ベイシー楽曲分析-Li'l Darlin'
リスニング(聴くこと)が、ビッグバンドをスウィングさせるために必要不可欠な要素だ、と気付いたことから、指導するバンドにカウント・ベイシー楽団の曲を毎週1曲ずつ聴かせようと、リスニングの助けになる楽曲分析を始めました。それを、こちらに掲載していきたいと思います。
今回はこの曲「Li'l Darlin'」 (Composed by Neil Hefti)」。
1. リスニングのポイント
「キュート」でもおなじみのニール・ヘフティの手による楽曲です。ギターのG13のアルペジオがとても印象的です(後述)
まるでスウィングの仕方をスローモーションで教えてくれているかのようなテンポ感。4分音符のスタッカートの長さの取り方がよく分かり、スウィングを勉強する上でとても参考になります。
メロディが長い音符を伸ばしている間、内声やベースラインがコードに合わせて動く際の色彩の変化が聴きどころです。また、遅いウォーキングベースの合間に入る3連符のフィルインのスウィング感も注目すべき点です。
2.形式
1コーラスはABAB'の32小節で構成されています。キーはFメジャーです。全体的には、短いイントロとリフレインが2回付加された2コーラスの構成。
3. 楽曲分析
イントロはとてもシンプルなPianoの2分音符のコードから。ギターのアルペジオが輝き、バケット・ミュートを付けた金管楽器とサックスによるアンサンブル・ヴォイシングの弱奏でメロディが奏されます。合間に入るピアノの合いの手が心地よい。
1コーラス目の終わりからハーマン・ミュートを付けたトランペットのソロとなります。長い音符の多い穏やかで味のあるソロです。ソロのバックは、ハーモニー感豊かなサックス・セクションの伴奏です。2コーラス目の後半から、メロディが戻ります。エンディングは[B]の後半4小節をリフレインとして2回繰り返します。2回目はトゥッティのままリタルダンドし、ベイシーのたった2音のソロの後、全体の伸ばしの音で終了します。
4. ギターのアルペジオについて
トニックで始まらない楽曲構成も見事ですが、最初に響くドッペルドミナント(V7 of V)のコードが13thのテンションを含んでいるところがとてもハイセンスです。やはりドミナント7thコードでナチュラル13thを使うことがジャジーである(?) という僕が勝手に考えるセオリーが、曲中の管楽器のヴォイシングだけでなく、こんなところにまで現れているのか、と勝手ながら感心してしまいます。
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