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1+1=2ではない。スタジオディテイルズとGoodpatchの融合が生み出す未来

2021年12月、スタジオディテイルズ(以下、ディテイルズ)が株式会社グッドパッチのグループに参画してから約1年。現在ディテイルズにはGoodpatchから十数名のメンバーが出向しており、少しずつ新たな価値を模索しています。

今、ディテイルズはまた新たな一歩を踏み出そうとしています。

代表取締役社長の海部 洋、取締役副社長の服部 友厚、そして代表取締役副社長の難波 謙太に話を聞きました。

経営新体制は「これまでの道をもっと極めてほしい」というメッセージ

—— 難波さんは、イギリスでデザインを学び、14年間現地で働いたのちGoodpatchに入社されていますね。そのときを振り返って、Goodpatchとディテイルズそれぞれの特色をどのように感じていますか?

難波 謙太

難波:そうですね。Goodpatchはデザイナーやエンジニアの働き方が海外と似ているなと思いました。例えば、1人1プロジェクトフルコミットだったり、プロジェクトチームの規模感だったり、提案型よりも伴走スタイルに寄っているなど、国内におけるデザインの価値を上げるための仕組みがしっかりしているなと感じました。

一方、ディテイルズの海外に近いところで言うと、表現度の高いアイデアを実現するクラフト力・実装力・ゆるまないコミット。最後の1ミリまでクオリティに徹底しているデザインスタジオは国内では数多くないと僕は感じていて、世界と肩を並べられるデザイン会社だと思います。事実、海外アワードも多数受賞していますし、国境を越えて実力を証明していますよね。

海部:僕らも、クオリティの面では常に世界を意識してきました。ですから、ディテイルズが一番大事にしているものを評価してもらえるのは、素直に嬉しいですね。

——そういう、「ディテイルズのよさ」をきちんと理解している難波さんが副社長に就任するという話を初めて聞いたとき、どんな思いでしたか。

海部 洋

海部:実は、M&Aを進めている段階で、難波さんの話は聞いていたんです。服部とも、「なんかディテイルズのやってきたことと似ているね」みたいな話をしていて。なので、改めて難波さんがGoodpatchから出向してくると聞いたときには、一番適任だと思いました。

服部:ケン(難波)さんが副社長に就任するということは「これまで通りの道をもっと極めてほしい」というメッセージだと受け取っています。ディテイルズのよさや、大事にしてきたことを深く理解しているケンさんがきてくれて、僕らとしてはすごく安心しています。

——今年(2022年)の9月からGoodpatchのメンバーもディテイルズに出向しているとのことですが、出向メンバーを決めたのは難波さんだったのでしょうか。

難波:そうです。まず思っていたことは、僕が統括しているBX(Brand experience)チームのメンバー全員と一緒にいきたいということ。採用に3年以上かけて、お互いに強い共感があって募った大切な仲間なので、一緒に働き続けたいなと強く思っていました。

とは言えだいぶ大きな話ではあるので、全員が快く承諾してくれたのはホッとしたし、嬉しかったですね。それ以外にも、BXチームとは切っても切り離せないデザイン・ストラテジストや、UIを得意とするビジュアルデザイナーなども数名了承してくれて、一緒に出向しています。

今回出向しているメンバーは、自分も含めて、そもそも色々な領域でもの作りをしてきたクリエイティブ職人たちでありつつ、その上でGoodpatchに共感して入社をしているので、Goodpatchらしさもディテイルズらしさもどちらも大切にできるメンバーたちだと感じています。

——Goodpatchとディテイルズが一緒になって、新たに得られる強みはなんだと思いますか。

海部:僕らも最近では、より上流のところから入っていくことを模索していました。BXのメンバーの中には、戦略に強い人たちもいるので、僕らの尖ったアウトプットに戦略の視点をあわせることで、他社にはない、より高い付加価値が提供できると感じています。

難波:Goodpatchは、プロセスや再現性を重視するデザイン会社です。だからこそここまで成長できたと思っていますが、同時に犠牲にしなければならないことも当然ありました。クリエイティブの領域では属人性でしか実現できないこともあります。どちらが良い・悪いということではありませんが、今回ディテイルズと一緒に共創していくことで、Goodpatchにとっても大きな学びになることを期待しています。

「スタジオディテイルズ」という看板を背負う覚悟

——今後、ディテイルズとGoodpatchが共にプロジェクトを進めていく上で、これは絶対に譲れない、残していくべきものはなんですか。

難波:それは間違いなくクオリティですね。社名でもあるように。細部まで徹底して突き詰めることは絶対に失いたくないし、それを失ったらディテイルズじゃなくなると思っています。

海部:僕らも一緒ですね。それをずっと追求してやってきているので。ただ、なぜ僕らが昨年末に大きな決断をしたのかというと、クオリティの追求をしながら長く働き続けられる場所を作りたかったからなんです。40歳、50歳になっても追求し続ける環境を作るにはGoodpatchと一緒になるのが一番いいと思い、決断しました。

——難波さんからすると「スタジオディテイルズ」という名前を背負い、守っていかなければならないことについて、どういうお気持ちですか。

難波:極端な話、例えばディテイルズがグループ入りをして「Goodpatch」という名前になってしまっていたら、もしかしたら経営に携わりたいとは思わなかったかもしれないです。「スタジオディテイルズ」という看板、人、会社がそのまま残ることに多くの意味が込められていると思っているので。

