、アメリカに無事入国できるのだろうか。
必ず事前にアーティストビザを取得していくぞ、と心に誓ったのでした。
追記:2023/2/27
再度仕事の打ち合わせで行ったのですが、
同じESTAで、再度入国できました。
そのままUターンだったらどうしよう、と心配していましたが入国目的の方を聞かれたぐらいで超過については一切質問なし。
この記事をもっときちんと文章にしたためたものとコロナ陽性の証明書などひととおりプリントアウトして持っていったのですがいい意味で徒労に終わりました。早くアーティストビザを取得します。
トップ画像引用元:https://cinemaxina.com/the-terminal/terminal/