だからこそ、チャレンジさせてもらいたいなと思いました。その分プレッシャーはとてつもなくあります。「グループ入りしてからディテイルズ、なんか変わっちゃったね」とは言われたくないので。良い意味での「変わった」であれば嬉しいですが。

海部:Goodpatchは「デザインの力を証明する」って言っているじゃないですか。僕らも同じで、かっこいいものが作れたかどうかではなく、デザインが社会的にどんな機能をもたらすかを考え、証明することを背負っている。向いている方向はすごく近いと思うんですよね。

難波:ブランド体験というデザインの領域において、両社がそれぞれ磨きをかけてきたメソッドや技術が組み合わさることで、もっと良いものができるということを証明するのがまずはファーストステップですが、それを更に越えた、まだ想像すらできていない化学反応を起こすには時間がかかると思っていて。お互いのやり方をぶつけ合うのではなく、内側からしっかり溶け込んでいかなければならないと考えています。

最近、ディテイルズのディレクターやADと、BXデザイナーやストラテジストが組んで一緒に提案を作っているんですが、実際に各々だけでは作れなかった提案が生まれているんです。今はまだ小さなところですが、そうやって生まれたシナジーを肌で感じながら協業していくことで、この先大きく変わっていけると信じています。

“尖ったクリエイティブ”のその先とは

——これから、新生「スタジオディテイルズ」で成し遂げたいことはなんですか。

難波:ブランドエクスペリエンスという我々の強みを活かして、もっともっと驚きのあるデジタル領域への挑戦や、媒体問わず、企業のらしさが滲み出ているようなブランド体験をデザインしたり、その過程で新たなプロダクトを開発して世に届けたり、または元気で一丸となった強い組織作りに貢献したりと、支援したいテーマは無限にあります。

そして、これらすべてをひとつの企業に提供したいです。点ではなく、面に染み込んでいくようなパートナーシップで、クライアントの事業成長にとことんコミットしたいんです。その結果、より多くの人たちのこころと社会を動かすことに繋がっていくと思うんです。なにかひとつの領域に狭めて考えるのではなく、ストラテジー・クリエイティビティ・テクノロジーを掛け合わせてエンパワーできることであれば何でもチャレンジしていきたいと考えています。

服部 友厚

服部:僕らが今思ってることって、「もっと頼ってほしい」っていうことなんです。「うちの事業、全部任せちゃいます」ぐらいに言ってもらえるほうが燃えるし、それに対して予想以上のものを返そうと思うので。さっきケンさんが言ったように、ケイパビリティも広がって、やれることも返せることもすごく増えているので、もっと頼ってもらいたいなと。

作ることだけでは目的を十二分に達成できないと思ったときが、次のフェーズに行くときで、僕らはそのフェーズにきていると思うんですね。「この会社をもっとより知ってほしい」から「もっとこの会社の深いところに入っていきたい」っていうふうに。

でも、最初から深いところに入っていくってかなり難度が高いから、作ることを一生懸命やることによって、次の段階が見えてくるはずだと仮説をおいてずっとやってきました。なので、まずは何かひとつのものを作って、その上で「もっとディテイルズとやりたい」と思ってもらえたら次の道が開けると思っています。

海部:服部が「もっと知ってほしい」って言ったことって、すごく簡単に言うと尖ったクリエイティブを作ることで他者との差別化をし、より多くの人にリーチすることなんです。僕たちがやってきたことは、俗に言う「クリエイティブジャンプ」で注目を集めていくことでした。

今回、GoodpatchのBXチームと統合したことで、できることが「よりよく見せる」から「よりよくする」に広がると思うんです。例えば、MVVやパーパスを作って、浸透させるような“内部的治療”を行ったり、組織のワークショップ設計をしたり。あとはビジネス戦略。これらによって、「よりよく知ってもらう・見てもらう」ことと「よりよくする」ことが同時に進むと思うんです。

これまでの僕らは「よりよく見せる」ことが強みだと認知されていたので、実際はもっと広く価値が提供できるんだということを、これから証明していきたいですね。まさにそれこそが、デザインの力を証明することだと思うので。

難波:今はまだ、プロジェクトの入り方がGoodpatchとディテイルズは違うんですよね。「これを、最高の品質で作ってほしい」っていうのがディテイルズで、Goodpatchはもう少し抽象度が高い課題。なので、ディテイルズに抽象度の高い課題の問い合わせがきはじめたら、ディテイルズが変わりはじめた証拠だと思います。

服部:これまでは頼れるところがひとつだけだったのが、統合によってふたつ、3つ……と増えていくことで、間口が広がりますよね。クライアントさんからしても、頼れるところが増えると、頼もしさも感じられるし、選択肢が増えるのでお互いにとっていいなと思います。

難波:そうですね。あとは、これからはメンバーが会社の顔になっていってほしいですね。「こんな発想がほしいからデザイナーのAさんやディレクターのBさん」「こんな事業課題があるからストラテジストのCさん」「こんなWeb体験がほしいからエンジニアのDさん」みたいに。海部さんや服部さん、僕ではなく、メンバー一人ひとりが会社の顔となるような組織にしていきたいと思っています。

One more thing

スタジオディテイルズでは、約7年ぶりとなるサイトリニューアルを実施しました。私たちが何を考え、どこに向かうのかを知ってもらうために、これまでの歩みをあらためて整理しています。ぜひご覧ください!

[文・聞き手]黒木 あや [写真]福田 悠斗、福邉 美波、Kai Qin
[編集]杉本 花織

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